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「安い日本」と脱炭素、日本経済の現状を再エネの視点から見る

襲い掛かるエネルギー高騰

前述したが、ここにきて化石燃料の価格が世界で跳ね上がっている。天然ガス、石油、それに脱炭素の観点から忌み嫌われている石炭も、である。

その原因は、新型コロナウイルスの感染がやや収まり経済活動が活発化したことや、脱炭素が進む中で化石燃料関連の投資が抑えられてきていることなどが挙げられている。また、欧州では風が弱く、風力による発電量が予想を下回り電力不足の情報が流れていることも挙げられる。

どれもあり得る話で、特に脱炭素の急進行は、長期的に考えていかなければならない。しかし、一部には、化石燃料の高騰と風力発電の低下などを合わせて、脱炭素の失敗や再エネ化へのブレーキを宣伝したい意向も少なくない。

投資の手控えが、それほど急激に燃料価格などに反映されるとは考えにくいが、仮にそうであっても一定の時間で解消されていくと思われる。なぜなら、脱炭素は一気に進んだり、達成されたりするものではなく、長期のロードマップでの動きだからである。圧倒的な再エネ化までには、化石燃料などに頼る割合が必ず残り、そこでの投資は、期間、期間でのリターンを検討しながらビジネスとして行われることになる。すでに、脱炭素化を“主導”していると言われる巨大投資会社ブラックロック社は、一方で天然ガスの新規開発の最大の投資者であると言われている。なんだかずるいという気もするが、必要なものはマーケットの中で調整されるのが、自然なのかもしれない。

いずれにせよ、今回の化石燃料の高騰の根本的な解決策は、多くが語るように、再エネの拡大である。もう少し積極的に言えば、圧倒的に大量であふれるほどの再エネ導入が必要なのである。

課題は、「安い日本」の解消

特にエネルギー自給率の低い日本こそ、再エネ導入の拡大を全力で進めなければならない。前述したように、現在日本の電力を最も賄っているのは、輸入に頼る天然ガスである。閣議決定されたばかりの第6次エネルギー基本計画で形としては生き残っている原発の原料ウランも輸入品である。一方、再エネ拡大に関する製品も同様であり、国内生産が激減する太陽光パネルも多くは輸入に頼っている。

政府の統計によると、2019年度の化石燃料の輸入額はおよそ17兆円と莫大である。ところが、安い日本は、その金額を自動的に積み増ししてしまう。再エネの拡大は、すでに兆単位での円の流出を食い止めてきており、今後もさらなる経済的なメリットが期待されている。しかし、日本経済が弱いまま、安い日本のままでは、その効果は薄まり、脱炭素の足を引っ張りかねない。

ギリギリ瀬戸際の中で、安い、弱い日本という厳しい現状認識を持つことから始めるべきである。現実を正しく知って初めて、思い切った転換に向き合える。原発問題を始め、しんどいことの先送りや各種エネルギーに関する課題への小手先の対応では、何も解決しない。このままでは、安い日本はそのまま日本の自然死につながりかねない。
 

プロフィール

エネルギージャーナリスト。日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表。

北村和也

エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
日本再生可能エネルギー総合研究所公式ホームページ

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