あなたは知ってる? 小型風力発電の3つの注意点
2017/01/13
今、小型風力発電に注目が集まっている。市場が急激に成長する一方で、小型風力発電には導入前に知っておくべきポイントがある。落とし穴にはまらないための注意点を再エネの達人、田中さんに訊いた!
注目度高まる小型風力発電
昨年末の導入量は428kWに
昨今、小型風力発電(風車の直径16m以下(受風面積200m²以下)、出力20kW未満)への注目度が高まっています。
FITの認定を受けた小型風力発電の導入量は、2014年12月の27kWから、2015年12月の段階で42kWに急拡大したほか、認定量も2014年12月の314kWから2015年12月には849kWとなりました。導入量は現在も伸びており、近い将来にはメガワット台に到達しそうな勢いです。
一方で、導入事例のなかには、風況を含めた設置する場所の検討や、小型風力発電機の機種選定などの面で、期待通りの発電量が得られるのか懸念されるケースも見られます。小型風力を導入してガッカリしないためには、押さえるべきポイントがあるのです。
設置する場所について、まず欠かせないのが風況のチェックです。たとえば、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が作成した全国の風況マップを参考にする場合があります。この風況マップは、高さ30m・50m・70mの風況を示しています。小型風力発電機の場合は、高さが15m以内に設置することが多く、計算上では高さ15 mの風況は高さ30mと比べて約2割程度ほど年平均風速が低下します。更に、高さ15m以内では、地形が複雑な地域、住宅街、商業地、森林等で風が遮られる地域が多く、更に風が弱まる恐れがあります。最近、海外の風況シミュレーションソフトを使うケースも増えていますが、NEDOの風況マップに比べ年平均風速が高い傾向にあり、注意が必要です。個人的には、高い採算性をお求めになる方が小型風力発電の導入を検討する際には、風況の調査を独自に実施すべきだと考えています。
設置場所や機器選定方法など
健全な発展に必要な情報提供
小型風力発電機の選定も重要です。発電機の種類にはクラス1〜4の4種類があります。たとえば、クラス4は低い風速でも効率良く発電する機器ですので、強風域に設置すると安全性の面でリスクが生じます。設置場所に適したクラスの機器を導入するには、風力発電機のメーカーともよく相談されることをお勧めします。
このほか、小型風力発電機を複数台設置する場合には、設置間隔も考えねばなりません。風が吹く方向に向かって、発電機を前後に並ぶような形で配置した際、間隔が狭すぎると、前方の発電機の発電量が良好なのに、後方の発電機については風が乱れてしまい発電量が低い、という状況が起こりえます。
小型風力の市場拡大は、わたしたち日本小型風力発電協会(JSWTA)にとって有難いのですが、もし思い通りの発電量が得られない事例が増えれば、結局は成長がストップし、小型風力業界自体が衰退してしまう危険性すらあります。
業界の健全な発展のためには、当協会が、小型風力発電事業を成功させる上で有益な情報提供を行っていかねばならない、と考えています。たとえば、外部のセミナーで小型風力をテーマに講演を行う時には、設置場所や機種の選定、風速による発電量の違いなどを中心に話しています。
また、当協会のウェブサイトや導入手引書については、法改正などの最新動向を盛り込んだ内容に更新するとともに、小型風力の導入に向けて必ず押さえねばならないポイントをまとめた資料の作成および配布も検討したいと考えています。
一般社団法人日本小形風力発電協会理事長
田中朝茂
慶應義塾大学理工学部卒業後、建設機械メーカーに入社。2003年ゼファー株式会社に入社し、2013年に同社代表取締役社長に就任。2014より日本小形風力発電協会理事長を務める。気象予報士。
取材・文/具志堅浩二
※『SOLAR JOURNAL』vol.19より転載