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太陽光による“地域再生”成功の秘訣とは? JPEAソーラーウィーク大賞、受賞者が語る【前編】

ソーラーウィーク大賞の授賞式が開催され、受賞者がその想いを語った。受賞したのは、いずれも地域に根差し、地域に愛され、ビジネスとしても成功している太陽光発電だ。これからのPVビジネスの在るべき姿が見えてきた。前編では「優秀賞」までを紹介する。

 

<目次>
1.営農型太陽光が多数受賞
2.何のための太陽光発電なのか 受賞者が語る地域貢献への想い
2.1【総評】審査委員長 京都大学教授 諸富徹氏
2.2【大賞】市民エネルギーちば
2.3【優秀賞】たまエンパワー/さがみこファーム
2.4【優秀賞】小田原かなごてファーム
~後編~
2.5【特別賞】自然電力/酪農学園フィールド教育研究センター
2.6【特別賞】ファームランド/ファームクラブ、ファームドゥ
2.7【特別賞】宝塚すみれ発電/コープこうべ
2.8【特別賞】徳島地域エネルギー/みつばちソーラー発電所
3 地域との共生・共創に基づく太陽光発電の健全な普及に向けて


 

大賞「市民エネルギーちば」
営農型太陽光が多数受賞

太陽光発電協会(JPEA)は11月6日、2024年度「ソーラーウィーク大賞」の授賞式を都内ホールで開催した。同賞は、「地域に貢献し、地域から望まれ、他の模範ともなる太陽光発電の普及拡大に資する取り組み・事業とそれを支えている方々」を表彰するもの。「地域のなかで役割を果たす太陽光発電が全国に広がるよう、太陽光発電事業の地域貢献の可能性について多くの方々に知ってもらうこと」を目的として、JPEAが昨年創設した注目のアワードだ。

審査委員は、諸富徹氏(委員長/京都大学教授)、高村ゆかり氏(東京大学教授)、植田譲氏(東京理科大学教授)の3名。「①地域振興への貢献度、②地域の主体性、③地域住民からの理解・支持を得るための創意工夫、④事業の持続可能性・長期安定稼働の蓋然性、⑤波及効果・先進性」の5つを評価項目として、次の7件を選出した。第2回目となる今年は、ソーラーシェアリングなど農業と一体になった取り組みを行う事業者が多く受賞した。

【大賞】
環境配慮型再エネ×脱炭素農業=地域再生(千葉県匝瑳市)
■代表事業者/市民エネルギーちば株式会社

【優秀賞】
相模原市発・地域共生型ソーラーシェアリングのモデル化の取り組み(神奈川県相模原市)
■代表事業者/たまエンパワー株式会社 ■共同事業者/株式会社さがみこファーム

【優秀賞】
広域連携(酒匂川流域循環共生圏)による営農型太陽光発電を基軸にした食エネ自給のまちづくり(神奈川県小田原市)
■代表事業者/合同会社小田原かなごてファーム

【特別賞】
農業×エネルギーの新たな可能性を拓く~垂直式太陽光発電を活用した牧草地の持続可能な利用に関する実証研究~(北海道江別市)
■代表事業者/自然電力株式会社 ■共同事業者/学校法人酪農学園フィールド教育研究センター

【特別賞】
電気と野菜の同時栽培「ソーラーファーム」~夢のある新しい社会のカタチ~(群馬県)
■代表事業者/ファームランド株式会社 ■共同事業者/有限会社ファームクラブ、ファームドゥ株式会社

【特別賞】
再生可能エネルギーでまちづくり~ソーラーシェアリング市民農園で食とエネルギーの未来をつくる~(兵庫県宝塚市)
■代表事業者/株式会社宝塚すみれ発電 ■共同事業者/生活協同組合コープこうべ

【特別賞】
地域コミット型太陽光発電による収益還元の展開(徳島県)
■代表事業者/一般社団法人徳島地域エネルギー ■共同事業者/株式会社みつばちソーラー発電所

何のための太陽光発電なのか
受賞者が語る地域貢献への想い

表彰式では、審査委員長の総評や各受賞者のスピーチもあり、多くの来場者が熱心に耳を傾けていた。以下、各スピーチの内容と受賞の決め手となった評価ポイントを抜粋・要約してお届けする。

【総評】審査委員長 京都大学教授 諸富徹 氏

「今回受賞された皆様は、ほぼ全員、全グループが何らかの形で地域再生と関わりをもった事業をされています。太陽光発電は、その規模・量も大事ですけれども、これからの時代、地域再生型の事業をもっときちんとやっていく必要があるということですね。ここにご登壇いただいている皆様は、困難な領域にあって、様々なかたちで事業を展開・成功されていらっしゃいます。ちゃんとビジネス化した上で、地域を発展させていくというところに注力され、成果を出されている点を高く評価させていただきました。そこにあるのは地域の経済を良くし、雇用を増やし、いろいろな意味でプラスな効果を地域にもたらしていく事業です。今日の受賞をきっかけに、さらに発展させていただくことを期待をしております」(諸富氏)。

【大賞】 環境配慮型再エネ×脱炭素農業=地域再生(千葉県匝瑳市)

太陽光発電の活用によるソーラーシェアリング20haでの有機農業、16haに及ぶ耕作放棄地の営農再開、移住者・新規就農者への支援、地域レジリエンスを改善している点などが高く評価された。

出典:市民エネルギーちば

受賞者のことば(市民エネルギーちば株式会社 専務取締役 宮下朝光氏)

「この度は栄えあるソーラーウィーク大賞を受賞することができまして、大変光栄に存じます。地元の農家さん、農業委員会、匝瑳市、パネルオーナーの皆さん、出資をしてくださった方、社債を引き受けてくださった企業さん含めて、多くの皆様方のご理解とご協力とご支援のおかげです。本当にありがとうございました。今後の展開については、まず全国に健全なソーラーシェアリング、地域を元気にするようなソーラーシェアリングを、47都道府県に最低でも1ヵ所ずつ作っていくという目標があります。そのためには、トータルでソーラーシェアリングのことが分からなければならないので、ソーラーシェアリングアカデミーというプログラムを運用して、人材育成に努めてまいります。それから、ペロブスカイトをソーラーシェアリングと融合させることも進めていきたい。そのための製品開発を並行して進めてまいります」(宮下氏)。

【優秀賞】 相模原市発・地域共生型ソーラーシェアリングのモデル化の取り組み
(神奈川県相模原市)

発電事業者が農業者として地域で活動していることなどが評価された。

出典:たまエンパワー

受賞者のことば(たまエンパワー株式会社 代表取締役社長 山川勇一郎氏)

「相模原市の山間部でソーラーシェアリングの事業をやっております。それまでは屋根上の太陽光事業を多摩市中心に行っていたのですが、5年ほど前にソーラーシェアリングに取り組むにあたり、地元で農業法人を立ち上げまして、一から勉強して、農業もやるということで参入しました。私たちの場合は、観光農園というような形で農地を外に開いております。観光、SDGs、防災、そういったことも含めて、エネルギー、農業、あるいは地域の課題解決に資するような取り組みができないかなということで、この5年間やってきました。まだまだ道半ばではありますが、今回このような賞をいただいて非常に励みになります」(山川氏)。

【優秀賞】広域連携(酒匂川流域循環共生圏)による営農型太陽光発電を基軸にした食エネ自給のまちづくり(神奈川県小田原市)

営農型でのオフサイトPPAの実現ほか、地域課題解決への取り組みが評価された。

出典:小田原かなごてファーム

受賞者のことば(合同会社小田原かなごてファーム 代表社員 小山田大和氏)

「地域を再生させるためには、農業を再生させなければならない。農業の課題を解決するということは地域の課題を解決するということに他ならないので、それを再生可能エネルギーという道具を活用して成し遂げていくということを実践をしております。市長も“いのちを守り育てる地域自給圏”ということをずっと言っておりまして、私たちの取り組みはまさにこの小田原市の政策とも連動しています。その地域自給圏を実践していくために、食べ物とエネルギーを流域経済圏で自給する、その具体的なモデルを営農型太陽光発電でやっていこうということです。行政を動かして、我々も動いて、そのことによって社会を変えていくということを、これからもしっかりとやっていきたいと思っています」(小山田氏)。

後編に続く

1月29日(水)に開催する「第32回PVビジネスセミナー」では、ソーラーウィーク2024で大賞を受賞した千葉県匝瑳市の市民エネルギーちば株式会社 専務取締役の宮下朝光氏が「環境配慮型再エネ×脱炭素農業=地域再生」というテーマで講演します。


PVセミナー

「第7次エネルギー基本計画」では、2040年度の再生可能エネルギーの導入目標を大幅に引き上げる必要に迫られており、そのためには特に導入が容易な太陽光発電と蓄電池の普及を加速させる必要があります。いま注目のコーポレートPPAの先進事例や、国内外で開発された最新テクノロジー、蓄電池を活用した新たなビジネスモデルを紹介します。


取材・文・写真/廣町公則

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