太陽光による“地域再生”成功の秘訣とは?JPEAソーラーウィーク大賞、受賞者が語る【後編】
2024/12/16
ソーラーウィーク大賞の授賞式が開催され、受賞者がその想いを語った。受賞したのは、いずれも地域に根差し、地域に愛され、ビジネスとしても成功している太陽光発電だ。これからのPVビジネスの在るべき姿が見えてきた。後編では「特別賞」からを紹介する。
~前編~
1 営農型太陽光が多数受賞
2 何のための太陽光発電なのか 受賞者が語る地域貢献への想い
2.1【総評】審査委員長 京都大学教授 諸富徹氏
2.2【大賞】市民エネルギーちば
2.3【優秀賞】たまエンパワー/さがみこファーム
2.4【優秀賞】小田原かなごてファーム
~後編~
1.1【特別賞】自然電力/酪農学園フィールド教育研究センター
1.2【特別賞】 ファームランド/ファームクラブ、ファームドゥ
1.3【特別賞】宝塚すみれ発電/コープこうべ
1.4【特別賞】徳島地域エネルギー/みつばちソーラー発電所
2.地域との共生・共創に基づく太陽光発電の健全な普及に向けて
何のための太陽光発電なのか
受賞者が語る地域貢献への想い
表彰式では、審査委員長の総評や各受賞者のスピーチもあり、多くの来場者が熱心に耳を傾けていた。以下、各スピーチの内容と受賞の決め手となった評価ポイントを抜粋・要約してお届けする。
【特別賞】農業×エネルギーの新たな可能性を拓く~垂直式太陽光発電を活用した牧草地の持続可能な利用に関する実証研究~(北海道江別市)
今後の拡大が期待される垂直式太陽光発電と、農業の両立の実証が評価された。
出典:自然電力
受賞者のことば(自然電力株式会社 執行役員事業部門長 瀧口直人氏)
「エネルギー危機、食料・飼料・肥料の高騰によって酪農家さんは非常に厳しい状況にございます。酪農家さんにダイレクトに貢献できるモデルということで、牧草地かつ雪の深いところ、江別市で実験を行いました。縦型の特長として、積雪地帯でも反射光によって多く発電するだろうと想定していましたが、狙いは的中しまして、冬場は従来型のソーラーと比べて2~3割多くの発電量を得ることができました。いままで雪国は、ソーラーの世界においてはハンディキャップでしかありませんでしたが、これをアドバンテージに変えられるのではないかと思っています」(瀧口氏)。
【特別賞】電気と野菜の同時栽培「ソーラーファーム」~夢のある新しい社会のカタチ~(群馬県)
大規模な発電と営農、その産品の流通まで、一貫して取り組んでいるスキームが評価された。
受賞者のことば(ファームランド株式会社 代表取締役社長 岩井雅之氏)
「ファームドゥでは、農家さんにダイレクトに収入がいく直売事業をやらせてもらっています。私が創業したのは30年ほど前ですが、“子供も孫もいらないと言っているので、俺んちの畑を使ってくれないか”という相談を受けるようになりました。それをモチベーションに、太陽光と農業を一生懸命やってきて、いま私が思っているのは、原価ゼロで燃料を輸入する必要がない、こんな良いシステムを使わない手はないだろうということです。70歳なんですけど、頑張っていろいろなことにチャレンジしたいと思っています」(岩井氏)。
【特別賞】再生可能エネルギーでまちづくり~ソーラーシェアリング市民農園で食とエネルギーの未来をつくる~(兵庫県宝塚市)
早期から地域理解を得て市民出資で営農型発電に取り組んでいる点が評価された。
出典:宝塚すみれ発電
受賞者のことば(株式会社宝塚すみれ発電 代表取締役社長 井上保子氏)
「私たちがやってきたのは市民発電所ですけれども、もともと食のことをやっておりまして、生産者と消費者をつなぐ運動を40年続けてきました。私にとっては、食とエネルギーはまったく同じなんです。誰が、どこで、どのように作っているのかというのを明らかにすべきだと思ってやってきました。ソーラーシェアリングも同様です。事業としては非常に小さい、だから大きなことは皆さんにお任せいたしました。私たちは、これからも多くの人と手をつなぎながら、これを伝えていく事業をやっていきたいと思っています」(井上氏)
【特別賞】地域コミット型太陽光発電による収益還元の展開(徳島県)
地域還元のための発電事業を地域で推進してきた点が評価された。
出典:徳島地域エネルギー
受賞者のことば(一般社団法人徳島地域エネルギー 代表理事 豊岡和美氏)
「地域の価値を最大限にしたい、地産地消のエネルギーで田舎の価値を大きくしたい。例えば、鳴門市の遊休地を使って商工会さんに太陽光をやっていただいて、商工会さんは利益を取ったうえで毎年、鳴門市に1000万円の寄付をして、太陽光の補助金に充ててもらうというような、お金がぐるぐる回る仕組み。私たちには1円もお金がないので、そういった話をもっていって知恵だけでやってきました。田舎には、たくさんの可能性があります。皆様にご指導いただきながら、これからも頑張りたいと思います」(豊岡和美氏)。
地域との共生・共創に基づく
太陽光発電の健全な普及に向けて
授賞式の後には、参列した太陽光関連事業者や地域再生に取り組む人達を交えてレセプションが催された。レセプションの開会挨拶において、太陽光発電協会 代表理事の山口悟郎氏は次のように述べている。
「世界各地で異常気象や激甚震災が頻発する中にあって、脱炭素社会の実現は、一刻の猶予もありません。私ども業界に課せられた大きな責務ともいえるでしょう。再エネ主力電源化の早期実現は、ますますその重要性が高まるばかりです。当協会としましては、引き続き、再エネ主力電源化の前提となる“地域との共生・共創に基づく太陽光発電の健全な普及”を目指し、積極的に活動してまいります」
ソーラーウィーク大賞は、今年2回目というまだ新しいアワードだが、これからの太陽光発電のあり方を照らし出すものになることは間違いないだろう。地域共生型太陽光発電の普及促進に向けて、同賞の意義は高まるばかりだ。
ソーラーウィーク大賞レセプションの様子
1月29日(水)に開催する「第32回PVビジネスセミナー」では、ソーラーウィーク2024で大賞を受賞した千葉県匝瑳市の市民エネルギーちば株式会社 専務取締役の宮下朝光氏が「環境配慮型再エネ×脱炭素農業=地域再生」というテーマで講演します。
「第7次エネルギー基本計画」では、2040年度の再生可能エネルギーの導入目標を大幅に引き上げる必要に迫られており、そのためには特に導入が容易な太陽光発電と蓄電池の普及を加速させる必要があります。いま注目のコーポレートPPAの先進事例や、国内外で開発された最新テクノロジー、蓄電池を活用した新たなビジネスモデルを紹介します。
取材・文・写真/廣町公則