千葉県柏市 国内最大規模のEMSを導入して環境未来都市を目指す
2025/07/17

千葉県北西部に位置する柏市は「環境未来都市」構想を掲げ、柏の葉キャンパスを中心とした地域において「柏の葉スマートシティ」計画を進めている。これまでにエリア・エネルギーマネジメント・システム/スマートセンター(AEMS)の構築を進め、省エネ・省CO2化を図る一方、災害・停電等の非常時には大規模蓄電池やガス発電機を併用して高層マンションのエレベーターや地下水引き上げポンプなどののインフラへ送電することでレジリエンスも強化している。
メイン画像:柏の葉キャンパス駅の周辺エリア(千葉県柏市)
国内最大規模の
AEMSの構築を目指す
柏の葉スマートシティ(出典 千葉県柏市)
AEMSは、駅周辺5街区のエネルギー管理・節電ナビゲーションを行うもの。地域レベルでのエネルギー効率利用と低炭素化のため、エネルギー効率利用・低炭素化のモデル街区を実現し、災害時におけるライフラインへのエネルギー供給という課題に対し、災害時スマートエネルギーシステムを実現することを目指して2014年に導入された。
従来の電力インフラでは、街区レベルで電力消費量、発電量、蓄電量などのエネルギー情報を入手できず、地域で全体最適なエネルギー利用ができなかったが、AEMSの導入により、きめ細かなエネルギー需給状況の管理が可能となった。これにより電力消費量の削減とともに、ピークカット、ピークシフトによる系統電力変動の影響を低減。また、災害時には、地域内の再生可能エネルギーの発電量やバッテリーの蓄電量を管理し、エネルギーの地産地消を効率化することを可能とした。同システムの実証には、住民、商業施設などの協力が必要不可欠であったが、柏の葉キャンパスでは、約1,000戸の住民や「ららぽーと柏の葉」の協力を得て、国内最大規模のAEMSの構築を目指している。
またAEMSで管理している地域全体のエネルギー需給情報を見える化するため、大画面ディスプレイや、デジタルサイネージなどのインターフェイスシステムを整備した。これにより地域全体のエネルギー需給情報データを各街区内共用部などで見える化している。
太陽光発電や
ガス発電機も連携
柏の葉スマートセンター(出典 三井不動産)
さらに柏の葉キャンパスでは、再生可能エネルギー地産地消システムを13年に構築した。平常時には、大規模商業施設の約15%の電力をまかなう一方、災害時には147街区、148街区、151街区の集合住宅における生活ライフライン(井水ポンプ、高層エレベーター稼働ほか)への必要最低限の電力供給を確保する。経済産業省の「次世代エネルギー技術実証事業」および環境省の「地域の再生可能エネルギー等を活用した自律分散型地域づくりモデル事業」を活用して、太陽光発電システムと蓄電池を設置した。
駅前148街区は災害時に防災拠点となる「スマートセンター」、避難所となるホール、ホテル、商業施設(飲食店)機能を持っており、BCP(事業継続計画)対応が必要。そのため災害時でも平常時の約6割分の電力量を継続的に提供するガス発電を整備し、マルチエネルギー化している。
これらをAEMSと連携することでエネルギーの自給率向上を図ったほか、災害時や停電時などの非常時では備蓄石油と自家発電設備、蓄電池、太陽光発電とAEMSを活用し、高層マンションのエレベーターや避難所、地下水利用システムなどに対して優先的かつ効率的に、エリア内の電力(創エネ、畜エネ)を融通し、3日分の最低限の生活ライフライン(電力、水、情報)を確保している。
柏の葉キャンパスでは「環境共生都市」「健康未来都市」「新産業創造都市」の3つをコンセプトとして公民学が連携したまちづくりを進めて、住民参加型の実証実験や各種まちづくりイベントなどが展開されている。
DATA
取材・文/宗 敦司
9月12日(金)に開催する「第35回PVビジネスセミナー」では、千葉県柏市 経営戦略課の政策担当者が「EMSを活用した環境未来都市が目指すもの」というテーマで、先進的な街づくりの取り組みを紹介します。
「第7次エネルギー基本計画」では、太陽光発電と蓄電池の導入拡大を進めるなか、供給側の変動に応じて電気需要の最適化を図る必要性が高まっています。今回のセミナーでは、国の政策動向とともに、産業用の自家消費やPPA、系統用蓄電池の最新の動き、国内外で開発された最新テクノロジーなどを紹介します。