全国知事会が提言 系統用蓄電池の支援拡充、併設型蓄電池への支援を
2023/08/23
全国知事会は、「脱炭素社会の実現に向けた対策の推進に関する提言」をとりまとめた。系統連系時の工事費負担金への支援や系統用蓄電池への支援拡充、FITで導入された既存の再エネ設備への併設型蓄電池への支援などを要望している。
(アイキャッチ画像 出典:全国知事会)
予算規模や申請上限額の
大胆な拡充を要望
松本総務大臣に要望(出典 全国知事会)
全国知事会は、来年度の国の施策と予算に関する要望活動を実施するのに先立って、7月26日の全国知事会議で、「脱炭素社会の実現に向けた対策の推進に関する提言」をとりまとめた。脱炭素社会を目指す基盤、交通、建築、産業、再生可能エネルギー、吸収・適応の各分野で具体的な施策について提言している。
脱炭素を目指す基盤としては、国と地方との恒常的な協議の場を設けること、今後 10年間で 20 兆円規模を発行するとされる「GX 経済移行債」も活用し、自治体への大規模かつ安定的な財政措置を実施すること、「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」については、各自治体で計画した事業が確実に実施できるように、予算規模や申請上限額、事業年度を大胆に拡充するとともに、地域の実情に合わせた柔軟な活用ができる制度となるよう、より一層の運用改善を行うことを要望している。
系統用蓄電池
支援策の拡充を要望
系統用蓄電池は、再エネの出力調整や余剰電力の吸収が可能
再エネ分野では、系統接続の制約の早期解消に向けて、広域系統長期方針(マスタープラン)及びGX実現に向けた基本方針に基づき、全国規模での系統整備や海底直流送電の整備を着実に進めること、送電線の容量不足を補うために系統接続を希望する再生可能エネルギー発電事業者が負担する工事費などについて支援すること、FIT・FIP制度運用に係る手続きの効率化・迅速化を行うこと、再生困難で今後営農が見込めない荒廃農地について、非農地判断や農地転用手続きのあとに太陽光発電設備を導入するなど地域と共生した形で活用する場合は、山林化している荒廃農地の整地費用など、十分な支援策を講じることを求めている。
蓄電池の導入に関しては、系統用蓄電池は、再エネの出力変動に対応できる調整力などの供出や再エネ余剰電力の吸収が可能なものであることから、さらなる導入拡大のために支援策を拡充すること、蓄電池の普及を推進するため、FITを活用した既設の再エネ発電への導入も補助対象とするなど支援制度を拡充することを要望している。
さらに、改正地球温暖化対策推進法により導入された「促進区域」制度(ポジティブゾーニング)を市町村が積極的に活用できるよう、地域脱炭素化促進事業に関する市町村への財政支援や、同事業の実施主体となる地元事業者への税制上の優遇措置を行うなどにより、実効性の高い制度を構築するとともに、促進区域に限らず事業者が地域住民に事前に事業内容を説明する仕組みを整備することを求めている。全国知事会は、提言の内容を来年度の施策や予算編成に反映するよう、関係省庁へのはたらきかけを強めることにしている。
DATA
取材・文/高橋健一