政策・制度

【FIT/FIP大幅改正①】初期投資支援スキーム、始動! 屋根設置太陽光に追い風!!

今年度から導入された新しい制度を紹介する。初期投資支援スキームは、FIT/FIP期間を2つに分けて、初期の価格を高く、後期を低くする。投資回収の早期化を可能とし、屋根設置太陽光の導入をサポートする。

 

<目次>
1.エネルギー基本計画が示す屋根設置太陽光の重要性
2.2段構えの価格設定 FIT/FIPの劇的改革
3.初期投資支援スキーム 前倒しで適用開始へ

 

エネルギー基本計画が示す
屋根設置太陽光の重要性

新たなエネルギー政策の方向性を示す「第7次エネルギー基本計画」が閣議決定され、太陽光発電の重要性が改めて示された。将来(2040年度)の電源構成については、再生可能エネルギーを「主力電源として最大限導入」し、「4〜5割程度」にまで引き上げることが謳われている。なかでも太陽光発電には、全電源の「23〜29%程度」という大きな目標が設定された。この数値は、現在の導入量の2〜3倍の太陽光発電を、今後15年ほどで導入していくことを意味する。

これを実現するためには、太陽光発電の導入量を幅広い領域で伸ばしていく必要がある。しかし実際には、FIT制度導入当初に比べて、昨今の年間導入量は低下している。こうした状況にあって、エネルギー基本計画で真っ先に挙げられているのが、建築物の屋根や壁面の有効活用だ。「今後の太陽光発電の導入拡大にあたっては、まずは、比較的地域共生がしやすく、自家消費型で導入されることで系統負荷の低い屋根設置太陽光発電のポテンシャルをさらに積極的に活用していくことが重要である」とする。

具体的な数値目標も掲げられており、公共部門については、「国が率先して、2030年に設置可能な建築物などの約50%、2040年に設置可能な建築物などの100%に太陽光発電設備を設置すること」を目指す。住宅用太陽光については、「2050年において設置が合理的な住宅・建築物には太陽光発電設備が設置されていることが一般的となること」を目標とし、「これに至る2030年において新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備が設置されること」を目指す。また、工場・オフィスなどについては、「ZEBや自家消費型事業の普及拡大、省エネ法に基づく定期報告制度の活用、既存ストック対策の充実、建材一体型設備の導入など」を進めていく。

さらに、FIT/FIP制度についても、「投資回収の早期化や設置者の与信補完の観点から、調達期間・交付期間のあり方を検討する」とある。

 

 

2段構えの価格設定
FIT/FIPの劇的改革

初期投資支援スキームは、第7次エネルギー基本計画で示された方針を具体化したものだ。FIT/FIP制度における補助期間(FIT調達期間/FIP交付期間)のあり方が抜本的に見直されている。同スキームにおいては、従来の補助期間が2段階に分けられ、初期のFIT/FIP価格は高く、後期のFIT/FIP価格は低く設定される。これまでは補助期間中一律だった価格(固定価格)を2段構えにするものであり、大幅な制度改正といって良い。

なお、トータルな補助期間はこれまでと変わらず、住宅用太陽光は10年間、事業用太陽光は20年間となる。対象となるのは、屋根設置太陽光全般だ。

住宅用太陽光(FIT)における初期投資支援スキームでは、補助期間の10年間を初めの4年間と後期の6年間(5年目〜10年目)に分ける。そして、初めの4年間を初期投資支援期間とし、その間の価格は24円/kWhに設定する。一方で、後期の価格は8.3円/kWhと、初期投資支援期間の3分の1程度に抑えられる。事業用太陽光(FIT/FIP)については、屋根設置のみを対象とし、補助期間の20年間を初期投資支援期間の5年間とその後の15年間(6年目〜20年目)に分ける。そして、初期5年間の価格を19円/kWh、その後15年間を8.3円/kWhとする。ここでも、その価格差は2倍を優に超えるものとなっている。


出典:調達価格等算定委員会の資料を基に筆者作成


※10kW以上50kW未満については原則、自家消費型の地域活用要件を適用。
※2025年度は250kW以上、2026年度は50kW以上をFIP制度のみ認められる対象とし、FIT制度が認められる対象としない。また、一定の条件を満たす場合には50kW未満であってもFIP制度が認められる。
出典:調達価格等算定委員会の資料を基に筆者作成

初期投資支援スキーム
前倒しで適用開始へ

初期投資支援スキームは、今年度下期(2025年10月)のFIT/FIP認定案件から適用される。当初は2026年度からの運用が想定されていたが、初期投資支援スキームの適用を受けるためにFIT/FIP認定を2026年度以降に遅らせる事態が発生し、太陽光の導入拡大を滞らせることも懸念された。そうした可能性も踏まえ、前倒しで、2025年10月の認定案件から適用されることとなった。

なお、10月の認定を受けるためには、いつ頃に申請すれば良いのかはまだ明らかにされていない(2025年3月末現在)が、経済産業省資源エネルギー庁によると、4月前半には同庁ホームページに申請時期の目安を掲載するということだ。


取材・文:廣町公則

SOLAR JOURNAL vol.53(2025年春号)より転載

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