製品・サービス

HUAWEIキャンパスは、中国に出現した異世界!? PVソリューションとスマートカーの最前線を訪ねた

最先端のデジタルパワーソリューション、公道で実証されたEVの自動運転、ヨーロッパのような街並みがつづく研究開発センター、実証試験場を兼ねた工場屋根上の太陽光発電所……中国の本拠地に、HUAWEIの底力を見た!

▲ 松山湖キャンパス(トレーニングセンター)にある城のような図書館

HUAWEIが
中国プレスツアーを催行

HUAWEI(ファーウェイ)はこのほど、日本のメディアを招いて、中国本社とグループ会社・研究開発センターなどを紹介するプレスツアーを催行した。2023年11月29日・30日の2日間、訪れたのは中国南東部、香港に接する経済特区の深圳だ。

HUAWEI本社ビル

HUAWEIはこの街の一角に広大な敷地を有し、本社ビルほか関連施設を集めている。このエリアだけで、現在およそ4万人の社員が働いているという。研究開発センターは、本社から約40kmほどの風光明媚な松山湖の湖畔にあり、そのエリアにもおよそ2.5万人の社員が勤めている。総従業員数20万人超のHUAWEIにとっても、発祥の地であり、いまも本社を構える深圳は特別な場所だ。本稿では、主に再生可能エネルギーに関連する訪問先について紹介する。

デジタルパワーの
神髄がここに!

はじめに訪れたのは、日本でもお馴染みのパワーコンディショナや蓄電システムほか、最新のエネルギーソリューションを知ることのできる「エジソン展示ホール」。HUAWEIが2021年6月に設立した子会社HUAWEI Digital Power(ファーウェイ デジタル パワー)のオフィスビル内に設けられている。基本的には取引先を対象にした展示であり、ホール内の写真撮影は不可だったためご覧いただくことはできないが、日本への導入が待たれる製品群が輝きを放っていた。

HUAWEI Digital Power「エジソン展示ホール」入り口

HUAWEI Digital Powerは、それまでHUAWEIが行っていたスマートソーラー/スマート充電ネットワーク/データセンター電源/通信基地局電源/スマートEVなどの事業を統合し、さらなる展開を図るべく設立された。「デジタル技術とパワーエレクトロニクス技術の融合、クリーンエネルギーの開発、エネルギーのデジタル化により、グリーンで明るい未来のためのエネルギー革命を推進する」という経営理念のもと、「太陽光発電と蓄電池を主力とするクリーンエネルギー発電システムを構築し、再生可能エネルギーを主体とする新型電力システムを目標に、“電源-グリッド-負荷-蓄電”統合システムに多様なエネルギーを組み合わせ、クリーンエネルギーである再生可能エネルギーの主電力化を後押しする」というビジョンを掲げている。

エジソン展示ホールがあるHUAWEI Digital Powerビルも、そのビジョンに基づいて改修されており、全フロアの窓に太陽光発電ガラスを施工するなど、約3MWの設備容量をもつ発電ビルとなっている。さらに、2MWhの蓄電システムとエネルギーマネジメントにより、年間3395tのCO2排出削減を実現しているという。

自動運転システムの
最前線を体験

次に紹介したいのは、HUAWEI本社の敷地内にあるコンシューマー向けのショールーム。そこでは、スマートフォンやタブレットとともに展示されていた自動車が目を引いた。日本では「ファーウェイが自動車?」と思う人が大半だが、HUAWEIはこれからのスマートカーに欠かせない“自動運転システム”においても世界をリードする企業の1つとなっている。

HUAWEIの自動運転システムを実装したEV「LUXEED」

HUAWEIは2019年5月にスマートカー事業部門を立ち上げており、数多くの自動車メーカーに、スマートカー向けデジタルプラットフォーム/スマートコックピット/AR-HUD(拡張現実型ヘッドアップディスプレー)などを供給してきた。自社で自動車そのものを生産することはないが、メーカー各社との提携強化を進めており、いまや中国の自動車業界になくてはならない存在といわれている。

HUAWEIと賽力斯集団の共同ブランド車「AITO」

ショールームにあったのは、HUAWEIが中国の自動車メーカー・奇瑞と共同で立ち上げたブランド「LUXEED」のEV「知界S7」と、賽力斯集団との共同ブランドである「AITO」のハイブリッド車「M7」。いずれの車両にも、最新の自動運転システムが実装されている。

ハンドルに手を触れることなく、深圳市内の一般道を自動運転で走行

この日は、実際に「AITO」の助手席に乗って、自動運転システムを体感することができた。深圳市内の込み合う道路を、一般の車両に交じって、自動運転で走ってもらった。「目的地を指定しておけば、信号はもちろん、急な飛び出しにも対応し、安全に辿り着くことができる」というが、若干の不安は否めない。しかし実際のところ、運転手はあえて手放しで走行していたが、慌ててハンドルを握るような場面もなく、安心して市内クルーズを堪能することができた。

研究開発拠点は
ヨーロッパの観光地?

2日目は、まず、深圳近郊の景勝地・松山湖のほとりのある研究開発センターとトレーニングセンターを訪ねた。建物の中に入ることはほとんど許されなかったが、建ち並ぶ施設の外観とスケールの大きさには目を見張るばかり。


ヨーロッパの歴史ある建造物を彷彿とさせる研究棟(一部)

HUAWEIでは、この地を「松山湖キャンパス」と呼んでいるが、その規模は大学のキャンパスをはるかに凌ぐ。そして、その光景は、まるで異世界に紛れ込んだかのよう。研究開発センターはいくつかのエリアに分けられており、それぞれにフランス・ドイツ・イタリア・オランダなど、ヨーロッパの国々をイメージした街並みが作り上げられている。各エリア間には、観光地にあるような大きな窓の電車が走り、乗って揺られているだけでヨーロッパ周遊気分を味わえる…という想定外の世界だった。

松山湖キャンパス(研究開発センター)内は、のどかさが漂う電車で移動

トレーニングセンターも、世界観は同様だ。水鳥が羽を休める美しい池の周りに、心地よい街並みが再現されており、中でトレーニングが行われているとは到底思えない。池に掛かる橋は「オランダ橋」と名付けられ、橋の欄干にはダーウィンやガリレオ、ベートーヴェンなど科学者や芸術家の像が並んでいる。唯一入ることが許された施設である図書館は、まるで中世の城のような造りだった。


松山湖キャンパス(トレーニングセンター)の一角。下は、宮廷のような図書館の内部

松山湖キャンパスは、「独創的な発想を育むため」にこうしたデザインにしたのだという。HUAWEIならでは先進的な技術力──それを生み出す源泉の1つが、この地にあることは間違いさなそうだ。

工場屋根の発電所で
パワコンの信頼性を検証

最後に紹介するのは、松山湖キャンパスに程近いHUAWEI南方工場。この工場には、パワーコンディショナの生産ラインがあり、屋上には太陽光パネルが敷き詰められている。そして太陽光パネルの脇には、様々なタイプのパワーコンディショナが、様々なスタイルで設置されている。工場で使う電力の一部を太陽光で賄うとともに、ここではパワーコンディショナの実証実験も行っているのだ。

屋上に太陽光パネルが敷き詰められたHUAWEI南方工場

HUAWEIには、別にGCTCと呼ばれるグローバル認証試験センターがあり、凍結試験/温度サイクル試験/暴風雨試験/塩水噴霧試験/防塵試験/落下試験/落雷試験など、多種多様な試験を行っている。しかし、「パワーコンディショナは基本的に屋外に長期間にわたって設置されるものであり、実環境下での信頼性試験を疎かにしてはいけない」と考えているという。南方工場の屋上は、こうしたHUAWEIの姿勢を具現化する取り組みの一環ともいえるだろう。

HUAWEI南方工場の屋上では、パワーコンディショナの長期信頼性テストを様々なかたちで実施

HUAWEIのソリューションは、なぜ世界の太陽光発電市場をリードし得るのか。HUAWEIはこの先、何を目指そうとしているか。その答えの一片を、垣間見ることのできる2日間だった。


取材・文・写真/廣町公則

関連記事

太陽光関連メーカー一覧

アクセスランキング

  1. 【終了】2024年4月23日(火)「第29回PVビジネスセミナー」~ 市場動向/PPA・蓄電池の最適化モデル ~...
  2. 太陽光発電所 銅線ケーブルの盗難被害が相次ぐ 銅の価格上昇が背景に
  3. 市場運用者・広域機関に聞く、長期脱炭素電源オークションが目指すものとは?...
  4. 【2024年太陽光ビジネス】再エネは「長期安定電源」になる! 事業環境の整備に必須のリパワリング...
  5. 太陽光パネルの増設・更新を促進! 2024年度にルール見直し
  6. 【受付中】5/28(火) ケーブル盗難のリアルを知るための「太陽光のリスク管理」セミナー開催...
  7. 太陽光発電、盗難保険金が急増 持続的な保険提供が困難になる可能性も
  8. 【地域共生成功モデル紹介】ゼロカーボンビレッジ創出&市民参加型の取り組み...
  9. 太陽光発電所の盗難被害が急増 外国人グループの犯行か
  10. 経産省、新電力ビジネスの経過措置「部分供給」の見直し案 オフサイトPPAへの影響は?...
太陽光業界最新ニュース

フリーマガジン

「SOLAR JOURNAL」

vol.48 | ¥0
2024/01/31発行

お詫びと訂正

ソーラー電話帳 SOLAR JOURNAL メディアパートナーズ