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ペロブスカイト太陽電池 国内製造と実用化へ技術連携コンソーシアム

桐蔭横浜大学発ベンチャーのペクセル・テクノロジーズ(川崎市)と麗光(京都市)、マクニカ(横浜市)、MORESCO(神戸市)の4社は、ペロブスカイト太陽電池の国内製造と実用化に向けて技術連携コンソーシアムを設立した。

(アイキャッチ画像 ペロブスカイト太陽電池 出典 桐蔭横浜大学)

今後3年以内の
国内製造と実用化を目指す

ペロブスカイト太陽電池は、桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授が発明した日本発の技術。従来の太陽光パネルに比べて重さは100分の1。軽く、薄く、柔軟性があり、塗布も可能で、さらには少ない光量でも発電できるのが特徴。都市のビル壁面や、湾曲した部分、室内でも発電が可能となり、衣服で発電するなどこれまでになかった使い方により、発電の概念を変える最先端技術だ。

しかし、日本発の技術でありながら、開発面では巨額の投資を受けた海外勢が先行している。このため政府は、国を挙げてペロブスカイト太陽電池の実用化に取り組む意向を表明している。4社が設立した技術連携コンソーシアムには、桐蔭横浜大学と共同研究してきた三菱ケミカルが技術協力する。コンソーシアムは、今後3年以内の国内製造と実用化を目指す。

コンソーシアムに参画するサービス・ソリューションカンパニーのマクニカは、港湾などの苛烈な環境におけるペロブスカイト太陽電池の活用に関する技術開発が、環境省の「地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業」に採択され、2023年度から3年間の技術開発・実証事業を開始する。この事業は、宮坂特任教授の指導のもと、コンソーシアムに参画するペクセル・テクノロジーズ、麗光、マクニカの3社で推進する。

横浜大桟橋で
大規模実証

大規模実証を行う横浜大桟橋(出典 マクニカ)

技術開発・実証を行う場所は、横浜市のみなとみらい地区。横浜大桟橋の一部を使用して大規模実証を行う。港に面した特性を生かし、塩害などの苛烈な環境下や、波打った屋根の上、より面積の大きい形状など、さまざまな条件下で実証を行うことにしている。今回の大規模実証では、「交換前提とした場合のコスト要求を達成するセル製造塗布方式の確立」、「屋外苛烈環境向けジャンクション構造と最適封止モジュール構成の確立」、「港湾施設などの苛烈環境下に対応するパネル開発」を目指す。

技術開発にあたっては、薄膜フィルム結晶製品製造技術を持つ麗光と協業し、マクニカは、全体の統括役として事業を推進する一方、IoT、AIの社会実装経験を活かし、国内で製造したペロブスカイト太陽電池モジュールを用いたパワーユニットのシステム開発に取り組む。マクニカは、「国土的に太陽光パネルの設置が難しい日本だからこそ、大規模実用化により、どこでも自立して電源を確保できる未来社会の実現を目指す」としている。

横浜市と
連携協定を締結

学校法人桐蔭学園と横浜市が連携協定(出典 横浜市)

桐蔭横浜大学を運営する学校法人桐蔭学園は2023年2月、横浜市と連携協定を締結した。2030 年度の温室効果ガス排出量 50%削減、2050 年の脱炭素化の実現に向けて、ペロブスカイト太陽電池の実証、実装の支援及びこの技術を活用した市民・事業者の機運醸成に関して連携する。

宮坂特任教授は、「わが国で発明され、そして横浜発の新型太陽電池であるペロブスカイトを社会実装するための技術開発を行い、横浜みなとみらい地区の大桟橋で実証をするこのプロジェクトには大きな意味があります。ひとつは一般の人が見られる場所で公開すること、もうひとつは周辺に影を落とす障害物がなく、強い日射と潮風にさらしながら実用耐久性を実証することです。これまでの太陽電池と違って、原料を輸入に頼らず国内で調達し、しかも日本が誇る溶液塗布の高い技術を使って製造する軽くて曲げられる太陽電池を開発します。軽量であることは多くの用途に向けて求められてきた課題で、まさにこれを高い変換効率を維持しながら実現するのがペロブスカイト太陽電池です。その先端研究で世界的な成果を上げている桐蔭横浜大学も、この技術開発と実証事業に協力していきます」としている。

DATA

発明者の宮坂教授とマクニカが、環境省実証事業で社会実装に向け始動


取材・文/高橋健一

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