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順風満帆ではない“再エネ先進国”ドイツの苦境(後編)

2019年は、COP25の開催や異常気象の被害により、“気候変動の1年”になったといえる。2020年、再エネの潮流はより大きくなるだろう。重たい腰を上げ始めた日本に比べ、再エネ先進国の状況はどうなのか。エネルギージャーナリスト・北村和也氏による好評の連載コラム第13回(後編)。

2020年の初頭に示された昨年のドイツの再エネ電力の割合は46.1%と驚異的な数字で大きな伸びを示したことを前回取り上げた。CO2の排出量も前年比7%の減少と、再エネ先進国に輝かしい光が降り注いでいるように見える。

一方、世界の気候危機が拡大する中、ドイツの石炭発電が欧州内の非難の槍玉にあげられているのは日差しの奥にある影の部分かもしれない。ドイツ政府が2038年までと掲げた脱石炭政策に数兆円という拠出金や補助金を費やすまで追い詰められているのも現実である。

さて、前回示した今年1月2日に発表されたフラウンホーファー研究所ISEの「2019年ドイツ国内の発電に関する報告書」に立ち戻り、いくつかの興味深い数字を示してみたい。

ここではVREに関する数字を取り上げる。

最近の世界の再エネの統計を見ると、その多くで再エネ発電というくくりとは別にいわゆる「VRE(可変的再エネ)=風力+太陽光発電」の数字だけをまとめている。これは、広くどこにでも存在し原料費のかからない限界費用ゼロの再エネを最重要視しているからである。



フラウンホーファー研究所の報告書が示す課題
~VREと柔軟性

2019年のドイツの再エネ発電の割合46.1%の中で、いわゆるVRE(可変的再エネ)は33.6%になる。つまりドイツではすでに変動電源が全発電量の3分の1を占めるまでになっている。最も再エネの比率が少なかった日は1月24日で全体の15.9%、逆に比率が大きかったのは6月8日の77.2%であった。6月8日は春の落ち着いた気候で企業などが休みの土曜日で、電力使用量が非常に小さかったと容易に想像される。

60ポイント以上になる再エネ比率の大きな落差は、このように電力需要の大きな変化にも左右されるのだが、このギャップを埋めて再エネを無駄なく利活用するためには『柔軟性』が重要かつ必要である。

VRE(可変的再エネ)の特徴は、夜発電しない太陽光発電という毎日のことだけではなく、冬の風力発電と夏の太陽光という季節的な変動も大きい。月別の発電量のピークで見ると、風力発電は3月が稼ぎ頭で、最少の8月はその3分の1を少し超える程度となる。一方の太陽光発電は、ピークが6月で最も発電量が少ない1月はその9分の1弱と極端に下がる。

しかし、お互いのピークの時期が季節の反対に位置するため、発電量の多寡をちょうど補完することができ、この結果、VRE(風力+太陽光発電)の合計発電量は、最大3月と最少11月の間で2倍以下とぐっと縮まるのである。

つまり、風力と太陽光発電の程よい組み合わせはナチュラルな柔軟性として機能する。フラウンホーファー研究所ISEの報告書では、まだドイツは理想的な風力対太陽光の比率になっておらず、2019年末で16GW分の太陽光発電施設が不足していると結論付けている。

気候危機への関心がピーク
しかし削減目標の達成には疑問

1月28日、もう一つの重要なドイツのエネルギーレポートがベルリンのアゴラ・エナギーヴェンデ研究所から出された。

その冒頭に載せられているのが、政治的課題に関する世論調査であった。最も重要な課題として、昨年の3月以降、『気候危機とエネルギーシフト』がトップを走っている(複数回答で40%前後)という結果である。それまで圧倒的だった『移民』問題を押しのけての一位であり、気候、環境に対するドイツ人の関心の高さ、危機感を示している。

その国民的関心事の中心である二酸化炭素の排出量について、昨年5,000万トンと大きく減った(1990年比35%削減)ことをフラウンホーファー研究所ISEと同様に取り上げている。しかし、この先の展開については懐疑的である。わざわざ「私たちは2020年に目標40%削減を達成できるか」という項目を立てている。

アゴラ・エナギーヴェンデが出した結論は、残念ながら「たぶん達成できない」であった。2020年の目標達成には、昨年を上回る6,000万トンのCO2削減が必要だがかなり難しいというのである。具体的には、2019年の特に発電部門での好条件が維持できない可能性が高く、例えば、昨年は天候が良く、電力消費量が大きく減り太陽光と風力発電が好調だったが、今年の天候までは保証されない。また昨年の石炭発電の激減も天然ガスの値段の上昇で元に戻ることも十分あると説明している。



再エネの拡大は本当に好調なのか

再エネ発電に関する重要な課題は、天候以外にもある。

アゴラ・エナギーヴェンデは、中でも陸上風力発電の拡大について大きな懸念を示している。昨年設置された陸上風力発電施設(10月まで)は、わずか0.66GWであった。この18年間で最低であり、おととし2017年の7分の1以下に激減している。また1GW未満だったのは2008年だけしかない。一方で、洋上風力もこのところの平均に近い1.22GWの新設で決して大きいとは言えない数字であった。

ドイツはFIT制度からFIP制度に大きく転換し、さらにほとんどで入札を取り入れている。この制度転換が陸上風力の激減の大きな原因のひとつというのが衆目の一致するところであり、これに風力発電の適地不足や認可の問題が拍車をかけている。

昨年の風力発電による発電量は風況がよく15%以上の増加を示したが、その裏で新設は激減していたのである。アゴラ・エナギーヴェンデは、2030年の再エネ目標を達成するためには、政府の「決定的な政策行動が今求められる」と締めくくっている。

私がドイツの再エネや二酸化炭素削減の課題が直面する厳しい現実を示しているのは、ドイツの再エネ政策が単純にいいか悪いかの評価をするためではない。世界がCO2削減を必須として気候危機に立ち向かう中で、再エネ先進国といわれるドイツでさえ苦しい選択を日々求められることを知ってもらう必要があると考えるからである。



日本は再エネの後進国である。これまでドイツの制度をマネしてなんとかここまで進んできているのは紛れもない事実である。今、FIT制度を賦課金の課題だけでバタバタと変更し、同じドイツのFIP制度や入札制度を取り入れようとしている。そこに市場の公平性など横たわる多くの課題が、さらに日本にはあることにどれだけ気付いているのであろうか。

後戻りという選択肢はない。しかし、先達の歩んでいる道をきちんと精査することはできる。「他山の石」という言葉をもう一度思い出してほしい。

プロフィール

エネルギージャーナリスト。日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表。

北村和也

エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
日本再生可能エネルギー総合研究所公式ホームページ

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