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「再エネ主力電源化時代」を先取りして俯瞰する【後編】~あふれる再エネの必要性~

「CO2排出量の多い国では、企業の時価総額も下がる」という事実が日経新聞により証明された。日本はまだまだ脱炭素への取り組みが十分でないため、再エネ電力の必要性はさらに高まっている。そして、再エネの拡大が進む中で課題となる電力の余剰についてはどう解決するべきなのだろうか。エネルギージャーナリスト北村和也氏が語る。連載コラム第21回。

>>前編はこちらから

再エネ拡大につながる
日本政府の動き

前回は、今後再エネを飛躍的に拡大させるためには、VPPなどの柔軟性を取り入れる必要があり、それにはデジタル化が必須であると書いた。後編では、再エネの拡大で課題とされている電力の余剰について、ドイツの例も挙げて説明したい。

この間に再エネに関する日本政府の動きなども見えてきた。容量市場という後ろ向きの話もあるが、ポジティブなことして、エネルギー基本計画の改訂議論の中で、2030年の電源構成目標が変わろうとしている。

また、再エネ報道も変わってきている。10月中旬の日経新聞の記事「脱炭素、企業価値に直結 排出削減、マネー呼ぶ」は、世界企業の脱炭素への動きを客観的に分析しており、日本企業へ影響をもたらすであろう。

まず、この2つのニュースと論評から見ていこう。

電源構成の見直し必至か?
エネルギー基本計画改定

10月13日資源エネルギー庁は、「総合資源エネルギー調査会基本政策分科会」という長い名前の会議を開催した。エネルギー基本計画を見直すためである。基本計画は、エネルギー政策の基本的な方向性を示すもので、およそ4年ごとに見直されてきている。現状の計画は、2年前の2018年7月に閣議決定された第5次で、2030年のいわゆるエネルギーミックス(電源構成)を、再エネ22~24%程度、原子力20~22%程度などとしている。

今回の見直しのポイントは、電源構成の変更と原発の新増設などと想定されている。始まった議論の中で、委員の一人は「2030年のエネルギーミックスの変更あり」と受け止めた。また、梶山経産相が日経新聞との単独インタビューで、再生可能エネルギーを「他の電源に比べ上位の主力電源にしていく」と表明しており、筆者は電源構成の変更(再エネ枠の拡大)はほぼ確実だとみている。

この後述べる“経済界からの要請”も確実に後押しして、今後、日本での再エネ主力電源化は既定路線として強く実現化が求められる。

「脱炭素、企業価値に直結」
日経が書くインパクト

日経新聞は、ビジネスマン必読の新聞と言っても間違いではないであろう。

その新聞がはっきりと、二酸化炭素から脱却しないと企業の将来はないと書いたのである。内容はどこから見ても正しい。その影響は確実に経済界、政府に及ぶ。

記事は、10月13日に、合わせて20兆ドル(2,100兆円)という巨額の資産を運用する世界137の機関投資家が発した次の訴えから始まる。「気候変動に関する社会の要請や規制が強まり、(脱炭素の)目標を設定しない企業は思わぬコストを負い、事業を失うだろう」。さらに、CO2排出量の多い世界1800社に集団で書簡を送り、5~15年先の排出目標の設定を働きかけるという行動にまで出たのである。

投資側がなぜここまで危機感を持つかというと、企業が適切に対応しなければ社会から淘汰され、投資家も損失を被るからである。4年半前のパリ協定締結の際、同時に石炭関連への投融資から手を引く議論がされていたのと同じ論理である。

日経の記事では、世界およそ2000社の二酸化炭素排出量データと株式市場の推移を比較し、「CO2排出量が企業価値を左右する」ことを具体的に証明している。

一部、引用してまとめると、以下のようになる。


■2018年までの4年間で排出量が変化した企業の時価総額(2017年末比)
◇排出量が半分以下となった上位30社 ⇒+15%
◇排出量が2倍以上となった上位30社 ⇒-12%


また、記事は、日本の対応の遅れを危惧していることも示している。

主要企業の排出量合計の推移をみると、世界では-5%なのに対して、日本は-1%強と大きく見劣ることから、「国と企業の両方で脱炭素の取り組みが欠かせない」と結論付けている。

つまり、二酸化炭素を削減しない企業の株価は下がって生き残れなくなるが、その取り組みで日本はかなり遅れているということを数字で証明したのである。

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