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「エネルギー基本計画」の見直し議論。主力電源化に本腰なら柔軟に

日本のエネルギー施策の根幹となるエネルギー基本計画の見直しの議論が始まった。世界的には太陽光と風力が主力電源になっているにもかかわらず、日本はまだまだ遅れている。どういう議論をすべきか。飯田哲也氏のコラム「再エネの達人」。

日本の再エネは「周回遅れ」
今までのあり方を見直すとき

日本のエネルギー施策の根幹となるエネルギー基本計画の見直しが始まりました。前回の第5次エネルギー基本計画(2018年)は、内実はともかく「再生可能エネルギーの主力電源化」の看板が掲げられた点では、歴史に残るものだと評価できます。というのも、それまで脇役とされてきた再エネを主力電源にすると宣言したのですから。

しかし、世界と比較すると日本の再エネへの取組み状況は周回遅れです。

この10年間で、太陽光発電の価格は10分の1に、風力発電のコストは7割減となりました。蓄電池の価格は5分の1になろうとしています。太陽光・風力・蓄電池が、旧来の化石燃料や原子力発電に頼るエネルギー構造をひっくり返そうとしているのです。エネルギー思想として、この認識を持つことが重要です。

太陽光発電を加速度的に普及させるには、これまでのあり方の見直しを中心コンセプトに据えるべきです。土地の利用計画や自然保護、地域の参加といった観点を丁寧に見直し、よりよい普及方法を模索することが大切です。送電線の接続や逆潮流、容量市場も大切な問題です。大規模・集中型というパラダイムを捨て、新しい小規模・分散型で双方向のネットワークにリデザインしなければなりません。今の日本の状況は新しい方向性に適合不良を起こしているといえます。

爆発的に広がる世界の再エネ
中心的な一次エネルギー源に

世界的にみても、太陽光と風力は爆発的に急拡大しています。まるで連鎖反応のように、加速する増加の勢いはとどまるところを知りません。世界中の研究機関も、こぞって太陽光と風力が主力電源となる日も近いと予測しています。早ければ2030年に、文字通り主力電源になると確信されているのです。国際エネルギー機関(IEA)は『太陽光発電が世界の電力市場の新たな王になる』とさえ表現しました。

さらに言えば、太陽光と風力は主力電源という枠を超え、中心的な一次エネルギー源になると期待されています。発電源という枠組みを抜け、セクターカップリング(分野統合)によって一次エネルギー源の転換につながっていくのです。すべての分野における最も重要なエネルギー源が、太陽光や風力となると考えられています。

福島事故から10年の節目
主力化へのパラダイム転換

今年は、2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故から10年の節目です。しかし、この節目を前に、原子力規制委員会は日本原燃株式会社の六ヶ所再処理工場、東京電力ホールディングスの柏崎刈羽原子力発電所の安全性を認可したことはナンセンスでした。東京電力が10年前の重大な事故の責任を取らないまま、再稼働はありえない話です。

昨年10月1日からは、原発の「過去の賠償費用」や「廃炉会計費用」を回収するために託送料金が改定されています。託送料金は最終的に消費者が支払うため、実質の負担増になります。

取り組むべきは、原発の再稼働ではなく再エネの出力抑制を引き起こしている優先給電ルールの見直しです。現在の原発を最優先するルールではなく、太陽光・風力を最優先とすることが重要です。純国産で二酸化炭素も放射能も出さない太陽光と風力を最優先する「再エネ主力パラダイム」への切り替えが求められます。

電源とシナリオ別にみた世界の発電量変化(2000年-2040年)


白:2000-2019
青:2019-2040(STEPS)
緑:2019-2040(SDS)

STEPS(Stated Policies Scenario)は、現在の政策目標を反映したシナリオ。SDS(Sustainable Development Scenario)は、パリ協定の目標やエネルギー調達、大気汚染などの目標を含み、完全な形での持続可能性を目指すシナリオ。

出典:IEA「World Energy Outlook 2020」より編集部作成

 

PROFILE

認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所(ISEP) 所長

飯田哲也氏


自然エネルギー政策の革新と実践で国際的な第一人者。持続可能なエネルギー政策の実現を目的とする、政府や産業界から独立した非営利の環境エネルギー政策研究所所長。Twitter:@iidatetsunari


取材・文/山下幸恵(office SOTO)

SOLAR JOURNAL vol.35(2020年秋号)より転載

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