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改正温対法が求める「地域主導の脱炭素」

5月末に改正温対法が成立した。この改正の背景には、「地域の主導による脱炭素」を推し進めたい国の考えがある。改正温対法と脱炭素社会の実現への道筋について解説する、エネルギージャーナリスト・北村和也氏の連載コラム第26回。

温対法は、正式名称を「地球温暖化対策の推進に関する法律」という。国や自治体、民間企業や国民などが温暖化対策にどう取り組むかを示し、最終的には持続可能な社会を築くことを目的にしている。

背景には、このところの脱炭素への急傾斜がある。どう実現させるかの指針を明確にするために、改正を行ったのである。2050年を最終的な期限とする緊急性を前提にした、具体的な手当てである。結論は一言、「地域の主導による脱炭素」となる。

今回と次回の連続コラムでは、5月末に成立した改正温対法と脱炭素実現への道筋「地域脱炭素ロードマップ」の重要性を解説したい。ロードマップの解説は、後編に回す。

基本理念と地域における
脱炭素実現の促進策

各種の報道にもあるように、改正温対法では「2050年までの脱炭素社会実現」を明記した。カーボンニュートラル達成を法律で確認し、いわば背水の陣を敷いたのである。また、実現にあたっては、「国民、国、地方公共団体、事業者、民間の団体等の密接な連携の下に行われなければならない」として、広いコラボと特に地域での連携を強調している。

そして、実現に向けての2つの柱を新たに作っている。
ひとつは、「地域の脱炭素化に貢献する事業を促進するための計画・認定制度の創設」、そして、「脱炭素経営の促進に向けた企業の排出量情報のデジタル化・オープンデータ化の推進」である。前者は、自治体が目標を設定し、脱炭素の『促進区域』を作ることであり、後者は、企業の排出量データの公開に関するものである。

これらをまとめると、政府のこんな思惑が浮かび上がる。
自治体と企業に対して、脱炭素に向けた具体的な目標を立てさせ、地域内でコラボしながら実施に向けて進めさせること。そして、その中で自治体と企業を選別、競争させるものである。

環境省が推し進める「2050年二酸化炭素排出実質ゼロ宣言」を表明する自治体はすでに400を超えている。しかし、しっかりした道筋を決めているところは少なく、その本気度が疑われるところもある。また、主要企業の4割が脱炭素を表明しているが、具体策に欠けたり、中小企業などでは取り組みをためらっていたりする場合も少なくない。

このままでは、最終的なカーボンニュートラルどころか2030年の中間目標の達成もおぼつかない。改正法では、自治体と企業の尻を叩こうという思いが透けて見える。脱炭素の切り札、再エネの拡大は、分散型エネルギーの特徴を背景に、地域主導でかつ官民の協力なくしてはできないと考えたのである。

自治体に求める
脱炭素化の目標設定

前述したようにゼロカーボンシティの宣言自治体は400団体を超えた。その中に40の都道府県(6月14日現在)が入っており、脱炭素宣言地域には総人口の8割以上の人が住んでいることになる。つまり、もはや宣言をするかどうか迷う余地はなく(=宣言するのが当たり前)、いつ、どうやって脱炭素をクリアするかにポイントは移ってきている。そういう中での、温対法改正なのである。


「地域の脱炭素化の仕組みに期待される効果」
(出典:2021年3月「地球温暖化対策推進法の一部改正法案」環境省 地球環境局 地球温暖化対策課の資料より)

促進区域を核とした取り組みの流れは、上記のようになっている。

まず、都道府県・政令市・中核市に対して、脱炭素の「施策の実施に関する目標」を義務化した。市町村では「努力目標」ではあるが、目標設定を求めたのが新しい。宣言だけではダメだとしたのである。

また、市町村は実施母体とされ、促進区域を定める努力を促している。面白いのは、同時に、「地域の環境の保全のための取組、地域の経済及び社会の持続的発展に資する取組」も決めるようコメントしていて、脱炭素の取り組みが、環境保護や地域経済の活性化、持続可能な社会形成につながるとしている。環境省の進める「地域循環共生圏」やSDGs実現の思想がここには埋め込まれている。

実行計画と事業計画、
企業の排出量情報の公開

自治体は、目標に応じて地域の再エネ資源利用などの実行計画を作ることになる。これが地域における再エネ利用などの基本プランで、民間企業にとってみれば、事業=ビジネスのチャンスを予見する重要なヒントになる。そして、その場所が、地域脱炭素化促進事業の促進区域となる。

自治体の実行計画は公表される。これに対して、民間企業は事業計画として様々なプランを提案し、自治体は「地域に貢献する優良事例を選定・推進」する。こうやって事業が認定されれば、円滑に実施されるように支援策が用意される。

例として、以下が挙げられている。
• 関係法令のワンストップサービス
• 環境アセスメントの配慮書手続の省略
• 補助事業での加点措置等

もうひとつの柱にも触れておこう。企業の排出量情報のデジタル化とオープンデータ化である。

これまでも、温室効果ガスを3,000t/年以上排出する事業者には、排出量を算定して国に報告することが義務付けられていた。またデータは国が集計・公表していたが、開示請求の手続きが必要であった。

しかし、今回の改正でまず、原則として電子システムでの報告とした。そして、事業所等の情報についても開示請求の手続なく公表することにしたのである。

つまり、排出量のデータはオープンにされるのが当たり前となり、隠すものではなく積極的に開示し、排出への対策をどう取っているかがダイレクトに評価されることになるのである。データを出さない企業はマイナス、出すことがプラスになる時代が到来したといってよい。

自治体、企業の選別の時代へ

改正法の全体をもう一度眺めてみよう。

その思想は明らかである。まず、自治体と地域企業による地域主導の脱炭素が基本となる。繰り返すが、再エネは分散型エネルギーであり、都市部より地域に、より多くの資源が集中している。よって、再エネ利活用の拡大は、地域主導になるのは当然の帰結である。そして、実行にあたっては、自治体+民間企業という地域でのコラボを原則としている。自治体の予算は細っており、地域の公的支出に頼ることはできない実態が背景にある。例えば、太陽光発電施設の拡大も自治体の補助金よりPPAのように民間の力を借りるのが現実的なのである。

また、目標設定、実行計画、事業計画など、積極的な取り組みをしている地域に、より傾斜してお金やメリットが行くように設定されている。改正法案の資料にもあるが、「ゼロカーボンシティ再エネ強化支援パッケージ」なども用意されることになる。複数年度にわたる使いやすい国の補助金や、原発に対して行われていた電源三法の再エネ版の検討も進んでいるほどである。

つまり、脱炭素を進める地域や企業には手厚いサポートが用意され、きつい言い方をすると、それ以外は見捨てられることになりかねない。脱炭素の取り組みは、自治体と企業の選別を生むといっても過言でない。「脱炭素=地域活性化」、これがベースにあることを忘れてはならない。

温対法の改正については、多くは総括的な話しかされておらず、まだ地域での反応は大きくない。しかし、次回のコラムで説明する「地域脱炭素ロードマップ」も含めてみれば、対応できる地域とそうでない地域は、その将来が大きく分かれることになる。

それぞれの地域はこのことをしっかり受け止めたうえで、早急な対応が必要である。
 

プロフィール

エネルギージャーナリスト。日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表。

北村和也

エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
日本再生可能エネルギー総合研究所公式ホームページ

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