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東京都、住宅用太陽光発電設備の設置義務化へ。太陽光の導入加速

太陽光発電の新たな導入加速策として、東京都が打ち出した「設置義務化」に注目が集まっている。東京都環境審議会で検討が進められており、5月24日に方針が取りまとめられた。脱炭素社会の実現に向けて、全国の自治体への波及効果も期待される同施策のポイントを整理する。

2030年カーボンハーフ
に向けて──

東京都は、2050年カーボンニュートラル達成のためには、2030年までの行動が極めて重要であるとして「2030年カーボンハーフ」を表明している。2030年までに、都内の温室効果ガス排出量を50%削減(2000年比)するというものだ。

これを実現するためには、都内CO2排出量の約7割を占める建物への対策強化が急務であり、建物のゼロエミッション化を加速させていかなければならない。その一環として導入されようとしているのが、戸建住宅等への太陽光発電設備の設置義務化だ。

都内CO2 排出量の部門別構成比(2019年度)


出典:東京都環境局

住宅供給事業者に
設置義務量を課す

東京都が打ち出した「新築住宅への太陽光発電設備の設置義務化」とは、一定規模以上の住宅供給事業者(分譲または注文住宅を供給するハウスメーカー等)に対して、新築中小規模建物(延床面積2000㎡未満の戸建住宅・ビル等)への太陽光発電設備の設置を義務づけるというもの。

義務を課せられる対象者は、住宅購入者(施主)ではなく、あくまでも住宅供給事業者となる。具体的には、供給延床面積の都内合計が年間2万㎡以上の住宅供給事業者を設置義務者とする方針だ。

個別の建物ごとの義務づけではなく、住宅供給事業者単位で総量として設置義務量を課す。設置義務量は、区域ごとに定める設置可能率と1棟あたりの義務量、年間供給棟数から算出される。

設置可能率等の値は今後の検討に委ねられるが、例として、設置可能率を85%、1棟あたりの義務量を2kWとするケースが示されている。年間供給棟数500棟の事業者なら、「500棟×85%×2kW」で、設置義務量(総量)は850kWとなる計算だ。

なお、この制度は、すべての建物に一律に設置を求めるものではない。義務対象の事業者がどの建物に設置するかは、日照条件や住宅購入者の意向なども考慮して、柔軟に決定することができる。

設置義務量の考え方

区域に応じて設置可能率を設定

初期費用ゼロで太陽光発電設備を設置できる手法例


出典:東京都環境審議会資料

初期費用ゼロで
設置できる方法も

設置義務者が住宅供給事業者であっても、通常、発電設備の導入にかかるコストは住宅価格に上乗せされ、住宅購入者の負担となる。都の試算では、標準的な戸建住宅に4kWを設置する場合で、設置費用は約92万円。ただし、毎月の電気代が1万円程度の家庭なら、電気代削減と売電により約10年で回収できるとする。補助金等を活用すれば、より短期間での回収も可能となる。

とはいえ、住宅購入者にとって、初期費用が増大することに変わりはない。そこで、東京都環境審議会では、PPAモデル等を用いて義務量達成を図ることも認めていく方針を示す。太陽光発電設備を初期費用ゼロ円で設置できる手法として、リース、電力販売(PPA)、屋根借り等を挙げている。

現在、設置義務化の議論は最終段階を迎えており、年度内には正式決定される見通しだ。

初期費用ゼロを実現するPPAモデルとは?

PPAとはPower Purchase Agreementの頭文字をとったもので、電力購入契約を意味する。上の表のとおり、初期費用ゼロで太陽光発電を導入できる手法はいくつかあるが、なかでも近年、PPAに関心を寄せる事業者が増えている。

いま一般にPPAモデルといわれているものは、家庭や企業・自治体が保有する建物・施設の屋根などに、PPA事業者が無償で太陽光発電設備を設置し、発電した電気をその家庭や企業・自治体が電気代を払って使うというスキームだ。

発電設備の所有権は、建物・施設の所有者(需要家)ではなくPPA事業者がもち、PPA事業者は電気代というかたちで設置費用を回収し、収益を上げる。この電気代には再エネ賦課金や燃料費調整額がかからない。需要家にとっては、無償で設備を設置できることに加え、安価な再エネ電力を使うことができるというメリットがある。

●PPA事業スキーム(イメージ)


出典:東京都環境公社

 

お得に使える東京都の住宅向け補助制度

東京都では、住宅向けの補助制度についても拡充を図っている。現在、利用できる主な補助制度は以下のとおり。太陽光発電システム設置義務化との相乗効果が期待されている。

1 東京ゼロエミ住宅を新築 最大210万円
東京ゼロエミ住宅とは、高い断熱性能をもった断熱材等を用いたり、高い省エネ性能を有する照明やエアコンなどを取り入れた住宅。

2 高断熱窓に改修 最大100万円、補助率3分の1

3 高断熱ドアに改修 最大16万円、補助率3分の1

4 V2Hを設置 最大50万円、機器・工事費の2分の1(太陽光発電とEV/PHVがそろう場合、最大100万円)

5 蓄電池を設置 最大1,000万円、機器費の2分の1

6 太陽光パネルを設置
〈3kWまで〉
新築住宅:最大36万円/既存住宅:最大45万円
〈3kW以上〉
新築住宅:最大500万円/既存住宅:最大600万円

(1~5の補助制度を活用する場合、またはエコキュート等を設置する場合の上乗せ補助)

太陽光発電協会(JPEA)
ハウスメーカーとのマッチングを支援

設置義務化を太陽光発電業界は、どのように捉えているのか。JPEA住宅事業推進部長の中西英雄に聞いた。

今回打ち出された方針は、設置義務の対象者を施主ではなく住宅供給事業者とするなど、無理のないやり方になっていると思います。住宅用太陽光発電のシステム価格は低減が進み、住宅購入者にとっても、導入による経済的メリットがある状況となっています。

ただ、家を建てるお金にプラスして、太陽光発電に初期費用がかかるのは厳しい、と考える方も少なくありませんので、施主の負担をいかに減らすかが課題だと思っていました。JPEAとしては、その課題を解決するために、太陽光をゼロ円で設置できるPPAモデル等の利用を提案してきましたが、都の方針にもそれが盛り込まれています。設置義務化によって、価格が上がり、住宅が売れなくなるという懸念は当たらないといって良いでしょう。

現状においては、PPA事業者等とハウスメーカー・工務店さんとのコミュニケーションがうまく取れていないという面もありますので、我々としては、両者の仲を取り持っていくようなことができればと考えています。太陽光の販売施工店やEPCさんにとっては、新たなビジネスチャンスともなるでしょう。

国は「2030年において新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備を設置」を目標に掲げており、東京都の施策はこれを具現化するものでもあります。都の取り組みが全国に拡がり、大きな実を結ぶことを願ってやみません。

太陽光発電協会
住宅事業推進部長

中西英雄氏

1999年 京セラソーラーコーポレーション入社。京セラソーラーエネルギー事業本部を経て、2019年より現職。


取材・文:廣町公則

SOLAR JOURNAL vol.42(2022年夏号)より転載

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