脱炭素

太陽光パネルのリサイクルを高純度&CO2ゼロで実現する、新見ソーラーカンパニー

新見ソーラーカンパニーは、使用済み太陽光パネルを熱分解し、高純度のマテリアルリサイクルをCO2排出ゼロで実現する独自の装置を開発している。パネルの大量廃棄時代が目前に迫る今、この新技術に各所から期待が寄せられている。

独自の熱分解装置でリサイクル
高純度かつCO2排出ゼロが強み

新見ソーラーカンパニー(岡山県新見市)は、使い終わった太陽光パネルをリサイクルする際にCO2を排出せず、高純度のマテリアルリサイクルを実現する独自の技術を有する。マテリアルリサイクルとは、廃棄物を新しい製品の材料として再利用する方法だ。太陽光パネルはガラス、太陽電池セル、銅線などさまざまな材料で構成されているため、これまで材料別に分解することは難しく、マテリアルリサイクルにはハードルがあると考えられてきた。

しかし、同社は、独自の熱分解技術によってパネルを材料別に分解する「佐久本式ソーラーパネル熱分解装置」を開発した。佐久本秀行代表取締役社長の名前を冠したこの装置の最大の特徴は、過熱水蒸気によってパネルを熱するなどして、CO2を発生させずに各材料を高純度で分解できる点だ。パネルリサイクルにはさまざまな技術があるが、CO2排出ゼロで高純度マテリアル回収ができるのは、同社の技術だけだという。

(新見ソーラーカンパニーの佐久本社長と熱分解装置。出典:新見ソーラーカンパニー)

「佐久本式ソーラーパネル熱分解装置」は、1日あたり約10枚、年間約3,000枚(1枚18kgとして約54トン相当)のパネルを処理できるプロトタイプを開発している。現在は、24時間365日稼働でき、1日あたり約200枚、年間約5万枚(同、約900トン相当)の処理能力をもつ実用機の製造に着手している。2022年度内に実用機を完成させ、2023年6月ごろに第1号機を設置、最終テストを経て8月には稼働させる予定だ。すでに3社から先行販売の申込があったという。

オープンイノベーションでも注目
大量廃棄という課題の解決目指す

新見ソーラーカンパニーは12月2日、佐川急便の持株会社であるSGホールディングスが進めるオープンイノベーションプログラム「SG HOLDINGS HIKYAKU LABO 2022」において事業化に向けた検討を進めるパートナーに選定されたと発表した。 今後は、SGホールディングスグループのSGムービングとともにアイディアの検討を進め、実証や検証などを経て実用化を目指すという。

(11月30日に開催された、SG HOLDINGS HIKYAKU LABO 2022の共創アイデアの概要や今後の展望に関する発表会『DEMO DAY』の様子。出典:新見ソーラーカンパニー)

また、同社は地球温暖化防止全国ネットなどが共催する「脱炭素チャレンジカップ 2023」のファイナリストにも選出されている。「脱炭素チャレンジカップ(旧 低炭素杯)」は、学校や団体、企業、自治体などの脱炭素を目的とした地球温暖化防止に関する地域活動の中から優れた取り組みを表彰する全国大会で、2011年から実施されている。

「脱炭素チャレンジカップ 2023」のファイナリストは、同社を含む29団体だ。2023年2月16日にファイナリストによるプレゼンテーションが行われ、審査結果が発表される。太陽光パネルの大量廃棄という課題を解決する同社の取り組みが、各所で大きく注目されている。

DATA

株式会社新見ソーラーカンパニー
SGホールディングス株式会社 プレスリリース


取材・文:山下幸恵(office SOTO)

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