政策・マーケット

地域を潤す再エネ事業「シュタットベルケ」の神髄がここに!

自治体による地域エネルギー事業が深化する。単なる電力小売から、地域の課題解決へ──。キーワードは、「シュタットベルケ」だ。日本におけるシュタットベルケの立役者 ラウパッハ・スミヤ・ヨーク教授が語る、その神髄とは?

ドイツのシュタットベルケが
自治体新電力の理想モデルに

PVビジネスセミナーで講演するラウパッハ・スミヤ・ヨーク氏(日本シュタットベルケネットワーク代表理事/立命館大学経営学部教授)

電力小売全面自由化から2年、エネルギー事業を地域振興に結び付けようという動きが広がっている。自由化以来、電力切り替え先の上位は、ガス会社系・通信会社系・石油会社系などの大手新電力会社が占めるが、エネルギーの地産地消や地域密着型サービスを前面に打ち出す自治体出資の新電力会社(自治体新電力)の健闘も光っている。

そうした自治体新電力がいま共通して掲げるテーマこそ、電力を始めたとしたエネルギー事業によって地域再生を図ることだ。

近年、定着してきた言葉に、ドイツ語の「シュタットベルケ(STADTWERKE)」がある。「Stadt Werke」からきた名称で、英訳すれば「City Works」。具体的には、ドイツにおいて電気・ガス・水道・交通サービスなどを提供する自治体出資の地域事業者のことを指す。多くの日本の自治体新電力が手本としているものであり、これを目指して新たな事業を計画する市町村も少なくない。

2017年9月には「(一社)日本シュタットベルケネットワーク」が設立され、立命館大学経営学部教授のラウパッハ・スミヤ・ヨーク氏が代表理事に就任した。ラウパッハ氏は、母国ドイツのシュタットベルケに精通し、その事業モデルを日本に浸透させた立役者。

ソーラージャーナルでは、先ごろ開催したPVビジネスセミナーに同氏を招聘し、シュタットベルケの意義と日本での可能性について語ってもらった。以下、講演の内容を抄録する。

売上15兆円、電力シェア60%
公共インフラ・公益サービス

ドイツのシュタットベルケは、いわば都市公社であり、その事業内容は多岐にわたります。電力・ガス・熱供給はもちろん、水道・下水処理・ごみ収集なども行っています。バスなどの地域交通を担っているところも多く、最近では通信事業を手掛けるケースも増えてきました。水泳プール、図書館、福祉施設などを運営しているところも珍しくありません。

シュタットベルケのタイプは様々で、100%自治体所有のところもあれば、民間資本の多いところもありますが、ほんどは過半数の株を自治体が持っています。シュタットベルは、公共インフラ・公益サービスを総合提供する公営企業なのです。

現在、ドイツには約1000社のシュタットベルケがあり、合計従業員数は26万人を超えています。年間売上高は合計約1151億ユーロ(約15兆円)で、設備投資額も年間約109億ユーロ(約1.4兆円)に及びます。売上構成をみると、ほぼ半分が電力。それにガスと熱を加えたエネルギー事業で75%を占めています。

小売市場におけるシュタットベルケのシェアは、電力において60%、ガスにおいては65%、熱では約70%に達します。ヨーロッパのエネルギー市場は20年ほど前から自由化されていますから、このシェアは民間企業との自由競争の中で得た数字なのです。

ドイツのシュタットベルケが、いかに市民から支持されているかが分るでしょう。また、こうした数字は、経営が健全で安定している証だともいえるのです。

全面自由化後、さらに躍進
各事業の相乗効果で経営安定

シュタットベルケの歴史は長く、はじめてのシュタットベルケは19世紀中頃に発足しました。しかし、誕生以来ずっとエネルギー事業の主役であり続けたわけではありません。電力に関してみると、1998年に全面自由化が実施された段階では、E.ON、RWE、EnBW、Vattenfallの4大電力会社が大きなシェアを占めていました。

しかし、その後、大手電力会社が減って、シュタットベルケのマーケットシェアが増えました。今日のシュタットベルケの隆盛は、自由化後の努力によって勝ち取ったものともいえるのです。

シュタットベルケの最大の特徴は、はじめに申し上げたように、多様な公共インフラ・公益サービスを総合提供しているところにあります。そして、総合提供による相乗効果が、これを地域に根付かせ、経営を安定化させているのです。例えば、お客さんにとっては、多様なサービスの窓口が1つに集約され、請求書も1通で済むなどのメリットがあります。

経営面では、インフラ管理やファイナンス上の相乗効果、さらには税制上のメリットなどが挙げられます。また、交通部門や文化施設などなかなか利益を取りづらい赤字部門のマイナスを、電力など他の高収益事業で補填することも可能です。ですから、幅広い公益サービスの内容はそのままに、経営安定化を図ることができるのです。

シュタットベルケは公営企業ですが、民間なみに独立法人化されており、会社法の適用対象になっています。管理者は行政から派遣されるのではなく、プロフェッショナルな経営者です。給料も非常に良いし、社会的な地位も高いので、優秀な人材が集まります。このことも、経営を安定化させ、大手民間企業との競争を生き抜くことができた要因の1つです。

123

関連記事

アクセスランキング

  1. 日本企業が「RE100」に続々と加盟、各社のエネルギー計画は?
  2. 地域を潤す再エネ事業「シュタットベルケ」の神髄がここに!
  3. JPEA、破損した太陽光パネルを適正処分できる企業一覧を公表
  4. 風車の種類は大きく2種類!? 風力発電入門講座
  5. 2019年春スタートの「森林経営管理制度」バイオマスへの影響は?
  6. 今さら聞けない! 仮想発電所(VPP)とは?
  7. 太陽光発電は全量買取から”余剰買取”へ! 工場はさらにメリット大
  8. 2030年度には電力小売事業の「PPA」が市場規模400倍に
  9. 養殖マグロで発電!? 小学生のエネルギー戦略が凄い!
  10. 太陽光の「シェアリングエコノミー」がバングラディシュで普及中!
 

フリーマガジン

「SOLAR JOURNAL」

vol.29 / ¥0
2019年4月26日発行

お詫びと訂正

ソーラー電話帳 SOLAR JOURNAL メディアパートナーズ 太陽光業界最新ニュース