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「エネルギー地政学」の大転換時代が到来!? 世界的な再エネ移行の動き

近年、企業ベースでは「RE100」が利益に直結するなど、もはや政策論だけではエネルギーを語れない。そんな中、長年にわたり石油資源国が独占してきたエネルギー体制の地政学が、2019年に大きな転換点を迎えようとしている。

中央集権から地域分散へ
再エネで台頭する中国

再生可能エネルギーのエネルギー転換により、中東諸国やロシアなどの化石燃料輸出国よりも、再エネ技術に投資してきた中国が台頭する。世界の地政学に重要な影響をもたらすだろう――。

今年1月、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は「新しい世界│エネルギー転換の地政学」という報告書で、こんな見解を明らかにした。現在、欧州は化石燃料輸入の多くをロシアに依存している。また、日本も中東諸国への依存度が高い。再エネの導入を進めていけば、化石燃料の輸入依存度を下げられるため「ドイツや日本などはエネルギー転換の勝者になる」と報告書では位置付けられている。



これを踏まえれば2019年は、エネルギー戦略を軸に国家関係が再構築され、むしろ国家体制そのものが大きく変貌していく起点になるといっても過言ではない。中国が台頭するという根拠の1つが、下の図にあるように、再エネに関する技術の特許出願数で他国を圧倒していることだ。

●国別・再エネ関連技術特許出願数


出所:国際再生可能エネルギー機関

これは太陽光発電や風力、バイオマスなど全て含んだデータで、日本が2016年時点で約8万件なのに対し、中国は約16万件と2倍の差を付けている。再エネ先進国といわれているドイツでも約3万件、世界一の経済大国のアメリカですら約10万件だから、いかに中国が総力を挙げて再エネ分野に力を入れているのかがうかがえる。

太陽光発電について見てみると、一部の専門家の間では、2018年の世界導入量が、太陽光パネルの出力換算で105GWとされている。2019年はすでに110GWを超えるという予測すら出ており、「世界的に太陽光発電は順調です」と、環境エネルギー政策研究所(ISEP)の飯田哲也所長は話す。

エネルギーの歴史から見る
日本と世界

エネルギーの歴史を振り返ると、18世紀半ばから19世紀にかけてイギリスで起こった一連の産業革命が、現代のエネルギー地政学の方向性を決める決定打だった。石炭、石油などの化石燃料を持つ資源国が、エネルギー分野で覇権を握り、国営資本、大規模資本によるエネルギー独占に移行。他立、収奪型かつ大規模集中型の体制が形成された。日本でも、大手電力会社による火力や原子力といった中央集権型の電力体制となり、その周辺に利権が渦巻くなど現代まで脈々と続いてきた。

大きく変わる「エネルギーの地政学」

18世紀後半の産業革命
国営資本、大規模資本のエネルギー独占に移行。石炭・石油などの化石燃料を中心に他立・収奪型かつ大規模集
中型の体制が形成されてきた。

2015年のパリ協定
再生可能エネルギーが世界的に広がり、ドイツやデンマークなど欧米でも巨大資本を必要としない自立型、地域分散型に移行。

2019年の報告書
化石燃料輸出国の中東諸国、ロシアなどは、再エネへの転換により難しい局面を迎える。一方で、再エネと非内燃機関輸送技術に大きな投資をしてきた中国が欧米に打ち勝つと予測。


ところが最近では、地球温暖化などをきっかけに、二酸化炭素排出量ゼロという観点から再エネが徐々に注目され始めた。例えばドイツでは、再エネ比率が35%を超え、中でも太陽光・風力の伸び率が最も大きい。デンマークも風力だけで40%を超え、30年までに再エネ比率を50%以上にするという国家目標を達成できる見込みだという。

そして2015年には、第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)がフランス・パリで開催され、気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定(パリ協定)が採択された。これを境に、欧米のみならず、世界的に自立型、地域分散型のエネルギー体制への転換が加速化している。

中でも太陽光発電のコストがどんどん下がり、世界的に普及する中で、中国の存在感が際立ってきた。2017年には、中国のパネルメーカーが、ジンコソーラーを筆頭にモジュール出荷量で上位10社中9社を占めるようになった。まさに世界市場を牽引しているのだ。

そんな中で、日本はどうか。現状、石油の輸入などエネルギー資源における対外依存度が高く、その経済的損失が最も大きい。裏を返せば、再エネにシフトすることで、最も恩恵を受ける国でもあるはずだ。すでにその技術力もある。

だが当然、政策が再エネに対してポジティブでなければ、そのメリットを生かせるはずもない。すでに経済的には再エネに劣っていることが明白な原発の、再稼働や輸出を進めようとしている現政権下では、「それを期待するのは難しいかもしれません」(飯田氏)。

では、2019年の日本の再エネ市場はどうなっていくのか。


取材・文/大根田康介

SOLAR JOURNAL vol.28(2019年冬号)より転載



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