【FIT抜本見直し概要】競争電源に関する制度の在り方はどうなるのか。
2020/02/17
FIT抜本見直しの中身について、先ごろ公表された経済産業省の委員会案をひも解いて解説する。FIP制度に移行する、競争電源に関する制度はどうなるのだろうか。
>>前記事はこちら(FIT抜本見直し概要~再エネ電源の区分で違う支援制度の内容~)
競争電源に係る
制度のあり方
技術革新等を通じて発電コストが着実に低減している電源、または発電コストが低廉な電源として活用し得る電源については、電源ごとの案件の形成状況を見ながら、電力市場への統合を図っていくべきである。現行FIT制度における市場取引の免除については見直しが必要である。
電力市場への統合を図る新制度の在り方として、欧州等で導入が進んでいるFIP(Feed in Premium)制度を念頭に検討していくことが適当であり、その詳細設計については、以下のような方向性とすべきである。
FIP制度における
プレミアム付与の在り方
FIP制度は、発電した電気を卸電力取引市場や相対取引で自由に売電させ、そこで得られる市場売電収入に、「あらかじめ定める売電収入の基準となる価格(FIP価格)と市場価格に基づく価格(参照価格)の差額(=プレミアム)× 売電量」を上乗せして交付することで、発電事業者が市場での売電収入に加えてプレミアムによる収入を得ることにより投資インセンティブを確保する仕組みである。
FIP価格の決定について
FIP価格は、現行FIT制度における調達価格と同様に、調達価格等算定委員会の意見を尊重して、電源区分・規模等(以下「区分等」という)ごとのFIP価格を決定するか、入札制を活用してFIP価格を決定するかのいずれかの方法によって定めることが、適当である。
特に入札制については積極的に活用してコスト低減を促すべきであり、現行FIT制度における入札制を参考に、価格の決定方式、上限価格、募集容量、入札回数等について定めていく必要がある。
参照価格の決定について
参照価格の期間や算定方法の決定に当たっては、長期的な変動リスクを最小化する必要があり、電源ごとの発電特性が異なる点にも留意しつつ、日中・季節変動の中で価格に応じた発電・売電行動(価格が安い季節に定期メンテナンスをする、蓄電池を活用する等)に誘導できるような設定を行う必要がある。
その際、仮に、参照する市場価格の期間を長くして、かつ、プレミアムを長期的に固定した場合、直前の参照期間の平均市場価格を参照すると、当該期間の平均市場価格が大きく増加(または減少)した場合に市場価格がもともと高い期間に高いプレミアムを付与すること(またはその逆)になる。また、当該期間の平均市場価格を参照することとすると、プレミアムの額の決定が事後的になる。こうした点も考慮しながら、参照する市場価格の時期を決定する必要がある。
なお、FIP制度は再エネ導入支援のための価格支援制度であることを踏まえれば、FIP価格が参照価格を下回る場合であっても、再エネ発電事業者にネガティブ・プレミアムの支払いを求めないことを基本とすることが、合理的と考えられる。
対象となる電源区分
競争電源に係るFIP制度の対象となる区分等については、市場への統合による効果が期待できるものを念頭に置きつつ、各電源の案件の形成状況や市場環境等を踏まえ、調達価格等算定委員会の意見を尊重して決定することが適切である。
再エネ発電事業者による
市場取引の在り方
再エネの市場統合に向けては、FIT制度における市場取引を免除された特例的な仕組みを見直し、他の電源と同様に市場取引を行う仕組みへと改めるべきである。また、インバランス負担についても一定程度負うこととし、環境価値の帰属の在り方についても整理することが必要である。具体的には、次のような方向性とすべきである。
kWh価値について
再エネの市場統合を進めていくためには、再エネ発電事業者が自らkWh価値の市場取引を行うべきである。その場合、想定されるkWh価値の主な取引方法としては、自ら卸電力取引市場における取引を行う方法、小売電気事業者との相対取引を行う方法、アグリゲーターを介して卸電力取引市場における取引を行う方法が想定され、こうした取引を通じて再エネ発電ビジネスの高度化や電力市場の活性化が期待される。
小規模の再エネ発電事業者については、日本卸電力取引所における卸電力取引市場の最小取引単位を満たすことが厳しいことも考慮し、卸電力取引市場の最小取引単位の水準や、アグリゲーション・ビジネス等の活性化の状況等を見極めながら、FIP制度の対象とする電源種・規模等を決定する。
インバランスについて
電力システム全体の調整コスト削減効果を最大限引き出すため、FIT制度で設けられてきたインバランス特例を改め、再エネ発電事業者もインバランスの発生を抑制するインセンティブを持たせるべきである。
現行FIT制度では買取義務者にインバランスリスク料が交付されていることも参考に、再エネ発電事業者のインバランス負担軽減のための経過措置等も検討すべきである。ただし、軽減の程度を徐々に減らすなど、インバランス抑制のインセンティブとも両立させる工夫が必要である。
環境価値について
小売電気事業者にとって、kWh価値と環境価値を一緒に取引できれば、FIP電気を相対取引する大きなインセンティブになると考えられる。FIP制度においては、再エネ発電事業者が自ら環境価値を相対取引またはオークションによって販売していく仕組みとすべきである。
日本版FIP制度のイメージ
<FIPの考え方>
基準価格(FIP価格):予め決定した売電収入の基準となる価格(固定)
参照価格:プレミアムを算定するために指標とする価格。一定期間の平均市場価格(一定期間内は固定。長期的には変動)
プレミアム:FIP制度において発電事業者が受領するプレミアム収入(基準価格と参照価格の差。一定期間内は固定。長期的には変動)
出典:資源エネルギー庁
●FIPとは、市場連動型の補助制度。
●市場取引を前提に、プレミアムという補助金が交付される。
●市場価格とプレミアムの合計額が収入となる。
●プレミアムの金額は、一定期間ごとに見直される(期間は未定)。
取材・文/廣町公則
SOLAR JOURNAL vol.32(2020年冬号)より転載