容量市場、ほぼ上限価格の高額約定! 「逆数入札」とコスト算出に原因か
2020/11/27
容量市場の初の落札結果は、ほぼ上限価格の1万4,137円/kW。監視等委員会では「売り惜しみ」「価格のつり上げ」といった問題行為はなかったと報告された。しかし、破格の落札結果によって、小売電気事業者は莫大な容量拠出金を背負うことになる。
2週間の延期後の発表
上限価格より1円安い約定に
9月14日、電力広域的運営推進機関(OCCTO)は容量市場メインオークションの落札結果を発表した。2024年度を実需給年度とする初めてのオークションだ。もともとは8月末に発表される予定だったが、「入札内容の分析・評価を継続して行う必要がある」として延期されていた。
発表された約定価格は、上限価格より1円安い1kWあたり1万4,137円。約定総容量は全国で1億6,769万kWとなり、目標調達量の1億7,746万kWのうち94%が集まった。これによって、小売電気事業者が負担する容量拠出金は、全国で1兆4,650億円を超える見通しだ。応札価格の78.5%がゼロ円での入札だったにも関わらず、なぜこのような結果になったのか。
(出典:電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会)
「逆数入札」のトリックが
実コストより高額の札入れを誘発
その理由を考えるには「経過措置」と「逆数入札」を理解しなければならない。「経過措置」とは、容量拠出金を支払う小売電気事業者の負担を軽減するために設けられた激変緩和措置だ。発電所の維持や新設の費用を確保するという容量市場の目的から、2020年度末までにできた発電所は、2030年まで契約額の42%が減額される。
しかし、減額対象の発電所でも維持のためのコストを確保するため「逆数入札」が認められた。「逆数入札」とは、割引分の逆数、つまり1から0.42を引いた0.58を乗じて入札することを指す。逆数入札が可能となったことで、割引されることを前提に実コストよりも高い額の応札が集まった。
電力・ガス取引監視等委員会によると「約定価格近傍の入札電源の多くが、経過措置対象かつその割引分を逆数入札したもの」だったという。その結果「約定点は、その電源を維持するために必要な金額を大きく上回る価格」になったと分析している。
(出典:電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会)
コスト算出方法に定義なく
ガイドラインの見直し必至
約定価格が高い理由は、発電所を維持するコストの算出方法のあいまいさにもある。算出の合理性に疑義が残る点として、監視等委員会は「複数年度分の費用計上」「事業報酬の計上」「事業税の算定方法」「事業税・資本割の計上」「法人税の計上」の5つを指摘した。
そもそも、今回のメインオークションは2024年度という単年度を対象としたものだ。本来であれば、2024年度のみの維持・新設コストを算出し入札額を決めなければならない。しかし、蓋を開けてみると2024年度より前の定期検査コストが計上されるなど、制度の趣旨にそぐわない事例もみられた。
維持コストの算出方法は「容量市場における入札ガイドライン」ではっきりとした定義がない。監視等委員会は、来年度に向けて計算方法を整理しガイドラインで示すべきとしている。
DATA
文:山下幸恵(office SOTO)