総務省、美作市の「太陽光パネル税」で再協議を要請。“話し合いが不足”と指摘
2022/07/26
岡山県美作市が条例の改正を目指す「事業用太陽光パネル税」だが、総務省が特定納税義務者との間で、再度、十分な協議を行うよう差し戻しした。同市内に大規模な発電所を有する高額の納税者との協議が不足しているとの指摘だ。
総務省が条例案に“待った”
特定納税義務者との協議を要請
岡山県美作市が導入を計画する法定外目的税「事業用太陽光パネル税」について、総務省は6月7日、同市と「特定納税義務者」との間で、さらに協議を尽くすよう要請する考えを示した。
法定外目的税における特定納税義務者とは、全体の納税額の1割を占める高額の納税者などを指す。2004年の税制改正で、特定の納税者に対する税収割合が高い場合には、条例を制定する前に、その納税者の意見を聴取しなければならないとされた。
今回の美作市の場合、特定納税義務者に該当するのは、約257.7MWの太陽光発電所を持つパシフィコ・エナジー作東合同会社や、約42MWの発電所を有するパシフィコ・エナジー美作武蔵合同会社らと考えられる。
総務省の地方財政審議会では「両者の主張に開きがあり、話し合いが不足しているのではないかと考えられる。一方で、両者ともに、できる限り調整したいとの意向をもっていることが確認できた」としており、同市と特定納税義務者に対し、再度、協議を深めるよう求める意向を明らかにした。
噛み合わぬ両者の主張
数多い争点に折り合いはつくのか
美作市の事業用太陽光パネル税に関する条例案は、同市内の事業用太陽光発電所に対し、パネル面積1平方メートルあたり50円を課税するという内容だ。2年以上にわたり審議が続けられ、昨年12月、同市議会において賛成多数で可決した。総務大臣の許可を得れば施行されるという段階だったが、今回、事実上の差し戻しとなった。(参考:美作市「太陽光パネル税」が市議会で可決。総務大臣の同意を得れば施行に|SOLAR JOURNAL)
同条例案については今後、特定納税義務者との間で協議が重ねられると予想される。同市は、太陽光発電所の開発による農業や住環境への影響、自然災害への対策、事業終了後の土地の荒廃をいかに防ぐかという点を危惧している。
その一方で、特定納税義務者は、固定資産税や法人税などと事実上の二重課税になっている点や、国が推進する2050年カーボンニュートラルに向けた施策と反する可能性などを指摘する。また、発電事業の実施にあたっては国や県などの審査を経ており、ほかの事業と比べて太陽光発電事業のリスクだけが突出して高いわけではないと主張している。
DATA
文:山下幸恵(office SOTO)