バイオマス

最も雇用が生まれる再エネは? バイオマスの可能性

再エネの中で雇用が一番生まれるビジネス、バイオマス事業。大手の企業でなければ、利益が生まれにくい現状が改正FIT法により、変わりつつある。懸念されていた事業リスクが低減でき、大手ではない事業者も新規参入して利益を出せる可能性が出てきた。

インセンティブが少ない
木質ペレットの活用

実は、日本とEU諸国のバイオマス政策には大きな違いがあります。日本の場合、林業が盛んな地域において間伐材を再利用した木質ペレットなどを使った火力発電(バイオマス発電)が地元経済に貢献する「地方創生」のもとで進められています。一方、EU諸国は、加盟国に対して発電だけでなく熱利用をするようにトップダウンで指令を出しているのです。日本にはこうした義務付けはありません。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの発表によれば、木質ペレット利用量は2014年に国内産と海外産がそれぞれ約10万トン、2015年には輸入が約15万トンに急増していますが、1000万トン単位のEUに比べて数十分の一というのが現状のようです。また、日本では間伐材の輸送コストや加工する人件費が海外に比べて割高ですので輸入材が多い状況です。

さらに、現在は原油価格が以前に比べて大きく下がっています。バイオマスは化石資源の価格が高い水準にある時に競争力がありますが、今は厳しい状況とも言えます。

こうしたこともあり、日本では木質ペレット利用に関してインセンティブが働きにくい状況にあります。バイオマスは火力発電事業や廃熱利用、地域熱供給などで再生可能エネルギーの利用拡大に一役買ってはいますが、日本の政策は基本的に各自治体に補助金を配分して各地域での取り組みを促進していく流れです。

たとえば、成功事例としては国内最大級となる出力1万kWの木質バイオマス発電所を正式稼働させた岡山県真庭市の例があります。ここでは銘建工業という集成材最大手メーカーが中心的役割を果たしています。自治体は官民連携のコーディネーターとしてうまく機能しています。真庭市でのバイオマス利活用は長年の取り組みの成果ではありますが、バイオマス事業に関心のある自治体は見学されると、事業のヒントが得られると思います。

しかし、ボイラー管理士などの専門職を雇う費用や資材運搬の人件費、資材置き場も必要ということなどを考えると、補助金だけではとても足りないという課題があります。ある程度の規模がなければ事業として利益が生まれにくいため大手の企業などによる参入が多い現状です。

家庭でも事業でも
導入促進の後押しが必要

家庭でのバイオマス利用は、ユーザーをどう確保できるかが課題です。たとえば木質ペレットを燃焼させて使うストーブを導入すると考えましょう。都市部での利用となれば、住宅の密集地などで使うのは難しいでしょう。また、灯油や都市ガスの方が燃料費として安く、灯油ストーブやガスストーブならすでに皆さん持っていると思いますので、わざわざ買い替える動機は薄いと思います。そのため、家庭で木質ペレットストーブを使う人は住宅の敷地が比較的広く環境意識が高い人たちになるかと思います。

現在日本で木質ペレットストーブを使っているのは図書館や公民館などの公共施設、温室栽培している農家や民間企業などが中心となっています。ただ、全国で家庭への木質ペレットストーブの導入促進を図っている自治体もありますので、こうした動きがもっと広がればバイオマスの活用も進んでいくと思います。

また、改正FIT法では、バイオマスのようにリードタイムが長い電源は数年先の認定案件の買取価格を予め決定することになりました(下図)。これにより、設備投資などの事業リスクが低減でき、事業者が利益を出せる見通しを以前より立てやすくなりました。そうなると、新規参入者にもメリットが出てきます。

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<数年先の認定案件の買取価格を予め決定できることで、環境アセスメントや地元調整等で時間がかかる際も事業化決定後の買取価格下落のリスクが軽減される。複数年の価格設定では、事業化決定からFIT認定までの期間を勘案した期間設定を行う。>

バイオマス事業は再エネの中で最も手がかかりますが、雇用が一番生まれるビジネスでもあります。地方創生の中で、国には自治体の取り組みを支援し促進を図ってほしいと思います。


東京大学 教養学部 客員准教授
松本 真由美氏

報道番組の取材活動やニュースキャスターを経て、現在は東京大学教養学部での教育活動を行う一方、講演や執筆など幅広く活動中。NPO法人・国際環境経済研究所(IEEI)理事。


取材・文/大根田康介

※「SOLAR JOURNAL vol.19」より転載

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