小水力発電は地域と共に 新規参入のポイントと課題
2017/08/21
ムダに捨てられているエネルギーを有効利用できる環境配慮型システムである小水力発電。設備利用率が高く、出力変動の少ない安定した発電が可能だ。近年、急成長しつつある小水力発電だが、その新規参入には地域とのつながりが欠かせないという。全国小水力利用推進協議会事務局長の中島さんに話を聞いた。
全国小水力利用推進協議会
地域が潤う小水力を目指して
全国小水力利用推進協議会は、地域主導型の小水力発電の普及と地域振興を目的に、2005年に設立されました。もともとはボランティアの市民団体であり、発足当初は個人会員が中心だったのですが、いまではメーカー・コンサル・発電事業者など企業会員が増え、日本を代表する小水力業界団体とみなされるようになりました。ここ10年で、小水力を取り巻く環境は大きく変わったといえるでしょう。
2012年以降、FITによって小水力も急成長しましたが、近年は系統接続問題に見舞われ、少し足踏みをしている状況です。系統接続は、再生可能エネルギー全般、地域の振興そのものにも関わる問題ですから、一刻も早く解決してほしいものです。
ポイントは事業主体形成
新規参入には地元合意を
小水力は昔から日本各地で使われてきたエネルギーであり、生活に密着し、常に地域社会とともにあるものでした。地域社会としっかりとコミュニケーションをとらないと小水力発電を導入することはできません。それだけに上手に活かせば、地域の振興にも直結します。
新規参入を図る事業者さんにも、ぜひともそのことを重視していただき、地域との調和を第一に考えた計画にしてほしいと願っています。時間の捉え方にしても、小水力は50〜100年という長いスパンで考えていかなければなりません。自分が死んだ後も動く発電所を作るという意識が必要だし、地域とともに、じっくりと取り組んでいくべきビジネスなのです。短期収益性や資本効率ということだけでは測れないところに、小水力発電事業の難しさと面白さがあるといえるかもしれません。
小水力発電事業を行うにあたって、最も大切なテーマは、事業主体形成というところにあります。水は住民の暮らしに直接関わる地域資源ですから、どのような団体・人が、その事業の主体になるかということは極めて重要です。
例えば、東京の会社がいきなりやってきて建設するというスタイルは馴染みません。まずは、地域の人々と話し合うための舞台をつくることから始めなければならないでしょう。
資金はどうするか、建設は、運営は……どういうところに、どんなプレイヤーに入ってもらうか、主導権はどこが持つか、役割分担はどうするか等々、検討すべきことは多岐にわたります。結果として、小水力の事業主体には、民間企業、地方自治体、土地改良区、組合組織など様々なかたちがあるわけです。
小水力発電の長所を活かし
地域から社会を変える
小水力発電は、これからの市場です。今後いっそう大きな伸びが期待できます。小水力は、設備利用率が50〜90%と高く、出力変動の少ない安定した発電が可能です。未開発の小水力発電適地も、まだまだ全国にたくさんあります。
水力といっても貯水ダムで河川環境・社会環境を大きく変えることはせず、川の流れをそのまま利用する発電方式です。一般河川・農業用水・上下水道など、現在ムダに捨てられているエネルギーを有効利用できる環境配慮型システムでもあります。そこには大いなる可能性が満ちています。
小水力利用を通じて多くの方々が社会のあり方を考え、地域から社会を変えていくことを願って、私たち全国小水力利用推進協議会は、これからも尽力してまいります。
プロフィール
全国小水力利用推進協議会 事務局長
中島 大氏
1982年より水車むら会議の活動に参加。1985年東京大学理学部卒業後、ふるさと情報センター就職。分散型エネルギー研究会事務局長等を経て、2005年全国小水力利用推進協議会設立に参加、事務局長就任。
取材・文/廣町公則
SOLAR JOURNAL vol.22(2017年夏号)より転載