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洋上風力発電の普及に期待「海洋再エネ」法律案のポイント 

今年3月に、洋上風力発電事業業などを実施する際の一般海域の占用ルールを定める「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律案」が閣議決定。国際環境経済研究所(IEEI)理事の松本氏にポイントを聞いた。

系統制約を克服するための
議論から見えてくる課題

「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律案」が閣議決定されました。

この決定は、嬉しい驚きでした。一般海域の占用ルールに関しては、「再生可能エネルギー大量導入・次世代ネットワーク小委員会」で議論されてきましたが、第2回までは前向きに検討するというレベルでした。それが、3月の第3回で法案提出が報告され、第4回を目前に急速に話が進んだのです。法案が成立すれば、洋上風力発電の普及が期待されます。

この小委員会では、他にも系統制約の克服に向けた具体策、調整力の確保、入札の活用などによる価格低減と再エネ自立化、2030年以降の次世代電力ネットワークの構築などが議論されています。中身は電力会社や発電事業者の事務的な話も多く、一般の方には馴染みが薄いかもしれませんが、いくつか重要なポイントをお話したいと思います。

まず系統制約については、系統につなげない、接続コストが高い、接続までの時間が遅いという3つの問題点があります。送配電事業で気になるのは既存の電力ネットワークを最大限活用できるかどうかでしょう。それには想定潮流の合理化、日本版コネクト&マネージによる空き容量ゼロ問題の解消が必要です。

一方で、新たな電力ネットワークを作るための追加コスト負担をどうするのかという課題があります。確実に投資回収ができなければ、次の投資ができないからです。

また、電源情報の公開という課題もあります。欧米では、30分〜1時間単位で電源の出力実績が公開されていますが、日本では公開されていません。なぜなら、各発電会社の個別電源の発電出力実績を公開・開示することで、限界費用など入札での戦略が分かって競争力の低下を招く懸念があるからです。市場監視的な意味合いが強い欧州の電源情報の公開とは異なり、日本では系統シミュレーションの精度向上が目的のため、利用者・利用目的を限定とした開示とし、送配電に関する潮流実績などは公開される見通しです。

需給調整市場も重要です。変動電源である再エネは、周波数制御や需給調整といったアンシラリーサービスが必要です。欧米では、これが系統事業に提供され、電力需給の安定化に貢献しています。電力需給に応じて需要家側の電力使用を抑制したりして需給を安定化させるデマンドレスポンスも期待されています。

今年1月下旬から2月に、東京電力管内で需給逼迫が起きた際に、同社と提携している仏エナジープール社がデマンドレスポンスを連続発動して乗り切った事例があります。日本では、工場と需給調整契約を結び、需給が逼迫したら電話をして機械の稼働時間をずらすなど、アナログな方法で需給調整をしていました。エナジープール社はIoTを活用し、少数のエンジニアがパソコン上で作業します。私も現場を見ましたが、本当にシンプルなオペレーションセンターでした。この辺りは欧米に知見があるため、日本は外資系企業から学ぶことが多いでしょう。

プロフィール

東京大学 教養学部 客員准教授

松本 真由美氏

報道番組の取材活動やニュースキャスターを経て、現在は東京大学教養学部での教育活動を行う一方、講演や執筆など幅広く活動中。NPO法人・国際環境経済研究所(IEEI)理事。


取材・文/大根田康介

SOLAR JOURNAL vol.25(2018年春号)より転載

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