日本が見習うべき米国電力市場の革新的な変化とは?
2018/07/10
公益財団法人自然エネルギー財団は、2018年7月4日、報告書「自然エネルギー最前線 in U.S. -米国の電力市場に革新的な変化-」を公表。米国はこの7年間で、CO2排出量を20%以上削減したという。日本がおおいに見習うべき、その具体的な内容とは。
風力と太陽光の発電量が急拡大
CO2排出量を7年間で2割超も削減
公益財団法人自然エネルギー財団は、2018年7月4日、報告書「自然エネルギー最前線 in U.S. -米国の電力市場に革新的な変化-」を公表した。
この報告書によると、米国では、風力と太陽光を中心として自然エネルギーの発電量が急拡大している。自然エネルギーの電力が2010年から2017年の7年間で1.7倍に増加し、石炭火力による発電量は3分の2の規模にまで減少。風力と太陽光は発電量が拡大することでコスト競争力が高まり、逆に石炭火力はコスト競争力を失いつつある。その結果、発電に伴うCO2排出量は、この7年間で米国全体で20%以上も少なくなっているという。自然エネルギーが火力発電を代替することによるCO2削減効果が、明確に表れているのだ。
風力と太陽光は天候などの自然環境によって出力が変動するため、送電網への取り込みが課題とされてきた。しかし米国では、風力と太陽光の電力が増大しても出力抑制の比率は低く、平均1~2%程度。主な対策として、州を越えた電力取引や、ガス火力と水力発電を活用した供給力の調整、送電網の拡充、蓄電池の活用など、さまざまな方法で電力需給のバランスを調整しているという。
アップルやグーグル、マイクロソフトは
自然エネルギー利用率100%を達成
さらに報告書では、自然エネルギー拡大の背景として「電力を生み出す側」の発電会社の取り組みだけでなく、「利用する側」である企業からの強い働きかけもあると指摘している。
アップル、グーグル、マイクロソフト、スターバックス、ウェルズ ファーゴといった先進的な企業は、自然エネルギーの利用率100%を達成。こうした大手企業が2013年以降に契約した自然エネルギーの電力の規模は、合計で1.1万kWを超えた。
地域レベルでの活動も進んでいる。州や市が意欲的な目標を設定し、具体的な政策に落とし込んでいるのだ。ハワイは、2045年までに州全体で自然エネルギー100%を目標に設定。カリフォルニアとニューヨークは2030年までに50%を目標に掲げた。ほかにも、主要な都市ではミネアポリスやピッツバーグ、サンフランシスコ、 ソルトレイクシティ、シアトルが自然エネルギー100%を目指す。
各家庭に設置する太陽光発電の規模も、全米各地で拡大中だ。2017年の発電量は、合計で140億kWh に達した。これは、わずか2年前と比べて倍増の勢いだ。風力と太陽光による新たなエネルギー革命は、企業や自治体、家庭にも浸透してきた。
このように米国では、まさに国を挙げて、自然エネルギーの普及拡大に取り組み、革新的な変化を遂げつつある。われらが日本も、おおいに見習う必要があるだろう。