地域を潤す再エネ事業「シュタットベルケ」の神髄がここに!
2018/08/29
疲弊する日本の地域社会
課題解決の糸口はどこに?
いま私は滋賀に住んでいますが、日本の田舎には色々な問題があると実感しています。小さな集落に限らず、人口20万・30万の地方都市でも、社会インフラの老朽化や、空き家の問題、学校の閉鎖、シャッター通り、買い物難民、独居高齢者……等々、課題を挙げればキリがありません。
そもそもの問題は、急激に進んだ少子高齢化にあります。このままいけば、2050年には日本人の60%以上が60歳以上になるという、世界中どの国も経験したことのない社会に突入します。地方はこれを先取りし、悪循環に陥っているといえるでしょう。
人口が減って、需要が減って、生産が減って、収益が減って、所得が減って、雇用が減って、地域経済が停滞・縮小する。それによって、さらに人は流出し、お金も都市へと流れてしまう。そうして自治体の収益・税収は、ひたすらに減り続ける……。
同時に、こういう状況にあるからこそ、地方自治体に対する要求は増えています。環境整備、福祉関係、医療関係、生活保護…、すべてはお金のかかる話です。しかし、財政は既に逼迫していて、そのお金を絞り出すのは困難と言わざるを得ません。結果として、公共事業の民営化、事業を民間に渡してしまうことが、一般的な流れになろうとしています。
それで良いのでしょうか? こういった問題は、すべて公共インフラ・公益サービスに関わるものであり、住民生活の基盤になっているものです。民間経営で解決できるかのような論調もありますが、簡単に民間に委ねて良いものではないでしょう。
民間企業は経営効率を重視し、収益の最大化を図らなければなりません。その収益を投資家に還元することが民間企業の使命です。そして、この民間企業が地域外の資本であった場合、その事業から生まれる収益は、大半が地域に還元されることなく、地域から出ていってしまいます。
一時的に効率は上がるかもしれませんが、地域の持続可能な発展には、なかなか結びつきません。公共性・公益性・公平性が求められるサービスには、やはり自治体が主体的に関わっていくべきなのです。
しかし、自治体だけでは課題解決が困難なのも事実。そこで出てくるのが、民間なみの経営センスと自治体の公共性が融合したビジネスモデル=シュタットベルケというわけです。
日本版シュタットベルケが
地域再生の切り札になる!
日本版シュタットベルケはまだ産声を上げたばかりですが、そこには大いなる可能性があります。太陽光や風力など再生可能エネルギーのメリットを、地元で最大限に享受することができます。電力消費モニタリングによる高齢者支援・見守りサービスは、既に各地で始まっています。
電力を中心とした地域エネルギー事業を柱にしつつ、水道・下水処理・ごみ処理など他の部門と連携することで(セクターカップリング)で、日本ならではの相乗効果を発揮させることもできるでしょう。老朽化した公営住宅や工業施設など、これまで負の財産と思われていたものが、セクターカップリングによって新たな価値を生み出すかもしれません。
目覚ましい発展を遂げている環境技術やデジタル技術を駆使すれば、これまでにないサービスを低コストで提供することも可能になるでしょう。
シュタットベルケは、個別的・部分的な最適化ではなく、地域の全体最適を図ることのできるネットワーク型のプラットフォームです。地域外に流出していたお金を地域内に留め、地域内で循環させ、持続可能な地域づくりを推進することのできる仕組みなのです。
日本シュタットベルケネットワークは、来る9月11日(火)、設立1周年記念「日独シンポジウム」を開催します。お蔭様で、既に定員いっぱいとなりましたが、シンポジウムの内容は後日ホームページに公開いたします。引き続き、ご関心をお寄せいただければ幸いです。地域を元気にする取り組みを、共に盛り上げてまいりましょう。
DATA
取材・文/廣町公則