住宅用太陽光の火災事故の原因は? 消費者庁が13件の調査結果を公表!
2019/01/29
消費者庁の消費者安全調査委員会が、住宅用太陽光発電の火災事故の調査結果を公表。屋根に延焼して重大な事故につながる危険性がある案件が10万件以上あることを指摘し、適切なO&M(保守点検)を実施するよう呼びかけている。
野地板に延焼すると
大きな被害の可能性も
消費者庁の消費者安全調査委員会が、1月28日、住宅用太陽光発電の火災事故に関するまとめを公表した。
これは、平成20年3月から平成29年11月までに事故情報データバンクに登録されていた127件のうち、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)によって原因調査中であったもの、原因不明とされていたもの、NITEに登録されていなかったもの等を除く72件を対象とした調査結果。そのうち、太陽電池モジュールまたはケーブルから発生した火災事故等は13件、パワーコンディショナまたは接続箱から発生した火災事故等は59件だった。
モジュールやケーブルから発生した火災事故は、件数は13件と少ないものの、住宅の火災などの大きな被害に至る可能性があるため、重点的に調査が行われた。
実際に事故に遭った屋根の被災状況(出典:消費者庁)
13件の事故について、消防機関やNITE、メーカーの調査資料を収集・整理。その結果、推定発火箇所は、おおむねモジュールとケーブルの2つに分けられた。モジュールの設置形態や、推定発火箇所がモジュールかケーブルかで分類したものが、以下の表だ。
モジュールまたはケーブルから発生した火災事故等の分類(出典:消費者庁)
一般的な住宅の屋根構造の一例(出典:消費者庁)
屋根断面イメージ図(出典:消費者庁)
モジュールと野地板の間に
鋼板等がないものは要注意
これら13件の事故には、3つの特徴が見られたという。
●モジュールの発火は、使用年数7年以上の製品で発生
●ケーブルの発火は、主に施工不良が原因と推定される
●野地板へ延焼したのは、すべて「鋼板等なし型」のモジュール
さらに詳しい調査を実施した結果、ケーブルの発火の原因は施工不良が多いが、モジュールの発火は不具合によるものだと推定された。配線接続部やバイパス回路の不具合が、時間が経って進行し、発火する危険性がある。モジュールが原因とされる火災事故は、システム導入後10年前後以降に発生しているため、経年劣化などが原因と考えられる。こうしたモジュールの不具合は、複数のメーカーの製品で確認されたという。
また、モジュールと野地板の間に鋼板等の不燃性素材のものを配置していない場合、延焼する可能性がある。野地板やルーフィングに延焼すると、被害が拡大するため、こうした「鋼板等なし型」への対応は喫緊の課題だといえるだろう。なお、鋼板等なし型は、住宅用太陽光発電の約4.5%である約10万7,000棟に及ぶとされている。
住宅用太陽光発電の所有者を対象に行ったアンケートでは、約7割が保守点検をしていない、という結果も出た。太陽光発電がメンテナンスフリーだと考えられていたのは、もう昔のこと。消費者庁は、火災事故などを防ぐためにも、適切なO&Mを行うように太陽光ユーザーの注意を喚起している。
一方、今回の消費者庁の発表を受けて、太陽光発電協会(JPEA)は同日、ホームページ上に文書を掲載。「業界として火災事故の発生を真摯に受け止め、再発防止に取り組」む、としたうえで、延焼の危険性がある「鋼板等なし型」は一部に過ぎないこと、既に対策が完了している案件もあることなどから、過度の心配は無用だという見解を述べている。また、よくある質問への回答も掲載し、ユーザーへの周知を図っている。