再エネ電源保有とコラボが鍵!? 新電力「青森県民エナジー」の取り組み
2019/04/02
青森県民エナジーの課題と
県内の新電力事情
青森県民エナジーは、ゆっくりではあるが民間事業所を含む供給先を拡大しており、ほぼ事業が安定的に行えるまでに成長した。しかし、当然ながら課題もある。
最大の課題は、生協会員の契約の伸びが鈍いことである。
十数万人と多数の連携した会員がいるのに対して、実際の電力切り替えは、必ずしも順調とは言い切れない現実がある。全国的に見ても、生協が小売電気事業に参入するケースは少なくないが、会員の切り替えは、ほぼどこでも事前の目標を下回っている。
今後さらに県内の他の生協とコラボを進めることが決まっているが、会員内の切り替え拡大が、まさに中心戦略であり課題である。
青森県内の新電力の全体での動きは、残念ながらいまだに低調である。
地元資本を中心としたいわゆる地域新電力は、青森県民エナジーと弘前市の株式会社さくら新電力、それに同じく弘前市のガス会社が小売電気事業者登録を行ったものしか見当たらない。この3社はすべて地元資本100%であるが、さくら新電力は、青森県民エナジーと同様に、関連する会社が弘前市内にメガソーラーを保有している。
自治体などとの
協力体制
青森県民エナジーは、小売電気事業に留まらず、積極的に県を含む自治体や県内の大学とコラボを始めている。青森県内で地元資本の発電事業や地域新電力事業を拡大し、エネルギーの地産地消で地域活性化を図るためには、県内の多くの官民の団体とのコラボが重要だと考えているからである。
例えば、2018年度には、青森県が募集した「平成30年度地域エネルギー事業案件形成促進支援事業」を弘前大学人文社会科学部と共に提案し、調査を行った。
「自治体新電力の設立に関わる調査研究事業」といい、自治体新電力が成り立つ最低規模の自治体をデータから探るというものであった。調査は、県内の人口1万人の鰺ヶ沢町を実例として取り上げ、町の全面的な協力を受けて行った。町内住民の新電力切り替えに関する意識調査や自治体新電力ができた場合の需給シミュレーション、事業性など多面的な結果をまとめた報告書は、募集元の青森県も含めて高い評価を受けた。
青森県民エナジーでは、調査結果のデータも使いながら、今後さらに県内の複数の地域での地域新電力設立やエネルギーの地産地消の支援などを目指している。
同時に、再エネ電源の具体的な拡充への努力なども忘れていない。
青森県民エナジーに中心となって出資する発電事業会者は、現在、10ヶ所を超える県内の場所で、ソーラーシェアリングを進めている。もちろん、そこで発電した電気は、青森県民エナジーがいずれは扱うことになる。
地域内での再エネを軸とした具体的な官民協力のリンク(連携)を推進する青森県民エナジーから目が離せないと言っても言い過ぎではない。
プロフィール
エネルギージャーナリスト
日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表
北村和也
エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
日本再生可能エネルギー総合研究所公式ホームページ