新電力で県内のインキュベーションを目指す! 「ヴィジョナリーパワー」の事例(後編)
2019/06/27
地元の有力経営者が出資をしてできた「ヴィジョナリーパワー」。ビジネスノウハウを活かし、起業家支援なども行っている個性的な新電力だ。今回はそんなヴィジョナリーパワーの地域連帯策や強みを解説する。エネルギージャーナリストの北村和也氏が、地域電力の本質を解くコラム第7回(後編)。
前編:新電力で県内のインキュベーションを目指す! 「ヴィジョナリーパワー」の事例(前編)
ヴィジョナリーパワー方式の
地域連携策
まだまだ扱う電力供給量は少ないが、県内の自治体などといくつかの取り組みが進められている。
その1つが、全国で一番人口の少ない町として知られている「早川町」と結んだ連携協定だ。「暮らしやすい早川町を推進し、地域活性化を実現するための協力連携協定」が、早川町とヴィジョナリーパワー、早川町教育委員会の3者間で結ばれている。
連携協定には、「流出エネルギー費の削減」という項目があり、これに基づいて4月から町内の3つの小中学校に電力供給を始めている。ユニークなのは、電気料金の削減枠は設定するが、実際には料金は下げない点だ。削減相当分はヴィジョナリーパワーがいったん留保して、次世代を担う子供のため、教育事業にあてるというスキームを取っている。
具体的には、「起業創業」促進のための「子どもや青少年に対するセミナーの開催」や町が実施する「義務教育無償化事業の経費充当」などだ。単なる電気料金の削減だけを目的とせず、新電力が削減分の使い道も含めて関与するという新しいスタイルだ。
自治体との連携が生む
強みと貢献
他の県内地域でも、自治体との連携項目に起業促進を含める提案などヴィジョナリーパワーの特色を生かしたいくつかの動きが始まっている。
成り立ちを考えてみれば良く分かるが、ヴィジョナリーパワーは山梨県で成功している企業家が集まって作った地域新電力だ。地域でのビジネス成功体験や知恵が結集されている。そんな彼らが、各自治体との連携を目指すときには、決して電気を安く提供するだけにとどまらない。
人口減や人口流出に悩む地域では、地元に確固たる雇用先が必要である。新しく雇用を創る起業や事業拡大の知恵を一緒に絞ったり、実際の支援をしたりする存在としてもヴィジョナリーパワーの活躍の場はこれから広がっていくだろう。
プロフィール
エネルギージャーナリスト
日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表
北村和也
エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
日本再生可能エネルギー総合研究所公式ホームページ