【レポート】 ソーラーシェアリング推進連盟が1周年記念シンポジウムを開催!
2019/07/08
農山漁村再エネ法の見直し
農林水産省の後押しが強まる
農林水産省からは、本年度より食料産業局バイオマス循環資源課再生可能エネルギー室長に着任した川中正光氏も登壇。
農水省 再生可能エネルギー室長 川中正光氏
前任の鎌田室長より「まずはソーラーシェアリングの現場を見てくるように」と言われたと明かし、引き続きソーラーシェアリングを重視していく考えを示す。さらに、新たなソーラーシェアリング促進策が生まれようとしているとして、「農山漁村再エネ法」の見直しについても詳らかにした。
農山漁村再エネ法、正式名称「農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律」は、2014年5月に施行された法律で、農山漁村における再生可能エネルギーの導入に向けた取り組みを推進しようとするものだ。同法により、農山漁村で再エネを導入する際の流れが明確化され、農地法や森林法等の手続のワンストップ化も可能になった。
しかし、施行から5年を経て新たな課題も生まれ、現在、基本方針の見直し作業が進められている。変更のポイントは多岐にわたるが、キーワードを挙げれば「分散型エネルギーシステムの構築」「地産地消モデルの普及・強化」「モデル事例のノウハウの共有化・他地域への展開」「地域内エコシステムの構築」、そして「営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の促進」だ。
特にソーラーシェアリングは、農地の有効活用および農家の所得向上に役立つことが多くの事例から実証されており、法見直しの議論のなかでも大きな比重を占めているという。
また、経済産業省からは、資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 新エネルギー課 課長補佐の梶直弘氏が「再エネの主力電源化に向けて」と題して講演。昨年7月に閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」にも「再生可能エネルギーの主力電源化」が明記されているとして、国としても再エネを推進する方針であることを示した。
資源エネルギー庁 新エネルギー課課長補佐 梶直弘氏
一方で、急速に普及拡大した太陽光発電設備については、工事の不備等による安全面の不安や、景観・環境等をめぐる課題など、地域の懸念が顕在化してきているという。こうした状況にあって、ソーラーシェアリングに寄せられる期待は大きい。
赤字構造からの脱却が
地域活性化のポイントに
わくわくソーラーファーム代表 重家雅文氏
わくわくソーラーファームの重家氏は、地域の状況を「かつては小さな農家が里山の多面的循環機能を守ってきたが、今日では不採算な稲作と高齢化が里山を脅かしている」と表現。「耐える農家から、持続可能な自然エネルギー農家へ」の転換を訴えた。ソーラーシェアリングを行うことで赤字構造から脱却できることを、具体的な数字で示し、シンポジウム参加者の関心を集めていた。
匝瑳ソーラーシェアリングの椿氏は、「私達が目指しているのは農業と地域を支え、一緒に歩むソーラーシェアリングだ」と述べる。椿氏を中心としたメンバーは、牛糞等の捨て場となり悪臭や汚水・土壌汚染の元凶となっていた耕作放棄地を、ソーラーシェアリングによって蘇らせることに成功した。
匝瑳ソーラーシェアリング代表 椿茂雄氏
また、売電収入で地域を支援する「村づくり基金」を立ち上げ、地域の環境保全や新規就農、移住者への支援なども実施している。さらに、こうした取り組みは、小学校PTAや土地改良区の代表など地元住民を巻き込んだ協議会を通して行っているのだという。これらはソーラーシェアリングによる地域活性化の好例だ。
対談セッションには、有機農作物宅配事業のパイオニアである徳江氏と、鴨川自然王国で家族とともにスローライフを送る半農半歌手のYae氏(歌手・加藤登紀子氏/故・藤本敏夫氏の次女)が登場。ソーラーシェアリングへの期待と、食とエネルギーの未来について語り合った。
オーガニックフォーラムジャパン会長 徳江倫明氏
鴨川自然王国を拠点に半農半歌手として活動するYae氏
最後のトークセッションでは、城南信用金庫の吉原氏が、金融機関の立場から「再エネ投資」が世界の必然であることを解説。
城南信用金庫顧問 吉原毅氏
そしてみんな電力の大石氏が、「消費者が発電所を選ぶことが当たり前の時代」が近づきつつあることを印象づけた。
みんな電力代表取締役 大石英司氏
産地が明らかで安全で美味しい食材のように、ソーラーシェアリングでつくった電気が多くの消費者に選ばれるようになる日も、そう遠くはないのかもしれない。
推進連盟幹部とシンポジウム登壇者
取材・撮影・文/廣町公則