九電の太陽光出力抑制、5ケ月ぶりの実施 求められる抑制量の低減
2019/11/12
九州電力の太陽光出力制御が開始されて1年が経過した今年10月。5ケ月ぶり、58回目の出力制御が実施された。太陽光発電が多く、原発も稼働している九州エリアで、出力抑制の低減が求められる状況が続いている。今後の再エネ普及にも関わるこの課題を考えたい。
九電の出力抑制から1年
計58回の実施、低減が課題
10月12日と13日、九州電力は前日に通知のとおり、再生可能エネルギー発電事業者に発電の一時停止を求める出力抑制を実施した。昨年10月13日に初めての出力抑制を実施してから58回目、今年度に入り32回目の実施だ。
出力抑制の実施時間帯は、2日間とも午前8時から午後4時まで。12日の抑制量は、前日の通告では41万から62万kWであったが、それを下回る38万kWであった。13日は、前日の通告では17万から29万kWで、実抑制量は17万kWであった。
10月12日と13日はそれぞれ日曜日と祝日で、工場や事業所などの休業が多く、電力需要は低かったと思われる。一方で九州地方はおおむね晴天となったため、発電量が需要量を上回り、需給のバランスを維持するために出力抑制が必要になったとみられる。
前回の実施は今年5月11日(土曜日)と12日(日曜日)で、抑制容量はそれぞれ85万kWと162万kWであった。
太陽光抑制の課題解決へ
調整力へ活用できれば世界初
一方、経済産業省資源エネルギー庁は10月8日、「第23回 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 新エネルギー小委員会 系統ワーキンググループ」において、再生可能エネルギーの出力制御の高度化に向けて議論を行っている。
同ワーキンググループによれば、出力制御を系統運用者(九州電力等)が自動で行うオンライン制御の可能な発電所を増やすことが、出力抑制の容量そのものを低減することにつながる。しかし現行の制度では、発電事業者が自らオンライン設備などを導入する必要があり、発電事業者にとっての導入のインセンティブはほとんどない状況だ。そのため、発電所のオンライン化は進んでおらず、九州のオンライン設備の割合は35%程度にとどまっている。
変動電源である太陽光発電は予測が困難であるため、出力のコントロールも非常に難しいものだ。しかし、これらの課題をクリアできれば、電力供給のコントロールに役立つ可能性がある。資源エネルギー庁は令和2年度の概算要求において、太陽光発電を需給バランス調整に活用する実証事業を予定している。同ワーキンググループ資料によると、この実証が実施されれば、一度制御した太陽光発電を調整力として活用する事例は、海外においても例のないケースとなる。
DATA
九州電力株式会社
総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 新エネルギー小委員会 系統ワーキンググループ
文/山下幸恵