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米太陽光市場を支えてきた、「投資税額控除制度」の変更で業界が激震!

2019年に建設ラッシュ?
鍵を握る申請のタイミング

2019年が30%を活用できる最後の年ということで、太陽光発電所の建設ラッシュが起こるのだろうか。2015年末にオバマ政権下ではITCが延長されないとされ、2016年に主に大規模な発電事業用太陽光発電所の建設ラッシュが起こり、米国市場が大きく拡大したことがあった。SEIAのデータによると、2016年の米国市場は前年比約2倍に成長し、設置容量は約15GWに達した。2015年以前の法案と2015年の可決法案では、異なる点が1つある。それは税額控除の申請のタイミングだ。

従来のITCは太陽光発電設備の設置が完了し、稼働を開始した年だけに申請できる。例えば、2019年末までに稼働開始した設備は30%の控除になり、2020年末までに稼働した設備には26%の控除率が適応されるということだ。しかし昨年、米国内国歳入庁(IRS)はITCが適応される再エネ設備の「建設開始」に関するガイドラインを見直した。それにより、設備が稼働を始めていなくても、IRSの「建設開始」の定義に沿った設備は、建設が開始した年の税額控除率が申請できるようになった。例えば、2019年に設備着工した場合、2024年1月1日前までに完成していれば、2019年の30%の税額控除が得られるということだ。

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2019年以降に稼働を開始した設備の中でも30%の控除率を受けられる条件をIRSの「セーフハーバー」と呼ぶ。IRSによるこのセーフハーバーをクリアするためには、2つのテストのうち1つに合格しないといけない。1つは、建設が進行中であることを証明する「物理作業テスト」。もう1つは、2019年12月31日までにプロジェクトの総コストの少なくとも5%が発生したことを示す「5%テスト」だ。ちなみに、許可、サイト評価、計画、環境影響調査などのコストはすべて5%テストのテスト対象であるそうだ。

では、次のような場合はどうなるだろう。2019年12月31日にとりあえず工事に着手し、数年何もせず、残りの建設を2023年末までに終え、設備の稼働を開始させる。そして、2023年用の確定申告時に30%の投資税額控除を申請する。ITCの恩恵を最大化するために、このようなシナリオを考えるディベロッパーが出るかもしれないが、IRSはこのようなケースを受け付けない。ディベロッパーはIRSに、建設が開始し、さらに建設が「継続的に」進行している証明をしなくてはいけないのだ。厳しいIRSの監査が入るので、どれだけのプロジェクトがセーフハーバーを適応できるかは定かではない。

延長すれば82GW追加
ITC延長への取り組み

ITCが今まで3度も延長され、ほぼ右肩上がりで成長してきた米国太陽光発電市場が税額控除率低下により鈍化しないように、「#ITCを守ろう」キャンペーンが繰り広げられている。

図)米国で広がる「#ITCを守ろう」キャンペーン、出所:SEIA

今年6月にカリフォルニア、ハワイ、ニューヨーク州などを代表する20人の民主党上院議員は、気候変動の激化を防ぐため、そして24万人の太陽光発電産業の雇用を守るために上院総務にITCの延長を申し立てた。これらの上院議員を支持するため、SEIAの社長兼最高経営責任者を務めるアビゲイル・ホッパー氏は、 「気候変動に対処する包括的な法律が制定されるまで、ITCはクリーンエネルギー導入を推進するための最強の政策である。ITCは今まで何十万もの雇用を生み出し、1400億ドルを超える民間投資を経済に投入した」と 議会にITCの延長をするように強く主張した。

さらに今年の夏、約1000の太陽光発電関連企業が議会に税額控除率30%のITC延長の懇願書を提出した。SEIAと英エネルギー調査・コンサルティング会社であるウッドマッケンジーは、もしITCが延長されれば、2030年までに82GWの新たな太陽光発電が設置されると予測している。さらに2020年から2030年の間で、CO2排出量が3億6300万トン削減されるとも。またホッパー氏は、米国の気候と経済が抱える問題に対して、根本的な解決をもたらすことができるとしている。

図)ITCを延長による米国太陽光発電市場への影響(棒線:ベースライン、青面:ITCを延長による増加分(MW))、出所:Wood Mackenzie Power& Renewables and SEIA

PROFILE

モベヤン・ジュンコ

太陽光発電電池メーカーで7年間産業経験を積んだ後、2006年から太陽光発電調査会社米ソーラーバズでシニアアナリストとして活躍。2013年よりジャーナリストとして、米国の太陽光発電政策や市場トレンドに関する記事を日欧米のメディアに多数執筆。

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文/モベヤン・ジュンコ

SOLAR JOURNAL vol.31(2019年秋号)より転載

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