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太陽光発電プロジェクト入札「世界最低価格」が更新

アラブ首長連邦(UAE)のエミレーツ水電力公社(EWEC)によって発表された太陽光プロジェクト入札の結果、その落札価格が世界最低価格となったことが注目を集めた。安価なPPA価格が成立した要因とは何か。今後の太陽光発電に期待されることとは? 資源総合システムの貝塚泉氏が、世界の再エネ情勢を読み解くコラム第12回。

PPA価格が世界最低に

7月の終わりに、アラブ首長国連邦(UAE)のエミレーツ水電力公社(EWEC)が、2GWの太陽光発電プロジェクト入札の結果を発表し、話題を集めた。発表によると、UAE・アブダビ市内から約35km にあるAl Dhafraで開発される太陽光発電プロジェクトの落札価格は、太陽光発電の電力調達契約(PPA価格)としては世界最低価格となる0.0497UAE・ディルハム/kWh(1.3533米セント/kWh)であった。

落札したのは、UAEのアブダビ国営エネルギー会社(TAQA)、同じくUAEのデベロッパMasdar、仏の電力会社EDF及び中国・Jinko Power Technologyのコンソーシアムであった。

このプロジェクトは2020年第3四半期に資金調達を完了し、2022年上期にフル稼働を開始、フル稼働により約16万世帯に電力を供給する予定である。

初期投資コストの低下が
PPA価格に影響

1.35米セントという非常に安価なPPA価格が成立した要因のひとつにはプロジェクトサイトが非常に日照に恵まれているということが挙げられる。

下図で示されているのは、入札で決定したPPA価格(落札額)と、日照量と相関する等価システム稼働時間(年間のシステム出力電力量をシステム定格容量で除した値。システム容量1kWあたりの年間発電量)の関係性である。UAEのプロジェクトサイトの等価システム稼働時間が1,800kWh/kWを上回っている。

出典:各種公表資料を基に㈱資源総合システム作成

設備容量がGWレベルであること、規模の経済性が初期投資コストの低下に貢献していることも、1.35米セント/kWhの実現に寄与していると考えられる。なお、本入札に関する報道では、落札者の決定前にプロジェクトサイトの建設が開始されていることが記載されており、エミレーツ水電力公社(EWEC)がサイトの整備を実施している模様である。

この入札には、①サウジアラビア・ACWA Powerと中・Shanghai Electricグループ等によるコンソーシアム、②仏・Totalと日・丸紅のコンソーシアム、③仏・Engieと仏・International Power(IPSA)等のコンソーシアム、④日・ソフトバンクと伊・Eniのコンソーシアムが応札しており、2020年4月の段階でも、市場最低額の応札があったことが報道されていた。

入札は技術的評価及び商業的評価によって決定するとされていたが、最終的に最低額での応札者が落札する結果となった。

太陽光発電が
脱石炭の主導電源に

上記に示すように様々な要因により1.35米セント/kWhというPPA価格が実現したが、PPA価格のベースとなる太陽光発電の均等化発電原価(LCOE)は、他の地域でも低下している。

2020年8月にはUAEの事例の直後に、PPA価格の更新が再び報告された。また、ポルトガル政府は第2回太陽光発電プロジェクト入札の結果を発表。670MWが選定された。この入札では、史上最低価格となる1.114ユーロセント/kWh(1.316米セント/kWh)の落札価格が記録されている。ポルトガルの入札では土地の使用権と系統連系の保証が得られることから、このような低価格の落札価格が成立した。売電期間は15年となっている。

国際再生可能エネルギー機関(IRENA)による再エネの発電コストに関する報告書「Renewable Power Generation Costs in 2019」では、2019年の電力事業用太陽光発電システムの平均設置コストは前年比で18%下落し995ドル/kWとなり、均等化発電原価(LCOE)は2010年比で82%下落し、6.8米セント/kWhとなったという。

さらに、2019年に新設された太陽光発電システムと風力発電システムは、最も低コストな既存の石炭火力発電所の発電コストを下回ったとしている。

太陽光発電は、風力発電とともに脱石炭を主導し、既存電源との競争力獲得によって、コーポレートPPAほかビジネスモデルのさらなる活発化が期待されている。

参考文献

株式会社 資源総合システム 
太陽光発電マーケット2020~市場レビュー・ビジネスモデル・将来見通し~(2020年7月)
株式会社 資源総合システム 
太陽光発電海外市場レポート2020年版 ~海外主要市場と新興市場~(2020年9月刊行予定)


文/資源総合システム 調査事業部 部長 貝塚泉

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