日本唯一の卸電力取引所「JEPX」とは? 取引価格はどう決まる?
2021/02/04
昨年末から高騰が続く日本卸電力取引所(JEPX)。ひと月の電気代が数倍に跳ね上がることなどが懸念され、大きな話題を呼んだ。中には、こうしたニュースでJEPXの存在を知った読者も多いのではないだろうか。JEPXとは何か、取引価格はどのように決まるのかといった仕組みを解説する。
卸電力取引所は日本にひとつ
電力自由化推進のために設立
一般社団法人 日本卸電力取引所(JEPX:Japan Electric Power Exchange)は、日本で唯一の卸電力取引所だ。1990年代から始まった電力システム改革の流れを受けて設立され、2003年の第三次電気事業制度改革のタイミングで本格運用を開始した。会員登録した事業者は入札を通した電気の売買が可能だ。現在、200社を超える電力会社が取引会員になっている(2021年2月1日現在、229社)。
JEPXでは、1日を30分ごとに分割した48コマで入札が実施され、必要な時間帯において取引を行うことができる。取引量は1コマあたり50kWh単位だ。売り手である発電事業者と買い手である発電事業者は、主に「スポット市場」「時間前市場」において入札に参加する。スポット市場とは、翌日に受け渡しする電気を取引する場で「一日前市場」とも呼ばれる。当日の午前10時までに、翌日の電気の売買が可能だ。時間前市場では、当日1時間前まで調達ができる。スポット市場で調達できなかった場合の補完として活用される。
応札額非開示の単一価格
参加には資産上の要件も
ブラインド・シングルプライスオークション方式の需給カーブ
「売り」の量と価格、「買い」 の量と価格の線の交点で約定価格と量を決定する(出典:日本卸電力取引所)
JEPXのメインマーケットであるスポット市場(一日前市場)では「ブラインド・シングルプライスオークション」というユニークな仕組みで約定価格が決定される。参加者は、1コマごとに「10円/kWh以上なら500kWh買う」「13円/kWh~15円/kWhの範囲なら20MWh売る」など価格と量を指定できる。こうした価格と量の組み合わせは、最大15パターンまで可能だ。
ブラインド・シングルプライスオークションの「ブラインド」とは、入札の際に他の参加者の提示価格が開示されない状態を指す。シングルプライスオークションでは、売り手と買い手の量と価格の交点が落札価格となる。つまり、入札された価格と量を組み合わせた需給カーブにおいて、需要と供給の交わる点が約定価格となる。例えば、入札価格が10円/kWhであっても、約定価格が15円/kWhとなれば15円/kWhで売買しなければならない。
小売電気事業者は、スポット市場で約定した金額を取引の2営業日後に支払わなければならない。また、1kWhあたり0.03円もしくは1ヶ月あたり100万円の取引手数料が発生する(いずれも消費税別)。そのため、JEPXの会員となるには、純資産額が1,000万円以上などといった要件が設けられている。
DATA
文:山下幸恵(office SOTO)