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質問! 日本の地熱発電ってどうなの?

FITの見直しにより太陽光発電の普及は落ち着きをみせつつある。「ネクスト再エネ?」と有識者に聞くと、「バイオマス」と答える人が非常に増えている。その他の再エネってどうなっているの?第2回目は地熱発電編。

秋田県で42MW着工
地元合意などハードル高い

日本の地熱潜在量は米国、インドネシアに次いで世界3位だ。開発に莫大な投資が必要なため参入企業は資金力のある大企業に限られることや、温泉組合などとの地元住民の合意形成に時間がかかることなどが地熱発電普及の難点といわれている。そのような地熱でも着実に運転開始へ向けて開発がすすんでいるのが秋田県湯沢市の山わさびさわ葵沢地熱発電所だ。同地熱発電所は出力42MWを想定し、2015年5月に着工している。Jパワーなどが事業主体で、19年に完成予定だ。

経済産業省は地熱資源開発に対する国民の理解を浸透させるために、2016年2月から3月にかけて、札幌、仙台、小倉、東京の全国4都市で地熱資源を体感できるイベント「地熱マルシェ」を開催した。マルシェ(市場)をコンセプトとした会場では、地熱を活用して栽培された地元野菜などを販売する物産展や地元団体によるダンスなどが披露されるステーFIT以降に導入された中小水力発電はあわせて140MWだ。既設発電所を改良しFIT対象設備とした案件が多く、新規設備はこれからだ。政府は中小水力発電の潜在導入量について、600〜700 kW規模で全国2万7000ヶ所に計18GWあると試算している。その10分の1が実現したとしてもかなりの導入量となる。また農業用水など低落差の導入箇所はさらに全国1万ヶ所あるという。

全国小水力利用推進協議会は、「中小水力発電は40年、50年間は稼働する。投資コスト次第ではFITによる売電事業だと数百kW級の発電所では10年程度の期間で減価償却が可能になる」と語る。小水力発電は今後、低落差の小型が各地で数多く出てくる見通しという。そのため、低落差・小流量地点に適用できる水車で、羽根の形状による水切り音の軽減、スクリューの長さの最適化、全体コストの削減を進めることが重要となる。ジプログラム、地熱資源について考えるワークショップなどが繰り広げられた。

FITや開発規制緩和により、まず小型の新規案件が先行して動き出している。開発支援組織である石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が採択した助成事業は30数件にのぼり、北海道、東北、九州地域が多く、規模は数千kWから1万kWだ。

温泉熱利用のバイナリー発電は数百kW以下が各地に具体化しており、つちゆ温泉エナジー(福島市)は15年11月に400 kWを完成した。日本地熱協会は、「再生エネのなかでも地熱発電は難しい事業だ。地元住民や温泉事業者が喜ぶ地熱開発をするのを基本に、地域住民側に立った開発が重要である」と指摘する。FIT施行前までは17件だった国内の地熱発電所はバイナリー発電を含めると15年末までに32件となっている。

国立公園内の井戸の掘削について環境省は第1種以外の地域を可能にしたが、新たな掘削を具体化させるには、開発事業者側の多大な努力が求められる。エネルギーミックスで30年に1GW規模の新規開発を目指すとしているが、技術者不足、掘削機械不足などもありハードルは高いといわれている。


日本地熱協会
事務局長 齋藤 徹氏


文/南野 彰

※『SOLAR JOURNAL』vol.17 より転載

 

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