ファーウェイが産業用蓄電システムを日本初披露!【PV EXPO 2021秋 レポート】
2021/10/28
9月29日から10月1日にかけて、東京ビッグサイトで開催された「スマートエネルギーWeek秋 2021」。太陽光発電をはじめ、さまざまな脱炭素ソリューションが一堂に会した。その中から、今回はファーウェイ・ジャパンの展示をご紹介する。
産業用蓄電システムを
日本初披露
ICT業界のリーディングカンパニーである中国のファーウェイは、以前は太陽光発電関連の製品を扱うスマートソーラー事業部が独立しており、脱炭素やBCP(事業継続計画)対策関連の製品を扱う部署は別だった。だが、世界的にデジタル化が進み様々な業界が融合しながら発展する中で、同社の組織も時代に合わせた改革を目指し、2020年に2つの部署を統合して「デジタルパワー事業本部」が誕生した。
今回、そのデジタルパワー事業本部が考えた五つのソリューション、すなわちスマートソーラー、サイト電源、データセンターファシリティ、EV電源、組込み電源について、展示会では初となる大型の模型を展示。模型を見ることで、紙の資料のみでは伝わりづらいソリューションの内容がイメージしやすい展示となっていた。
その中で日本初披露となったのが産業用蓄電システムだ。家庭用蓄電池はすでに多くのメーカーが販売しているが、産業用が日本で普及するのはまだこれから。地震・自然災害の多い日本で、家庭だけではなく会社や自治体などにも蓄電システムがあれば、万が一の時に役立つことが期待される。
サイズはおよそ幅6メートル、高さ2.8メートル、奥行2.4メートルのコンテナ式で、容量は約2MWhある。電池パックがモジュール型になっており、1つずつ取り外し可能なのが特徴だ。仮に故障したら該当のモジュールだけを外して交換すればよく、全体に及ぼす影響はほぼない。この製品は、海外ではすでにパワーコンディショナ(PCS)とセットで販売されており、日本では2021年末にリリース予定だ。
同社は家庭用蓄電システムも出しているが、実は自家消費にも使える。日本ではPCSと蓄電池のセットで2020年から販売を始めており、売れ行きは好調だ。
簡素化を目指した
プレハブコンテナ型データセンター
日本は今、データセンターバブルと言っても過言ではないほどデータセンターの建設が進んでいる。そこに一石を投じるのが、同社の「モジュール型無停電電源装置」だ。
カーボンニュートラル、グリーンエネルギーの時代に何ができるか。同社はそう考える中で、データセンター建設における鉄筋コンクリート(RC)造の建物の存在に焦点を当て、「コンテナ型」を提案している。
RC造だと竣工までに半年、長いと1年近くかかることもあり、悪天候などで建設が遅れることもある。一方、コンテナ型なら、あらかじめ工場でばらつきのない安定した品質で作れる。現場では最小限の連結作業と運転試験だけすればいいのだ。その分、資材や稼働人員を減らせるため、CO2排出量や金銭的なコストを下げられるというメリットもある。海外のデータセンターはコンテナ型が多いのは、実はこのためだ。
また電源部分を1つずつモジュール化した。本体から簡単に引き出せるためメンテナンスが簡素化され、増設も5分程度でできる。本体が動いている最中に交換するため、漏電などを心配する声も聞かれるそうだが、アース対策などは万全で「人体に影響が出ることはない」(蔡行順デジタルパワー事業本部法人ビジネス推進事業部部長)。
データセンターで最もコストがかかるのが空調の電気代だ。同社ではなるべく電気代のかかるコンプレッサー(圧縮機)を稼働させないよう、外気と水の蒸発の原理を活用した空調システムを独自に開発した。
コンプレッサー式とは簡単に言えば、住宅のエアコンに室内機と室外機を付けるのと同じ仕組みだ。この時に必要な冷媒を扱うには専門業者の技術が必要だったり、機器が増える分だけデータセンターが巨大化するといった課題がある。また水冷式も床の防水対策などが必要だったりするのだが、同社のシステムなら防水対策も不要で設置も簡単。「今までの空調システムを2割ほど効率化できる」(蔡氏)という。
こうした製品供給には半導体が欠かせない。しかし最近、世界的な半導体不足で他のメーカーでは様々な機器の生産を止めるケースがある。そんな中、同社は「全く影響を受けず出荷も通常ペースを維持している。今が貴重なビジネスチャンスだ」と胸を張る。こうした資材調達力の高さも同社の強みだ。
DATA
取材・文:大根田康介