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省エネとエネルギーの効率化の見直しが、日本の脱炭素化への切り札に

脱炭素化に向けて、基本的でいて重要な考えがある。それが今回取り上げる「省エネ」だ。エネルギージャーナリスト・北村和也氏が、エネルギー効率の視点から日本の省エネについて考える、連載コラム第31回。

脱炭素の柱は再エネ電力の飛躍的な拡大だ。地域主導で進められることで、地域の活性化にもつながることが期待されている。主役であるはずの地域の立場から見れば、これが閣議決定された第6次エネルギー基本計画の“背骨”と言えよう。

決定前後で起きた議論は、2030年に向けた再エネの増やし方やスピードが現実的かどうか、に集中している。しかし、一見地味ではあるが、基本となるポイントがある。それが、今回取り上げる「省エネ」である。エネルギーを脱炭素化する前に、使うエネルギーの量を徹底的に減らす必要があることは誰が考えてもわかるだろう。古くて新しいテーマ、省エネについて、エネルギー基本計画を合わせ見ながら、もう一度考えてみたい。

省エネの目標こそが野心的だった
エネルギー基本計画

エネルギー基本計画では、2030年に向けて再エネ電源の割合を36~38%程度まで拡大することを示した。ただし、増加分がそのままこの数字になるのではなく、全体の発電量(需要)を下げることで再エネの構成比が上がる仕組みである。その発電量は、2015年の第5次エネルギー基本計画に記されていた1兆650億kWhから、およそ9,340億kWhへと12%も下がることが想定されている。

このことは、基本計画の策定委員も含めて、再エネ電源の割合に現実味を持たせるための「つじつま合わせ」との批判さえ起きる事態を招いた。しかし、具体的な数字は別にして、省エネが有効であることは変わらないだろう。

もちろん、ただ何もせず座っていても電力需要は下がるはずもない。基本計画には、「電力の需給構造については、経済成長や電化率の向上等による電力需要の増加要因が予想されるが、徹底した省エネルギー(節電)の推進により、2030年度の電力需要は8,640億kWh程度、総発電電力量は9,340億kWh程度を見込む」と記された。経済成長はともかく、EVや熱利用などの電化率で需要が増えても省エネで達成するというのである。

もう少し、基本計画を見ていこう。
計画内の「2030年度の省エネ量推計にあたってのフレームワーク」には、冒頭に、2015年策定時の「省エネ対策を土台として、2019年度までの各対策の進捗を踏まえ、野心的に見直しを行った」とある。具体的には、2015年策定時の省エネ目標値5,036万kl(石油換算)から 2030年度の6,200万kl程度へと、23%大幅に積み増しした。まさしく野心的な数字である。

省エネとエネルギー効率化

ここで基礎知識を一つ。
日本では、エネルギー需要を減らす方法を、省エネという言葉でひとくくりにしている。しかも前述した基本計画内に「省エネ(節電)」とあるように、単純に照明を消したり、エアコンの温度設定を変えたりするようなイメージばかり結び付く。もちろん、後述するようにそれも重要であるが、技術革新や省エネ機器による「少ないエネルギーで、同様の機能や効果をあげること」も重要な方法となる。私は、これを欧州で必ず使われる「エネルギーの効率化」と称し、分けて使っている。

我慢の「省エネ」と我慢無しの「エネルギー効率化」というとわかりやすいかもしれない。エネルギー需要を減らすためには、この二つが両輪として働く必要があることを覚えておいてもらいたい。

特徴ある部門別の省エネ

では、日本では具体的にどのように省エネを行おうとしているのだろうか。
基本計画では、省エネの項のトップに「我が国のエネルギー消費効率は1970年代の石油危機以降、官民の努力により4割改善し、世界的にも最高水準にある」と書かれている。石油ショック後の何年かは、確かに産業界を中心に省エネが大きく進んだのは事実である。しかし、その後は長く停滞していて欧州諸国はとっくの昔に日本を追い抜いている。この文章は、かなり盛っていると言わざるを得ない。

産業、業務、家庭、運輸部門別の省エネ目標などを見ると、国のおおよその考えが見えてくる。
省エネの積み増し分およそ1,200万klのうち、最も大きな割合を占めるのが運輸部門の700万klである。低燃費車の導入、特にトラック輸送の効率化やカーシェアリングなどへの期待が高い。また、件(くだん)の産業部門は、さらに300万klの深堀りとされている。省エネ法の執行強化やベンチマーク制度の見直し、企業の省エネ投資促進、技術開発支援等が実施のテーマである。

ここまでの運輸と産業については、私たち一般の人々が直接的に関わることはやや難しい。例えば、低燃費車を作ってもらわないことには、消費者はそういった車を選ぶことができないという理屈である。

今こそ、もう一度
家庭での省エネから

一方、業務・家庭部門は私たちにとってより身近な省エネ対象となる。基本計画では、トータルで200万klのかさ上げが求められている。

特に、必要とされるのが建物や住宅である。住宅については、2020年までに新築注文戸建住宅の半数以上でのZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)実現を目指してきた。しかし、2019年度でおよそ2割と目標達成にはほど遠い。日本の建物のエネルギー対応は驚くほど低レベルで、断熱などやれる余地が山ほどある。しかし、基本計画では「消費者の認知度やメリットに対する理解が課題」とされている。このように、脱炭素による温暖化の解決は私たち一般の人間の課題でもあることがどうも忘れられがちだ。

住宅の改築や新築時の省エネ仕様への転換は、いわばエネルギーの効率化である。しっかり断熱化されたリビングルーム20畳は、四畳半用のエアコンでも十分対応できるという。もちろん、小規模でも、省エネ型の機器に取り換えることも有効となる。

そして、案外きちんとできていないのが、省エネの原点でもある「無駄な電力使用を省くこと」だ。照明のスイッチなど電化製品の入れっぱなしをやめることなど簡単な行動で対応できる。なんだそんなこと、というなかれ。わが胸に手を当ててみても、きちんとできている自信がない。

エネルギー不足と高騰が危惧されるこの冬、発電の余力である予備率が3%を切るのではないかと大騒ぎになっている。今、我が家で3%の電気を節約するのがそれほど難しいとは思えない。3%節電することで、寒さを耐え忍ばざるを得なかったり、ましてや凍え死んだりする可能性はゼロだろう。そんな、ちょっとした行動が集まることで、電力危機を乗り越えられるレベルの国に私たちは住んでいるのだ。

電気代の値上げや使用カットを取り上げると、すぐに凍死だとか生活できない人が出るなどの例を挙げる人たちも少なくないが、物事は冷静に分析すべきである。もちろん、大幅な値上げで苦しむ人たちがいるのは事実であるから、そこは欧州で行われているような補助を政府が行えばよい。18歳未満の子供への10万円支給よりよっぽど意味がある。

脱炭素は、私たちの子供たちが持続可能な地球に住むための必須要件である。政府や企業だけが行う他人事ではない。余力のある人たちから率先して範を垂れること、こういうことこそ脱炭素化の切り札になるかもしれない。
 

プロフィール

エネルギージャーナリスト。日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表。

北村和也

エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
日本再生可能エネルギー総合研究所公式ホームページ

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