編集部からのお知らせ

【セミナーレポート】2022年の地域に根ざした太陽光市場を考える

有識者が語る
FIT後の太陽光市場

「2030年に向けた太陽光発電の導入展開」
株式会社資源総合システム代表取締役 一木修氏


コンサルティングを通じて太陽光発電業界を支援している資源総合システム。一木氏は電力需要家が再エネへの転換を進めていることから、2022年以降の太陽光市場は技術開発加速による新市場の創出が進むのではないか――との見通しを示した。その上で、国が提示している2030年の再エネ導入目標を達成するには、責任省庁が連携して太陽光発電導入の拡大を目指すほか、送電網の増強、ポジティブゾーニングなど地域と共生する方法での導入が重要だと話した。

「データマネジメントによる変動リスクの削減」
メテオコントロールジャパン株式会社 代表取締役 山時義孝氏


メテオコントロールの遠隔監視システムは、欧州をはじめ世界中で導入されている。同社の山時氏は、非FITの課題として需給バランスやインバランスによるペナルティを挙げた。気象条件などによって発電量が変化する太陽光発電の変動リスクを軽減するためには、監視システムで収集したビッグデータを活用するITソリューションが有効だと述べ、「収益を上げるには、発電損失の見える化、つまり、日射量が多いのにうまく発電できていないようなエラーを見つけて是正することが大切」と語った。

「垂直設置モジュールのアグリソーラー・ドイツのモジュールメーカーが考える太陽光発電のシナジー」
ルクサーソーラー株式会社 代表取締役 ウーヴェ リーブシャー氏


ドイツのパネルメーカー・ルクサーソーラーのリーブシャー氏は「価格の妥当性、土地の使い方が持続可能かどうか、誰がどう作っているかが大切なのは、『米』も『太陽光発電』も一緒」と説明。日本には多くの森林があるが、それ以上に広大な農地がある。山を切り崩すよりも、農地、その中でも半数以上を占める田を活用できないか――と提案し「垂直モジュールを田んぼのあぜ道に設置すると、水の反射でも発電できる。そうした消費者により近い発電には付加価値をつけていく必要もある」と語りかけた。

「2022年の政策予想と地域に根付く発電所のあり方について」
環境エネルギー政策研究所(ISEP)所長 飯田哲也氏


リモートで登壇した飯田氏は、太陽光発電を今後いかに増やすかが重要だが、現状では「(促進要素よりも)抑制要素のほうが大きいのではないか」。FIP制度などの支援策が複雑化していることや、太陽光パネルの廃棄費用積立や地域活用要件などのリスクが大きいことが課題だとして、「見通しの良い政策にしていくことが大切」と話した。また、ポジティブゾーニングなど地域(自治体)の参加が重要だとして、農地を活用するソーラーシェアリングを例に挙げた。同研究所福島事務所所長の近藤恵氏は、ソーラーシェアリングの実例として、同研究所が事業主体の一つとなっている「二本松営農ソーラー」(福島県二本松市)の現地の様子を報告した。

「三相ハイブリットパワコンによる蓄電システムソリューション 自家消費の問題点と解決手法」
GoodWe Japan株式会社 代表取締役 中井久人氏


パワコン専業のグローバルメーカー・GoodWe。中井氏は、FIT後のビジネススキームの一つとされる自家消費システムの課題として①逆潮流防止 ②瞬時電圧低下 ③三相バランス、を挙げ「この3つが起こるとパワコンが止まってしまう。いかにパワコンを止めないかが自家消費の課題」と述べた。また、マイクログリッドや仮想発電所(VPP)は範囲が広くなる分、様々な負荷があるため「いかにうまく(大容量の)三相のパワコンをコントロールするが、メーカーとしての課題」と話した。そのために、各社協力して制御できるようなシステムを進めていくことの必要性についても言及した。

講演後、ソーラージャーナル編集長の嶋長直志とこれからの太陽光発電市場について語り合ったクロストークの様子。

 

「脱炭素の切り札、地域とのコラボで作るPPAの成功法」
日本再生可能エネルギー総合研究所 代表 北村和也氏


自治体や企業のコンサルティングをしている北村氏は「脱炭素の需要側がこれまでとは変わってきている。企業にとっても自治体にとっても脱炭素化は“やらねばならないこと”になった」と話す。FITからPPAやFIPへと制度が変わっていく中で、これまでは発電事業者だけがプレーヤーだったものから、関わる人や要素が増えて「単純なビジネスではなくなってきた」と解説。また、地域の中で再エネを作って使う「地域循環型PPA」を取り上げ、「再エネのプレーヤーが基本的に地域内にいることが重要だという方針を国が示した。こういった形が理想だということを、これまでも私は主張してきたが、国が政策として(地域循環型PPAを)掲げたことで、これから自治体とPPAの話を進めるときに変化が出てくるかもしれない」と語った。

会場セッションや質問コーナー
ブースもにぎわい

このほか、一木氏と北村氏がファシリテーターの上田マリノ氏、ソーラージャーナル編集長嶋長直志とともにエネルギー基本計画と地域の太陽光発電事業の発展について考える会場セッションも行われた。

ソーラーシェアリングの第一人者・馬上丈司氏(千葉エコ・エネルギー株式会社代表取締役、株式会社エコ・マイファーム代表取締役)も急遽登壇!

また、会場にはGoodWeの展示スペースも設けられ、来場者と出展者の情報交換の場となった。

セミナー後には、リアル会場でネットワーク懇親会が開催され、ビジネスチャンスの場として参加者同士が交流する姿も。

次回の「第21回PVビジネスセミナー」は、2022年2月25日(金)に開催決定。 

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