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新設計画が相次ぐ 木質バイオマス発電所

環境コミュニケーションを専門とする、東京大学教養学部客員准教授の松本真由美先生の連載コラム。今回は、太陽光発電につづく再生可能エネルギーの1つとして今注目される、バイオマス発電について。

バイオマス発電の可能性

バイオマス発電所の新設計画が全国各地で相次ぎ、2015年だけでも30ヶ所以上が稼働したようです。バイオマスとは生物由来の有機性資源で、生命と太陽がある限り枯渇しません。また、木質バイオマスなら、燃やすことで発生するCO2は、もともと光合成のために植物が大気から吸収したもの。したがって、焼却しても地球全体のCO2濃度には影響を与えない、カーボンニュートラルな特性を持っています。

また、木質バイオマス発電の燃料は各地で余っている間伐材などのため、山間部での新たな産業として広がりを見せています。ただ、原料の確保が最重要課題でもあります。商社など海外調達できる事業者と組んで輸入材だけを使用する発電所もあり、集荷しやすいところはほぼ開発され、今後は小規模設備か化石燃料との混合が主流になりそうです。

先日、神奈川県川崎市にある国内初の「都市型」バイオマス発電所を見学しました。ここは2011年2月、住友共同電力、住友林業、フルハシEPOの3社が共同で運転開始した、出力3万3000kWの国内最大級のバイオマス専焼発電所です。
近隣のチップ製造会社や食品会社から年間12万トン、隣接するチップ製造工場から年間6万トン、年間合計18万トンの燃料を調達し、一般家庭4万世帯が1年間に利用する電力量を生産しています。

燃料には、都市部で多く発生する建築廃材に加えて、川崎市内や近郊で発生する廃パレットや梱包材からつくられた木質チップ、食品残さ系燃料を活用しています。燃料の安定調達を実現しながら、これまで産業廃棄物として処理されていた資源の循環を図り、エネルギーの「地産地消」を進めているのです。

川崎市の厳しい環境規制をクリアした最新の環境設備が揃い、粉塵、騒音、悪臭の問題が起きないよう周辺環境に配慮されていることも、都市部での発電所として成功している理由のひとつと言えるでしょう。
また、住友林業と住友共同電力は、北海道紋別市で発電容量約5万kWの「山間地型」バイオマス発電事業にも共同で着手しています。2016年12月に稼働予定で、北海道電力などに売電する計画です。

ここは未利用材を活用するため、新たな集荷体制の構造が課題で、地域の協力を得て仕組みづくりに注力しています。一方で、運転とメンテナンスで約12人、チップ製造なども含めると全体で30〜40人の新しい雇用が生まれると見込まれています。
バイオマス発電は、都市や中山間地それぞれの課題を解決しながら地域資源を活かす、地域の新しい産業となる可能性を秘めているのです。

 


松本真由美
東京大学 教養学部 客員准教授
報道番組の取材活動やニュースキャスターを経て、現在は東京大学教養学部での教育活動を行う一方、講演や執筆など幅広く活動中。NPO法人・国際環境経済研究所(IEEI)理事。月刊「エネコ~地球環境とエネルギー」にて「松本真由美の環境エネルギーDiary」連載中。


 

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