再エネは「分散型エネルギー」が世界トレンド!?
2017/01/25
再エネ市場を知るためには、エネルギー市場以外にも目を向けなくてはならない。有識者が語るのは、世界のトレンドを掴む重要性だ。
太陽光と蓄電池が中心の
エコシステムが主流に
日本の太陽光発電は、もともと家庭用からスタートし、2012年のFITから一気に産業用に傾きました。しかし、未稼働の接続契約案件などが片付けば、マーケットは一気に縮小すると見られています。そのため、大手企業が再び家庭向けサービスを積極的に打ち出すなど、家庭用への揺り戻しが進んでいます。海外でも、米テスラが「ソーラーシティ」を合併・統合し、太陽電池と蓄電池を組み合わせた分散型太陽光発電を進めていたり、米アップルが電力会社「AppleEnergy」を立ち上げたりと、分散型エネルギーへ向かうトレンドができています。
太陽光は風力など他の再生可能エネルギーと違い、規模が小さくなってもコストアップ幅が小さく経済性はそれほど落ちません。生産・設置コストがすさまじいスピードで落ちているからです。太陽光の発電コストは海外に比べて日本はまだ高い方ですが、それでも既存の電気料金を下回りつつあります。海外では今や既存の電源コストまで下回りつつあり、それがさらに加速しています。
しかし、太陽光プラス蓄電池という世界の流れのなかで、日本のエネルギー政策はアンバランスです。トヨタ、ホンダ、経産省は電気自動車ではなく水素自動車に力を注いでおり、日本と世界が描くロードマップが大きく違っているのです。
インターネットを通じてモノやサービスを個人間で貸し借りしたり、企業から借りたりする「シェアリングエコノミー」や、人工知能(AI)が人間の脳を超える「シンギュラリティ」(技術的特異点)、さまざまなモノがインターネットでつながる「IoT」などと一体化してエネルギーは進化しており、再エネだけでは捉えられない時代です。そんな大きなベクトルから日本のエネルギー政策は外れている気がします。
テスラのイーロン・マスク代表が2016年7月に出したマスタープランが革新的だと話題になりました。近未来的でリアリティがあり、時代とテクノロジーのトレンドに乗っている、というよりむしろトレンドを作り出しています。彼の視線の先には、電気自動車を中心としたエコシステムの構築があり、スケールとダイナミズムを比較すると水素は縮小する一方でしょう。
地産地消の積み上げが必要
経産省が新電力に原発の廃炉費用を負担させるという報道もありましたが、それはおかしな話です。そもそも原発が安価だと言っていたわけで、できないなら原発部門を国有化して負債から切り話すなど大規模な手術をしなければいけません。
そんな中で我々一般市民ができるのは、小規模分散型エネルギーを推し進めることです。地域コミュニティにしろ、ビジネスにしろ、変化を作って社会にインパクトを与えなければなりません。地産地消のエネルギーを小さなものからひとつずつ積み上げていくのが必要な時期です。政治の変化はその先に見えてきます。
認定NPO法人 環境エネルギー
政策研究所(ISEP) 所長
飯田哲也氏
自然エネルギー政策の革新と実践で国際的な第一人者。持続可能なエネルギー政策の実現を目的とする、政府や産業界から独立した非営利の環境エネルギー政策研究所所長。Twitter: @iidatetsunari
文/大根田康介
『SOLAR JOURNAL』 vol.19より転載