政策・制度

2027年以降の電力ビジネスに必要な「FIP転+蓄電池」という考え方|電力支援廃止後に注力すべき3つの成長分野①

2027年度以降、低圧を含むすべての地上設置型の新規・事業用太陽光発電がFIT/FIP制度の支援対象外となる。太陽光業界が大きな転換期を迎えるなか、さらなる導入拡大に向けて、今後はどの分野に注力していくべきなのか。本記事では、支援廃止後の新たな成長分野として期待される「FIP転+蓄電池」「コーポレートPPA」「屋根設置太陽光」という、今後のビジネスを牽引する見逃せない3大アプローチを解説する。

 

<目次>
1.2027年度以降も 「FIP転」は可能
2.基準となる価格と期間は FITから引き継がれる
3.特例措置はなくなり 義務とコストが発生する
4.FIP転は新規より ファイナンスが厳しい
5.FIP転の意義と アグリゲーターの重要性
6.「FIP転+蓄電池」 なら蓄電所より参入が容易
7.発電事業者を超えた プレーヤーになるために
【全3回特集】FIT/FIP制度への今後のアプローチについて3回に分けて解説します。
 
第1回:需給調整市場の多面的見直し
第2回:コーポレートPPAでコスト変動の少ない電気を仕入れる
第3回:ペロブスカイトの社会実装に要注目   

 

2027年度以降も
「FIP転」は可能

 

 
FIT/FIPの見直しは、新規認定に関するものだけではない。出力抑制の順番を定めた優先給電ルールについては、既存の電源を区分し、FIP電源より先にFIT電源に出力抑制をかけるよう変更されている。九州地方をはじめ、出力抑制の多い地域では、これによる既存FIT電源の売電収入ダウンは避けられない。
一方で、FIP電源には、卸電力市場だけでなく、蓄電池を併設して需給調整市場で収益を上げる道も開かれている。認定時期と運用次第では、FIP電源の方がFIT電源より稼げるケースも少なくない。
また、2026年度からは、低圧リソースも需給調整市場に参入できるようになった。こうした状況を受けて、FIP制度を活用した太陽光併設蓄電池が、規模の大小を問わず注目を集めている。
2027年度以降、新規の地上設置型事業用太陽光はFIT/FIPの対象外となるが、既存のFIT電源をFIP電源に切り替える「FIP転」は今後も認められる。FIPは、再生可能エネルギーの市場統合に向けた過渡的な支援制度であり、国としてもFITからFIPへの移行は引き続き推進したい考えだ。
 

基準となる価格と期間は
FITから引き継がれる

 
FIP転とは、FIT制度のもとで固定単価で売電していた既存電源を、FIT期間の途中で、市場連動型の支援制度であるFIPによる運用へと切り替えること。手続きは、「FIP移行認定申請」により行われる。
FIPは、再エネ電源に対する投資インセンティブを確保しながら、電力市場への統合を図ることを目的に2022年4月から始まった。再エネ発電事業者が卸電力市場などで売電したとき、その売電価格に対して一定のプレミアム(補助額)を上乗せすることで再エネ導入を促進する。
FIP転にあたっては、プレミアム算定の基礎となる基準価格がどう設定されるかが気になるところだが、これについてはFIT認定時の調達価格がそのままFIP基準価格として適用されることになる。交付期間についても、FIT残存期間がそのままFIP制度の適用期間として引き継がれる。
 

特例措置はなくなり
義務とコストが発生する

 
FITとFIPの違いは、「固定価格か市場連動か」という価格形成の仕組みにとどまらない。FITにおいては、全量買取が約束され、同時同量対応が免除される(インバランス特例)など、発電事業者は発電さえしていれば安定した収入を得ることができた。
しかし、FIPにおいては、それら特例措置の多くが廃止または限定される。買取義務者はいなくなり、発電事業者側で販売先を確保しなければならない。同時同量対応も原則として発電事業者側の責任となり、発電計画の提出や需給管理も求められる。そのうえで、市場に応じた充放電や取引を行わなければ収益アップは見込めない。
 

FIP転は新規より
ファイナンスが厳しい

 
新規にFIP認定を受ける場合と、FIP転の場合では、実務上の留意点が異なることも理解しておく必要がある。
まず、ファイナンス面では、新規プロジェクトが「借り手優位」で複数の貸し手と交渉しやすいのに対し、FIP転は現状の融資条件の変更が必要となるため「貸し手優位」になりやすい。FIP転に伴う蓄電池の併設やリパワリングなど、新規融資が必要な場合には注意が必要だ。
また、需要家からは、FIP転電源よりも新設電源の方が、「追加性」の点で高く評価される。
 

FIP転の意義と
アグリゲーターの重要性

 
FIP転はリスクを伴う選択である。収益変動、実務負担、制度理解いずれも無視できない。しかし、FIP転は、将来への布石としても大きな意義がある。
将来的に、新規の地上設置型事業用太陽光は市場対応が必須となる。既設電源を用いてFIP運用に取り組むことで、市場取引、同時同量対応、インバランス管理といった実務経験を、プレミアムを得ながら蓄積することができる。その経験とノウハウは、将来の事業競争力に直結する。
とはいえ、FIP転に伴って生じる新た業務を、発電事業者だけでカバーすることは難しい。そこで、登場してくるのが「アグリゲーター(VPP事業者)」だ。アグリゲーターは、電力市場での運用や販売先の確保を行い、売電実務を代行する。どんなアグリゲーターをパートナーに選ぶかが、極めて重要となる。
前述のファイナンスに関しても、信頼度の高い大手アグリゲーターと組むことでクリアできる場合もある。収益を安定化させる疑似FITスキームの提供を通じて、金融機関が求める事業予見性を担保してくれるアグリゲーターも存在する。
 

「FIP転+蓄電池」
なら蓄電所より参入が容易

 
FIP転後の太陽光発電では、市場価格変動、出力変動、インバランス対応が事業の成否を左右する。これらの課題に対応するためにも「蓄電池」の併設は重要だ。
蓄電池の第一の用途は、時間帯による価格差を活用したアービトラージ(裁定取引)にある。日中の価格下落時に充電し、需要が高まり価格が高騰する夕方以降に放電することで、収益アップを図ることができる。また、出力抑制時には捨てられていた電力を吸収し、後で売電することで発電ロスを回避できる。さらに、需給調整市場への参入により、投資回収の早期化を図ることが可能となる。
系統用蓄電池ビジネスへの参入という意味でも、すでに系統接続されている太陽光発電所を使った「FIP転+蓄電池」は有効だ。新規に単独の系統用蓄電所を設ける場合では、系統接続のために長い期間とコストを要するケースが多い。一方、「FIP転+蓄電池」の場合には、既存の系統枠を活かせるので比較的容易にスタートすることができる。
また、従来は蓄電池併設に関する書類をFIP移行認定が下りてから提出する必要があったが、昨年9月からはFIP移行申請と同時に提出できるようになった。これにより、審査期間も短縮されている。
 

発電事業者を超えた
プレーヤーになるために

 
FIP転は、FITの延長線上にあるものではない。それは、再エネ発電事業者が市場のダイナミズムを生かし、自らの創意工夫で収益を伸ばし、次の時代へとステップアップしていくための見逃せない選択肢だ。
「どの電源を、どの地域で、どのスキームで運用するか」を見極めることは、もはや制度対応ではなく、経営戦略そのものと言ってよい。アグリゲーションや蓄電システムが進化し、運用ノウハウがアセットの価値を左右する状況にあって、「FIP転+蓄電池」は再エネ発電事業者が自律的なエネルギープレーヤーになっていくための試金石だ。
 

【全3回特集】FIT/FIP制度への今後のアプローチについて3回に分けて解説します。
 
第1回:需給調整市場の多面的見直し
第2回:コーポレートPPAでコスト変動の少ない電気を仕入れる
第3回:ペロブスカイトの社会実装に要注目   

 

DATA

取材・文/廣町公則


SOLAR JOURNAL vol.57(2026年57号)より転載

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