編集部からのお知らせ

’おまけ扱い’の再エネが 気候変動の救世主に! 相変わらず石炭に頼る日本。

2009年頃は気候変動対策のおまけ扱いだった再エネ。2015年には救世主として登場し、世界は太陽光発電と風力発電に注目している。ところが、日本ではいまだに石炭に頼っているのだ。そんな日本の課題をエネルギー政策研究所(ISEP)所長・飯田哲也氏が紐解く。

おまけ扱いの再エネが
気候変動の救世主に

気候変動への取り組みが世界的に盛り上がっています。その理由は、太陽光発電と風力発電などの再生可能エネルギーの普及です。

2009年、デンマークの首都コペンハーゲンで国連気候変動サミットが開催されました。

実は地球温暖化を考える上で、世界では日本と米国が問題児と見られていました。先進国なのにまともに取り組まなかったからです。

当時、日本では民主党政権下で福山哲郎氏が野心的に気候変動に取り組みました。また米国では、オバマ氏が当選したばかりで、オバマケアと地球温暖化対策の二本柱を掲げ意気込んでいた頃です。こうした中、問題児の2ヶ国が多少は真っ当な方向に進み始めました。

しかも、世界で最も環境先進国だったデンマークでのサミットだったので、みんな問題解決を期待しましたが、結局は何も収穫がないまま終わってしまいました。



時が経ち、2015年に第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)が開かれ、パリ協定が締結されました。この時、オバマ政権はレームダックで米国の主導は期待できない。しかも日本では気候変動対策に後ろ向きな自民党・安倍政権が誕生していました。

そんな中、中国やインドも経済的に大きくなり、気候変動の解決は難しいだろうと見られていたにもかかわらず、パリ協定という形でCOP21は成功をおさめました。

その理由は、再エネが石炭火力や原子力発電などよりも、はるかに経済合理性が高いことが世界各国で証明されていたからです。

2009年の時は、地球温暖化のソリューションとして再エネはおまけ扱いでした。しかも、二酸化炭素(CO2)排出量を抑制する政策ばかり。規範を重んじるヨーロッパでは受け入れられましたが、カウボーイ型経済の米国、日本経済団体連合会(経団連)が牛耳る日本では受け入れられなかったのです。

なぜなら、二酸化炭素排出量を減らせば、それだけ経済が後退してしまうと思い込む単純思考の人たちが多かったからです。

CO2に着目すると気候変動対策は成功しない。そんな政治の歴史がずっとありました。


経済合理性で主客転倒
石炭に頼る「先進国」

そこに救世主として登場したのが再エネです。2015年は再エネが経済的に急成長を遂げた直球ど真ん中の時期で、「指数関数的に急成長する太陽光と風力だけが、唯一、気候変動に間に合う可能性がある」という期待が高まっていました。その後、日本でも、事業運営を100%再エネでまかなう「RE100」に加盟する日本企業が増えてきました。

かつてはおまけ扱いだった再エネの飛躍的な成長に、気候変動に取り組む人たちがのっかったという力学です。完全に主客転倒した訳です。

世界的には太陽光発電と風力発電が最も安い電源だと認識されています。しかもクリーンで純国産、地域熱源にも使えます。

しかし、日本では相変わらず、気候変動への取り組みはどうしようもないのが現状です。

なぜなら、石炭火力発電所を作りまくっている唯一の「先進国」だからで、世界的にも評価が低い。G20でも最下位レベルです。

これは、経済産業省を中心とする経団連、電力会社、御用学者が共有しているエネルギーコンセプトが、あまりにも古すぎるところに問題があります。しかも火力や原子力を基幹エネルギーの土台に置いてしまっています。

国際的なルールにきちんと従わない政治、行政、財界の中枢が変わらない限り、日本では気候変動への取り組みは進まないでしょう。


4つのポイントで比べるCOP15/COP21

コペンハーゲン合意(COP15)

①世界全体の気温の上昇が2度以内へ
②先進国は2020年の削減目標を、途上国は削減行動を2010年1月31日までに事務局に提出する。
③先進国は、途上国に対する支援として、2020年までには年間1000億ドルの資金を共同で調達する。
④2015年までに合意の実施に関する評価の完了を要請する。

→合意には至らなかった

パリ協定(COP21)

①世界全体の気温の上昇が1.5℃以内へ
②主要排出国を含むすべての国が削減目標を5年ごとに提出・更新する。
③先進国が引き続き資金を提供することと並んで途上国も自主的に資金を提供する。
④5年ごとに世界全体の状況を把握する仕組みを実施する。

→すべての国が参加し、公平かつ実効的な法的枠組みとして採択された

※上記は環境省HP より編集部が抜粋、修正して作成。

PROFILE

認定NPO法人 環境エネルギー
政策研究所(ISEP) 所長

飯田哲也氏

自然エネルギー政策の革新と実践で国際的な第一人者。持続可能なエネルギー政策の実現を目的とする、政府や産業界から独立した非営利の環境エネルギー政策研究所所長。
Twitter:@iidatetsunari



SOLAR JOURNAL vol.31(2019年秋号)より転載

関連記事

太陽光関連メーカー一覧

アクセスランキング

  1. 【 終了】2024年4月23日(火)「第29回PVビジネスセミナー」~ 市場動向/PPA・蓄電池の最適化モデル ~...
  2. 太陽光発電所 銅線ケーブルの盗難被害が相次ぐ 銅の価格上昇が背景に
  3. 【受付中】5/28火 ケーブル盗難のリアルを知るための「太陽光のリスク管理」セミナー開催...
  4. 太陽光パネルの増設・更新を促進! 2024年度にルール見直し
  5. 市場運用者・広域機関に聞く、長期脱炭素電源オークションが目指すものとは?...
  6. 【2024年太陽光ビジネス】再エネは「長期安定電源」になる! 事業環境の整備に必須のリパワリング...
  7. 経産省、新電力ビジネスの経過措置「部分供給」の見直し案 オフサイトPPAへの影響は?...
  8. 【地域共生成功モデル紹介】ゼロカーボンビレッジ創出&市民参加型の取り組み...
  9. 太陽光発電所の盗難被害が急増 外国人グループの犯行か
  10. 東京都の2024年度系統用蓄電池導入事業 特高5件、高圧6件を採択予定
太陽光業界最新ニュース

フリーマガジン

「SOLAR JOURNAL」

vol.48 | ¥0
2024/01/31発行

お詫びと訂正

ソーラー電話帳 SOLAR JOURNAL メディアパートナーズ