注目キーワード

English 中文 日本語

スマート関連

エネルギーの未来を拓くカギは『柔軟性』にあり

蓄電池だけではない
柔軟性の確保手段

日本ではVRE増加の対処法として蓄電池しか考えられない人が多過ぎる。そういう方々に限って、蓄電池は高くてペイしないと言い、短絡的に出力制限を主張する。

柔軟性確保の手段は多岐にわたる。コスト論から言うと、2年前のIEA(国際エネルギー機関)レポートで示されたように、先進国でVREを30%まで入れるのは大きな投資なしに可能というのが常識である。送電線を使った電力の地域間やり取りや既存の大型揚水発電所の利用、デマンドレスポンスに代表される需給管理などである。これらもすべて柔軟性の方策となる。

より広く先進的な柔軟性
『セクターカップリング』

今、ヨーロッパで盛んに議論されている柔軟性は、『セクターカップリング』である。この言葉もインターソーラーで何度も聞かせられることになった。

ご存知のように、最終的にエネルギーは、電気だけでなく熱や交通として使われる。この3つのセクター間でエネルギーを融通しようというのがこのセクターカップリングである。
例えば、風力発電の電気が余った時、蓄電池に貯めるのではなく、温水などの熱に変えて使ったり貯蔵したりすることが「電気⇒熱」のカップリングとなる。電熱線で水を沸かすという単純なものからヒートポンプを使った方法もあり、後者はデンマークで実用化されているのを視察した。

一方、「電気⇒交通」はどうかといえば、EVの急拡大が思い浮かぶはずである。フランスでは2040年までにガソリン、ディーゼル車禁止を打ち出した。ドイツ、オランダなどの国々もEVにシフトする方針を打ち出し始めた。ブルームバーグニューエナジーファイナンスの最新の調査では、2040年にはハイブリッドを含むEV車が新車の半分を超えるとしている。一方で、EV(Vehicle・自動車)だけではなくEM(Mobility・移動手段)としてとらえる向きも多く、ドイツでは電気自転車の普及も進んでいる。
強調しておきたいのは、柔軟性もセクターカップリングもいずれもビジネスになるということである。過去の成功体験だけに捉われていると有望なチャンスを失うことになる。

北村和也 Kazuya Kitamura

エネルギージャーナリスト。日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表。エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
HP:日本再生可能エネルギー総合研究所


『SOLAR JOURNAL』vol.22より転載

< 12

関連記事

太陽光関連メーカー一覧

アクセスランキング

  1. 再エネ促進区域の設定、9市町のみ 環境省が支援策検討
  2. 【2023年度・事業用】太陽光発電の導入に使える国の補助金3つ
  3. 変圧器製造の鶴田電機、新工場は「完全自家消費」へ! 導入する蓄電システムとは?...
  4. 「ノンファーム型接続」とは? 再エネ拡大のカギ握る送電ルール見直し
  5. シリーズ「太陽光義務化元年」2023年度の再エネ賦課金単価は1.40円、減額によるPPA提案への影響は?...
  6. 「バーチャルPPA」とは? その仕組みやメリット、制度の動向を解説!
  7. 【参加無料】7月7日(金)「第26回PVビジネスセミナー」~地域共生/PPA/屋根設置~...
  8. ドイツの脱原発達成と日本の脱炭素の将来
  9. シリーズ「太陽光義務化元年」屋根設置は12円 FIT・FIP買取価格が決定
  10. これが日本最大の風力発電所だ!出力80MW/年間発電量1億5000万kWh
太陽光業界最新ニュース

フリーマガジン

「SOLAR JOURNAL」

vol.45 | ¥0
2023/4/29発行

お詫びと訂正

ソーラー電話帳 SOLAR JOURNAL メディアパートナーズ