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電気代は本当に安ければいいのか? ~裏に潜む経済の疲弊と弊害~(前編)

電力の小売り完全自由化により電気料金の値引き競争が止まらない。需要者にとってはメリットがあるものの、その裏では弊害が生じている。地域電力の今後を考えるために、どのような視点が必要か。エネルギージャーナリストの北村和也氏が、地域電力の本質を解くコラム第8回(前編)。

» 前回(第7回)の記事はコチラ

地域新電力の魅力と課題

このところ長い期間にわたって、本コラムでは地域新電力にまつわる各種の実例や地域での取り組みなどを紹介してきた。地元が主体となったり、自治体が協調して取り組んだりする新電力が、地域の活性化につながることを確信しているからである。まだまだ規模は小さいが、紹介してきた地域または自治体新電力には隠れた実力がある。また、それを束ねようとする協議体(地域活性エネルギーリンク協議会)の可能性は大きい。

一方、世の中で喧伝されるのは、新電力の弱みばかりに見える。私が行う講演やセミナーでも「新電力の経営は厳しいでしょう」、「新電力のリスクを回避するのは難しいのでは」との声をよく聞く。

背景にあるのは、電気料金の値引き競争、安値合戦である。実際に、旧一般電気事業者による高圧案件を中心とした取り戻しや、旧一般電気事業者同士の熾烈な争いが止まらない。F-Powerや東急パワーサプライの例に見るように、無理な安値競争は必ずしも強力といえない新電力に深刻な影響をもたらした。

この一年間近く、いつも私の頭の中に浮かぶ大きな疑問符がある。それは、「電気代は安ければいいのか」である。


「電気代は安ければいいのか」
という疑問

2016年4月に始まった電力の小売り完全自由化では、当初から電気代が安くなるということが中心テーマとして取り上げられてきた。もちろん、これまで独占状態だった一般家庭など低圧にまで自由化の恩恵が達すれば、料金の値下げが広くもたらされるというのは、客観的な事実であろう。

ところが、大小、玉石混交とはいえ、600ものいわゆる新電力が参入し、旧一般電気事業者がこれまでの地域をまたいで営業を強化する中で、異常な値引きや電力の卸売市場に対する不可解な力さえ感じ取れる事態などを招いてしまっている。

この事態を招いた原因には、電気代が安いことしか価値を示せない多くの小売電気事業者の存在がある。そうは言っても、「電気に色はなく、同じ価値だから差別化しようがない」という声を上げる人が多いのもわからないではない。

しかし、「電気代は、本当に安ければいいのか」という疑問を一度挟んでみてほしい。特に関西で聞かれる「電気代が半分になった」という驚きの値下げ、市場の乱高下が天候の変化だけで説明しきれないことなど、おかしな現象を引き起こす要因の一つに、『安値至上主義』がないだろうか。

安値は本当にいいことなのか

確かに、新電力同士の競争で少なくない敗者が出始めている。大手の新電力や旧一般電気事業者も楽に競争できている訳はない。一方、電気を使っている需要家が安くなり喜んでいることは良いことで、自由経済の社会では当たり前だという主張がある。もちろん、基本的な意味では間違ってはいない。しかし、次の例を見ていただきたい。

ある県では、電力供給する小売電気事業者を決めるのに、あるユニークなやり方を採用している市町村が多い。半数以上でこの方式を取り入れているので、流行っていると言ってもいいかもしれない。

『ESP方式』がその名で、由来はEnergy Service Provider(エネルギー・サービス・プロバイダー)からであるが、実際のESPとはまったく似つかないものである。ESP方式は、本来自治体が決める入札などを行わず、指定した民間企業が『交渉代理人』として契約締結までを橋渡しする。


地域からのエネルギー費流出と
『電気の質』

実質的な入札代行ではないか、自治体の怠慢ではないか、など疑問点は多い。

しかし、ここでは、その結果がどのように地域に影響を及ぼすかに焦点を当てたい。細かく具体的な方式の内容は書かないが、この方式で『交渉代理人』を採用した市町村(実際には市)では、ほとんどの電力供給がエリア外の旧一般電気事業者か関連する新電力、または大きな資本の新電力に決まっている。エリア内の旧一般電気事業者は、最初から交渉対象にもなっていない。

いったん話を変えてみる。最近、『エネルギー費の流出』という概念がだんだん広がってきている。エネルギーに関心のある自治体では、どうやって地元が払っている電気代などのエネルギー費を減らしたり、流出しないようにしたりするかを考え始めている。いわゆる、エネルギーの地産地消がその切り札であり、私はそのために地域の資本による発電所を作ろう、地域や自治体新電力を作りましょう、と声を掛けている。

ここでは、電力を単なる同じ商品というだけでは見ていない。地元で作られたものを買って使うことによって、お金を少しでも地域に残そうと考えて行動する。つまり、値段以外の価値、一種の『電気の質』もプラスして考えようということでもある。

また、最近急激に広まっているRE100のことを考えれば、再エネによる電気というのも値段の安さとは違った価値である。これも一種の電気の質といってよいであろう。

 

プロフィール

エネルギージャーナリスト
日本再生可能エネルギー総合研究所(JRRI)代表

北村和也

エネルギーの存在意義/平等性/平和性という3つのエネルギー理念に基づき、再エネ技術、制度やデータなど最新情報の収集や評価などを行う。
日本再生可能エネルギー総合研究所公式ホームページ

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