太陽光発電

インドが太陽電池モジュールのセーフガード課税を実施、影響は短期的?

先進国から輸入される太陽電池セル・モジュールに、25%のセーフガード関税を課すことを決定したインド。国内人口が増加により電力の供給方法が喫緊の課題となっている中で、国が示す貿易政策とは? 資源総合システムの貝塚泉氏が、世界の再エネ情勢を読み解くコラム第1回(後編)。

前編:「太陽電池モジュールを巡る、米国における”貿易摩擦”と”輸入制限”」

インドにおける貿易摩擦

太陽電池セル・モジュールへのセーフガード措置

インド財務省は、マレーシア、中国および先進国から輸入される太陽電池セル・モジュールに2018年7月30日から初年度25%のセーフガード関税を課すことを決定した。期間は2年間である。

同措置の発動を巡っては、国内開発事業者からの訴えを受けたオリッサ州高等裁判所により一時発動の延期が命じられたが、同年9月12日にインド最高裁判所によりこのセーフガード差し止め命令は撤回され、措置は発動された。マレーシアと台湾が世界貿易機関(WTO)を通じて同措置に関する二国間協議を要請している。

インドを巡る
その他の貿易摩擦

インドは、マレーシア製太陽電池モジュール用強化ガラスの反ダンピング関税(AD)・反補助金関税(CVD)調査ならびに、中国、マレーシア、韓国、タイ及びサウジアラビア製太陽電池モジュール用EVAフィルムのAD・CVD調査も行っており、2018年9月現在で調査中である。中国製太陽電池モジュール用強化ガラスへのADは2017年8月に5年間の予定で発動している。

課税の適用期間が短いために長期的な影響はほとんどないと思われるが、インド市場の短期的な停滞が懸念される。2018年4月にインド新・再生可能エネルギー省(MNRE)は、セーフガード、反ダンピングその他の課税などは「法律の変更」として扱われ、開発事業者は課税額をオフテイカー(売電先)に転嫁する権利があると競争入札のガイドラインにおいて定めている(パススルー条項)。開発中の案件の多くはこのガイドライン制定前に入札が実施されており、このパススルー条項が適用されるかどうかは不明であった。

こうした状況のなかで、8月末にインド電力省は、印・中央電力規制委員会(CERC)に対し、物品サービス税(GST)やセーフガード措置等で太陽光発電プロジェクトの開発コストが上昇する場合、上昇分を期間限定で消費者の電力料金に上乗せするよう指示した。これにより、既存のプロジェクトに対するパススルー条項への懸念は取り除かれたといえるが、行政手続きの煩雑さなどの障壁は残されている。

セーフガード課税は短期的な措置であるために、インド国内の製造企業が恩恵を受ける可能性は低いとの意見もでているが、インド政府は、国内での太陽電池モジュール生産の拡大を狙っている。

2018年6月に印・Solar Energy Corporation of India(SECI)は、インドにおける生産能力計5GW/年の太陽電池工場の誘致に向けた入札への関心表明(EOI)を募集した。この入札の落札者は、工場の生産能力の2倍の規模に相当する系統連系形太陽光発電プロジェクトの電力購入契約(PPA)の締結が保証されるため、製造企業がプロジェクト開発を行えば、2年分の太陽電池モジュールの出荷先が事前に確保されることになる。PPAの期間は25年で、上限価格は2.93インド・ルピー/kWh(4.4米セント/kWh)である。太陽光発電プロジェクトは、建設・所有・運営(BOO)の形式が採用され、4年間にわたり段階的に建設することも可能である(ただし総容量の25%以上を毎年建設する必要がある)。この入札に対してMNREは、54社が応募したことを報告している。

普及障壁の
早期の解消が望まれる

インドの2017年における太陽光発電システムの新設導入量は9.1GWであり、中国、米国に続いて世界第3位であった。2018年は最大で12GWの導入が期待されていたが、不透明性が生じたことで、市場の伸びはこれまでのところ鈍っている。2017年に国連が刊行した「世界人口展望」によれば、インドの人口は2024年に中国を上回る見通しである。

電力需要増への対応と石炭火力の再生可能エネルギー源への転換を大きな政策課題として掲げるインドは、世界の太陽光発電市場を長期的に牽引していく国のひとつである。セーフガ―ド措置が発動されたとしてもその影響は短期的と考えられるが、普及障壁の早期の解消が望まれる。


文/資源総合システム 調査事業部 部長 貝塚泉

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