編集部からのお知らせ

「売る」より「使う」がお得な時代が到来|低圧なら自家消費!

工場や倉庫だけではない
自家消費型太陽光の設置場所

自家消費型太陽光発電システムを導入するのに適した場所は、工場や物流倉庫、商業施設だけではない。ある程度の電気を使う施設なら、どんなところでも対象となる。全量売電が基本的に不可とされる医療法人や社会福祉法人でも、自家消費型の太陽光発電システムなら設置することが認められる。

コスト削減効果に加えて、非常用電源としてBCP(事業継続計画)に役立ち、CSR(企業の社会的責任)向上にもつながる自家消費型太陽光発電。地域との共生を考え、環境に配慮することが当たり前になってきている今日、自家消費型太陽光発電を導入することは企業価値の向上にも直結する。それは、いま国を挙げて取り組もうとしている脱炭素社会の実現にも貢献するものだ。手付かずの屋根があるのなら、太陽光パネルの設置をぜひとも検討してみたい。

自家消費型だけが対象の
補助金や優遇措置

国や地方自治体も、自家消費型太陽光発電の普及に力を入れており、それぞれに支援制度を設けている。導入コストを補助してくれるものや、税額控除が受けられるものなど、いろいろある。

例えば、環境省は、「サプライチェーン改革・生産拠点の国内投資も踏まえた脱炭素社会への転換支援事業」として、脱炭素化の推進や防災に役立つ自家消費型太陽光発電設備などの導入企業に補助金を出す。太陽光発電設備や建物の整備などが対象で、事業期間は原則3年間、補助金上限は150億円。大企業は必要経費の2分の1以内、中小企業には3分の2以内を補助する。企業グループでの申請は4分の3以内になる。

中小企業庁では、資本金1億円以下の法人を対象に、自家消費型太陽光発電の導入に対する優遇措置を設けている。太陽光発電システムの取得価格を当期100%即時償却できるというものだ。

東京都では、「地産地消型再エネ増強プロジェクト」として2億9960万円(2020年度)の予算をつけている。来年度以降も継続される予定だ。また、神奈川県では、県内の中小企業を対象に「自家消費型太陽光発電等導入費補助金」を設けている。他にも、独自の支援制度をもつ自治体は多いので、お住いの地域の役所に問い合わせてみると良いだろう。

自家消費型導入事例

グループホーム(医療法人運営)

<太陽光パネル14kW(パワコン11kW)+蓄電池11.2kWh>
施設運営の電源として導入。

タクシー会社


<太陽光パネル10.14kW(パワコン11kW)+蓄電池7.2kWh>
24時間業務の電源として導入。

公共施設


<太陽光パネル15kW(パワコン11kW)>
敷地内耕作地に営農型太陽光発電を導入。施設事務所等で自家消費。

食品加工会社


<太陽光パネル54.4kW(パワコン50kW)>
24時間稼働の冷凍冷蔵庫あり。

資料提供:株式会社パートナーズ(宮城県気仙沼市)

導入支援制度(一例)

東京都:地産地消型再エネ増強プロジェクト
都内に地産地消型再生可能エネルギー発電などの設備または再生可能エネルギー熱利用設備を設置する事業者に対して、当該設備の設置経費の一部を助成する。

●事業実施年度 
令和2年度から令和5年度まで ※公募は毎年実施。
●予算額
2億9,960万円(令和2年度)
●申請受付期間
令和2年8月3日から令和3年3月31日まで
●助成対象事業
再エネ設備を都内に設置し、設備から得られたエネルギーを都内の施設で消費する事業

●助成対象設備
(1)再エネ発電等設備(太陽光発電、発電設備と併せて導入する蓄電池等)
共通要件:次のすべての要件を満たすものとする。
①電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(平成23年法律第108号)第9条第3項の認定を受けない自家消費を主たる目的としたもの(固定価格買取制度において認定を受けないもの)であること。
②再生可能エネルギー発電設備の年間発電量が、発電した電力の需要先の年間消費電力量の範囲内であること。
(2)再エネ熱利用設備(太陽熱利用、地中熱利用、バイオマス熱利用等)
共通要件:次の要件を満たすものとする。
再生可能エネルギー熱利用設備の年間発熱量が、当該熱を供給する施設の年間消費熱量の範囲内であること。

●助成金額
(1)中小企業等:助成対象経費の3分の2以内(助成上限額:1億円)
(2)その他:助成対象経費の2分の1以内(助成上限額:7,500万円)


出典:東京都地球温暖化防止活動推進センター

 

風力発電にも自家消費の動き
低圧風力発電機の開発・実証はじまる

ゼファー、リコージャパン、シルフィードが共同で
自家消費が可能な再生可能エネルギーは、太陽光発電だけではない。ゼファー、リコージャパン、シルフィードの3社は1月18日、定格出力50kWの低圧風力発電機を新たに開発し、太陽光発電と並ぶ自家消費向け電源として、風力発電を普及させていくことに共同で取り組むと発表した。

このプロジェクトは、環境省の「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」の一つとして採択されたもの。「低圧風力発電機に関する技術開発・実証事業」を通して、地域防災、送配電インフラの独立化および再エネ自家消費への活用可能性を検証するという。昨今、取り組みがすすむ自営線や既存配電網を活用した小規模の独立系電力網(マイクログリッド)を構築する動きを踏まえ、地産地消型エネルギーシステムの中に低圧風力発電機を組み込んでいきたい考えだ。 

3社は、こうしたニーズに合致する風力発電機を2023年4月頃までに開発し、電力の安定供給や静粛性、経済合理性などを検証する。なお、各社の役割は以下のとおり。小型風力発電機メーカーであるゼファーが「風車の全体設計」「翼の設計」「フィールド試験」「風車制御のアルゴリズム構築」などを担当。リコージャパンが「AIを活用したメンテナンス支援ツール」を開発。シルフィードが「翼の生産」を担う。 

風力発電は、2018年度にFITにおける小型風力(20kW未満)の区分が撤廃され、小規模設備への関心は薄れていた。当プロジェクトは、低圧風力発電に改めて目を向けさせるものとなるだろう。再エネ電源の選択肢が増えることは歓迎だ。地域特性や事業者のニーズに合わせて、最適な自家消費システムが構築されることを期待したい。

地産地消型エネルギーシステムのイメージ


取材・文/廣町公則

SOLAR JOURNAL vol.36(2021年冬号)より転載

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