注目キーワード

English 中文 日本語

太陽光発電

「バーチャルPPA」とは? その仕組みやメリット、制度の動向を解説!

再エネ電力などの調達方法として関心が寄せられる「バーチャルPPA」。PPAとは発電事業者と需要家が直接契約する電力調達の仕組みだが、バーチャルPPAは通常のPPAとどのように異なるのか? 今後の制度の動向も交え、わかりやすく解説する。

バーチャルPPAは環境価値を取引
電力の調達先はそのままでOK

そもそもPPA(Power Purchase Agreement、電力購入契約)とは、発電事業者と需要家による直接の電力の売買契約のことだ。契約期間を長期とすることで、双方にとって見通しを立てやすくするメリットなどがある。企業によるPPAを「コーポレートPPA」と呼ぶ。

コーポレートPPAは、契約の対象となる発電所がどこに位置するかによって「オンサイトPPA」と「オフサイトPPA」に分類される。オンサイトPPAとは、需要家の敷地内に建設した発電所を活用するもので、屋根置きの太陽光発電を利用するケースなどが多く見受けられる。(参考:キリンHD、すべての国内工場にPPAモデル導入へ。合計11MW超で国内最大級に|SOLAR JOURNAL

一方で、オフサイトPPAは需要家の敷地の外に建設した発電所から電力を調達する。さらに、オフサイトPPAは、電力と環境価値を一緒に取引する「フィジカルPPA」と環境価値のみを取引する「バーチャルPPA」に分けられる。

環境価値とは、CO2を排出しない方法で発電された電力がもつ、環境に負荷を与えないという価値のことだ。この環境価値を、取引に適した形に変えたもののひとつが「非化石証書」である。

(出典:自然エネルギー財団『日本のコーポレートPPA 契約形態、コスト、先進事例』)

バーチャルPPAでは、需要家はこの非化石証書だけを新たに購入することができ、電力の調達先を変更する必要はない。このように、電力を伴わない環境価値のみの取引であることから、バーチャルPPA(仮想の電力購入契約)と呼ばれる。

一方で、発電事業者は、発電した電力をすべて市場に売却する。この場合、通常であれば売電収益は市場価格によって変動する。しかし、バーチャルPPAでは、発電事業者の収益が一定になるように、小売電気事業者などが固定価格と市場価格との差額を精算する。つまり、発電事業者にとってのバーチャルPPAのメリットは、売電収益を長期にわたり固定化できる点にある。

電源の新設促すコーポレートPPA
発電事業者との直接取引も解禁へ

このようなメリットのあるバーチャルPPAだが、現在、日本では発電事業者と需要家との直接の契約は認められていない。そのため、上図のように小売電気事業者を介在させて取引する必要がある。

一方で、コーポレートPPAには、発電事業者・需要家の将来の見通しを立てやすくすることで、電源の新規投資を促す効果も期待できる。そのため、経済産業省は新設の非FIT再エネ電源によるコーポレートPPAに限り、発電事業者と需要家との直接取引を認めることを検討している。

2月17日の経産省の第62回 制度検討作業部会では、発電事業者・需要家の直接取引の条件として、新設の非FIT再エネ電源に加え、卒FIT電源を加える案が提示された。また、新設の非FIT再エネ電源については、2022年度から運転を開始するものを対象とする方向性も示された。

DATA

自然エネルギー財団:日本のコーポレートPPA:契約形態、コスト、先進事例
経済産業省 第62回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会


文:山下幸恵(office SOTO)

関連記事

太陽光関連メーカー一覧

アクセスランキング

  1. 再エネ促進区域の設定、9市町のみ 環境省が支援策検討
  2. 【2023年度・事業用】太陽光発電の導入に使える国の補助金3つ
  3. 変圧器製造の鶴田電機、新工場は「完全自家消費」へ! 導入する蓄電システムとは?...
  4. 「ノンファーム型接続」とは? 再エネ拡大のカギ握る送電ルール見直し
  5. シリーズ「太陽光義務化元年」2023年度の再エネ賦課金単価は1.40円、減額によるPPA提案への影響は?...
  6. 「バーチャルPPA」とは? その仕組みやメリット、制度の動向を解説!
  7. 【参加無料】7月7日(金)「第26回PVビジネスセミナー」~地域共生/PPA/屋根設置~...
  8. ドイツの脱原発達成と日本の脱炭素の将来
  9. シリーズ「太陽光義務化元年」屋根設置は12円 FIT・FIP買取価格が決定
  10. 自分の電気で自宅で過ごそう! 我が家で自家消費をするための準備は?
太陽光業界最新ニュース

フリーマガジン

「SOLAR JOURNAL」

vol.45 | ¥0
2023/4/29発行

お詫びと訂正

ソーラー電話帳 SOLAR JOURNAL メディアパートナーズ