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日本の洋上風力発電、導入量1000万kWは達成可能か?

洋上風車取扱い岸壁や、効率的な風車の組み立て・積み出しが可能なヤードを整備予定。また部品製造、積み出しを一体的に行うことができる事業用地の提供も行っている。
出典:北九州市港湾空港局エネルギー産業拠点化推進課

実はこの事業に先駆けて、昨年度末まで、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託を受け、電源開発などが2MWの着床式洋上風車で実証実験してきました。NEDOの観測結果によれば、年間の平均風速は7.1m/秒に達し、洋上風力発電に必要な条件である7m/秒をクリアしました。
また、年間の発電量は444万kWhで、1200世帯分の電力を風車1基だけで供給できる換算です。

日本では風力発電に関して、低周波による騒音や、鳥が羽根に巻き込まれるバードストライクという事故などを理由に設置を反対する人もいます。また、洋上は漁業権があって利害関係者との折衝が必要で、太陽光発電所のようにすぐ建設できるものではありません。

それでも日本では、風力発電導入量は、NEDOによれば2001年度に設置基数251基、総設備容量14万3614kWだったものが、2015年度には2102基、311万6783kWに増え、今後も導入量は増えていくでしょう。課題は、日本では様々な規制に対する事業者負担が大きいことです。

一方で、たとえばイギリスでは、領海の海底およびその下は王室財産で、排他的経済水域(EEZ)における主権的権利の一部も王室に属する国内法があります。また、接続水域とEEZが再生可能エネルギー海域と定められ、洋上風力を造る場所をあらかじめゾーニングしています。

そのため事業者が行う環境アセスメントのための時間や費用などの負担を軽減し、設備設置を早く進めることができます。風力発電の導入量を1000万kWまで伸ばすには、こうした国の制度も今後は考えていく必要がありそうです。

プロフィール

東京大学 教養学部 客員准教授

松本 真由美氏

報道番組の取材活動やニュースキャスターを経て、現在は東京大学教養学部での教育活動を行う一方、講演や執筆など幅広く活動中。NPO法人・国際環境経済研究所(IEEI)理事。


取材・文/大根田康介

『SOLAR JOURNAL』vol.21より転載。

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