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ミツバチにやさしく発電量も高い! 自然保護に貢献する太陽光発電開発とは?

世界でハチの減少が大きな問題となっている。地上設置型太陽光発電の架台の下に、地域の在来植物などを繁茂させると、「花粉媒介者(ポリネーター)」をはじめとした自然環境に対して多くのメリットが生じるという。太陽光発電が生み出す自然との好循環とは。

ポリネーターの減少に
太陽光発電が与える影響

ミツバチは、花の蜜を集めるだけではなく、農業の現場において、花粉媒介者(ポリネーター)として、果実を実らせるための「授粉」という重要な役割をもっている。そのミツバチが、今世界で激減している。米国では、ポリネーターの生息地を保護するために、「ポリネーターに優しい太陽光発電開発」に力を入れている。


ポリネーターに優しい太陽光発電設置でハチ生息地を保護 出典:Fresh Energy

非営利団体の米クリーンエネルギー州連合 (CESA:Clean Energy States Alliance)で研究員を務めるジョージナ・テリー氏によると、ハチは農作物の4分の1以上を授粉していると言われているそうだ。しかし、2006年以来、 ハチの個体数は毎年30%も減少していて、多くのハチ種は絶滅したか、絶滅の危機に瀕している。ハチを含むポリネーターの生息地の喪失が減少の主な理由として挙げられるという。

米国の数多くの州が、これまでに気候変動対策、クリーンエネルギーへの転換目標に基づいて、太陽光発電の普及・導入拡大に力を入れてきた。特に、地上設置型の大規模太陽光発電の開発の際には、雑草対策を含むメンテナンスコストを低減するため、太陽電池パネルの下と周囲の植生が砂利や芝生に置き換えられ、除草剤で処理される。

つまり、地上設置型の太陽光発電は、ポリネーターが生息する土壌に直接設置されるため、ポリネーターの生息地を乱す可能性があるのだ。

しかし、この太陽光発電が適切な植生で育成された場所に設置される場合、ポリネーターの生息・生育する良好な自然状態を保持、または新たに創り出すことができるという。

この「ポリネーターに優しい」太陽光発電開発に関して、以下の利点がいくつかの研究によって証明されている。

・農地の付近にポリネーターに優しい設置がなされると、その農地での農業生産が強化される
・土地造成の際、表土を保持することは、そこの植生を取り除くよりも費用がかからない
・パネルの下に在来植物を植えた場合は、芝草や砂利の代替品よりもメンテナンスの負担が低い
・そして、植物がパネルの下に植えられると、植物は熱を吸収し、周囲のパネルの温度を下げ、パネルの変換効率を高めて、より多くの発電量をもたらす

ポリネーター保護に関して
全米7州で法律化

過去5年間に7つの州が、積極的に地域の環境・自然保護に貢献することを求め、太陽光発電の立地を選定する段階から周囲の自然環境と調和を図るため、 ポリネーターに優しい太陽光発電施設の適正な設置・管理のための法を独自に制定した。

ミネソタ州は、2013年にポリネーター保護に関する法を全米で最初に設定した州であり、2016年には「ポリネーターに優しい太陽光発電立地法」も設定された。その後、メリーランド・サウスカロライナ・バーモント・ニューヨーク・イリノイ・ミシガンの6州が続いた。

また、州で法律は制定していないが、バージニア州も積極的に取り組んでいる。


バージニア州の小学校に設置されたポリネーターに優しい太陽光発電 出典:Sun Tribe Solar

同州のレクリエーション・保全局で環境検討コーディネーターを務めるレネ・ハイペス氏は、今年5月に開かれたCESAの会議において、「バージニア州太陽光発電立地用在来植物ファインダー」というデータベースをディベロッパーに提供していることを発表した。

このデータベースは、278におよぶ在来植物種について、水と光の要件、開花シーズン、植物の最大の高さの要件を含む種の特性を、郡/都市等で検索できるものだ。

同州は特に、在来植物を使用する利点を強調している。パネル領域の下と周囲に在来植物の混合物を植栽すると、パネルの効率は、外来植物の草の単一栽培と比較して、多様な牧草地の生息地の冷却効果によって大幅に向上、在来植物の牧草地は、大気中の炭素を捕捉して土壌に戻す点で芝草よりもはるかに優れており、二酸化炭素排出量の削減により貢献する。

在来植物は土壌と水の流出を効果的に最小化し、ポリネーターに生息地を提供する。そのため、ポリネーターの個体数が増え、周囲の農業にも大きな利益をもたらすとしている。

ちなみに、ポリネーターに優しいミックスに含まれる種は、ノコギリソウ、トウワタ、クローバー、コーンフラワー、ブルーグラマなどである。

太陽光発電設備が生み出す
新たな自然の好循環


ウィスコンシン州に設置されたポリネーターに優しいメガソーラー(1.8MW) 出典:ENGIE US

米非営利的機構「フレッシュ・エネルギー」のエネルギー部門におけるポリネーター育成センターでディレクターを務めるロブ・デイビス氏は、「在来植物は、雨滴が土壌に当たる力を軽減し、土壌への雨の浸透を促進し、土地を流れる流出水を濾過することにより、水質を向上させる」とし、「太陽光発電は、太陽光パネルの温度が高くなるほど発電効率が低下するという特徴があるが、コンクリートや砂利と比べると、植物生息により、架台の下に水が保たれ、比較的低温であるため、太陽光発電の発電量を増加させ、システムの消耗も低減される」と語った。

つまり、「ポリネーターに優しい」太陽光発電開発で、ポリネーターを保護し、生態系を回復するだけでなく、土壌を安定させ、水質の改善に貢献、さらに、太陽光発電の発電量も増加させるのだ。太陽光発電所をめぐって、自然の新たな好循環が生み出されている。

PROFILE

モベヤン・ジュンコ
太陽光発電電池メーカーで7年間産業経験を積んだ後、2006年から太陽光発電調査会社米ソーラーバズでシニアアナリストとして活躍。2013年よりジャーナリストとして、米国の太陽光発電政策や市場トレンドに関する記事を日欧米のメディアに多数執筆。


文/モベヤン・ジュンコ

SOLAR JOURNAL vol.34(2020年夏号)より転載

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