脱炭素先行地域、8月18日に第4回募集開始 重点選定モデルを拡充
2023/07/09
環境省は7月7日、「脱炭素先行地域」の第4回募集を8月18日に開始すると公表した。重点選定モデルに「生物多様性の保全、資源循環との統合的な取り組み」を新設し、該当する優れた提案を優先的に選定する方針。
民間事業者との
共同提案が必須化
地域脱炭素の推進のための交付金(出典 環境省)
政府は2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げている。脱炭素先行地域は、政府目標を前倒しして2030年度までの脱炭素化実現を目指す。第1回の募集では、2022年4月に横浜市や川崎市など全国26地域が選定された。第2回の募集では、2022年11月に岩手県久慈市や奈良県三郷町など20地域が選ばれている。第3回の募集には、67の自治体から58件の計画案が提出され、今年4月に山梨県甲斐市や高知県北川村、熊本県あさぎり町など12県16地域が選ばれた。
環境省は、第3回の募集から民間事業者などとの共同提案を必須化している。その結果、エネルギー事業会社や送配電事業会社、施工業者、地域金融機関などと連携が強化され、提案の具体性、関係者との合意形成、事業性の熟度が高い計画提案が多くみられた。
第3回募集から
重点選定モデルを新設
4つの重点選定モデルを創設(出典 環境省)
第3回の募集から4つの「重点選定モデル」が新設された。環境省は、全国津々浦々で地域特性に応じた地方創生や、まちづくりとGXに資する多様な脱炭素先行地域を創出するため、「関係省庁と連携した施策間連携」、「複数の地方公共団体が連携した地域間連携」、「地域版 GX に貢献する取り組み」、「民生部門電力以外の温室効果ガス削減の取り組み」に重点を置く優れた計画提案を「重点選定モデル」として優先的に選定する方針。
第3回の募集では、「関係省庁と連携した施策間連携モデル」として青森佐井村と岩手県紫波町、福島県会津若松市、長野県小諸市、高知県黒潮町の5地域が選ばれた。関係省庁の支援策などを具体的に活用し、脱炭素事業と組み合わせることで、住民の暮らしの質の向上や農林水産業などの地域経済への裨益、より効果的なエネルギーマネジメントによる温室効果ガス削減効果のさらなる向上といった相乗効果が期待される地域が対象になっている。
「地域版GXに貢献する取り組み」としては、第3回募集で長野県生坂村と高知県須崎市・日高村の2地域を選定した。自営線マイクログリッド(小規模電力網)などを導入することにより、当該技術の新たな需要を創出し、地域経済への貢献と経済成長につながることが期待できるエリアが対象。
重点選定モデルを
5つに拡充
脱炭素先行地域の選定状況(出典 環境省)
第4回の募集は、8月18日から8月28日(月)まで行われる。今回の募集では、重点選定モデルに「生物多様性の保全、資源循環との統合的な取り組み」を新設した。これにより、重点選定モデルの枠組みは「関係省庁と連携した施策間連携」、「複数の地方公共団体が連携した地域間連携」、「地域版GXに貢献する取り組み」、「生物多様性の保全、資源循環との統合的な取り組み(新設)」、「民生部門の電力以外の温室効果ガス削減の取り組み」の5つに拡充した。環境省は、該当する優れた提案を優先的に選定する方針。
脱炭素先行地域に選ばれた地域には、1自治体あたり5年間で最大50億円が交付される。環境省は、2030年度までに少なくとも100地域を選び、再生エネやEVの導入などを集中的に支援する。脱炭素先行地域には、これまでに全国32道府県83市町村の62提案が選定されているが、地域的な偏りもみられるのが現状だ。
環境省の脱炭素先行地域評価委員会は、「地域脱炭素の波は全国各地に着実に広がってきているが、これを全国津々浦々で力強く展開していくためには、できる限り全国満遍なく先行地域が選定されることが望ましい。都道府県には、自ら管内の市町村を取りまとめて提案することも含め、各層から積極的な提案がなされるよう強いリーダーシップの発揮を期待する。また、電力需要量の大きな都市部の地方公共団体は、再エネ電力確保の難しさはあるものの、日本全体の温室効果ガス削減において非常に重要な主体であることから、積極的な提案を強く期待する」としている。
DATA
取材・文/高橋健一