なぜ秋田県の風車「夢風」は特別なのか? 導入事例
2017/10/20
市民が出資して風車を建設する取り組みが注目される中で、秋田県にかほ市では一味違った取り組みが行われている。風力発電が地域にもたらすものとはいったい何なのか。
風車を通じた都市部と地方との
新しい関係づくり
市民風力発電がサポートした風車事業の中で、とりわけユニークなのが秋田県にかほ市に設置された生活クラブ風車「夢風(ゆめかぜ)」を通じた交流だ。首都圏の生活クラブが出資して、風況の良い秋田に風車を建設。電力自由化を機に、その電気を生活クラブの組合員が購入できるようになった。
しかし地方に発電設備を建て、電気と売電収益を都市部に持っていくだけであれば、従来の関係性は改善しない。生活クラブとにかほ市は「地域間連携による持続可能な自然エネルギー社会にむけた共同宣言」に調印。地元のにかほ市の食品加工業者と連携して、生活クラブで販売できるような新しい加工品を共同開発することになった。
にかほ市名産のイチジクやハタハタの加工品、タラしょっつるを使ったラーメン、そして日本酒などを首都圏の人の口に合うように開発。交流のきっかけとなった風車の愛称をもとに「夢風ブランド」として販売した所、評判は上々だ。
にかほ市の須田正彦副市長も、「市には他にもたくさんの風車が建っていますが、特産品開発や交流会などを行ってきた生活クラブの夢風は、地域にとって特別な風車になっています」と思い入れの深さを語る。風車「夢風」を通じた交流が始まってまもなく5周年。生活クラブ神奈川の専務理事・半澤彰浩さんは、「都会と地方との新しい関係性を築いていきたい」と語った。
首都圏の生活クラブが設置した「夢風」
[事業主体]一般社団法人グリーンファンド秋田
[所在地]秋田県にかほ市 [運転開始]2012年3月
[発電容量]1990kW×1基 [総事業費]4億8,000万円
取材・文/高橋真樹
『SOLAR JOURNAL』vol.22より転載